クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:古楽

 FRUK のニュースレター。面白そうなものが満載。分量もいつもより多い。しかし、今、読んだり聞いたりしてるヒマはない。今日も散歩の他はひたすら仕事。


 散歩の供は Jon Balke & Amina Alaoui の《Siwan》2009。ノルウェイのピアニストのバルケがモロッコのアラブ・アンダルシア音楽のシンガーを迎え、同じくノルウェイの Bjarte Eike 率いる Barokksolistene とトランペットの John Hassell、アラブ打楽器奏者を集めて作った1枚。アミナ・アラウイの線で買ったものだけど、大当り。アラウイの録音の中でも一番好き。アラウイ自身も楽しんで歌っている。アラブ録音とは録音のやり方が違う。そこは ECM で、こういう歌唱の録り方は心得たもの。ここでこの人がまわすコブシを HD414 のバランス接続で聴くと、歩きながらでも至福の感覚がひたひたと湧いてくる。

 Bjarte Eike のヴァイオリンがまたすばらしい。サイトにはハーディングフェーレを弾いてる写真もあって、かなり型破りで広範囲な活動をしている。われらが酒井絵美さんの先輩のような存在か。ここでのヴァイオリンはほとんどアラブ・フィドルの趣で、それを古楽のアンサンブルが浮上させる。そこにジョン・ハッセルのあのトランペットが響いてくると、異界の情景が出現する。

 こういう、境界線を溶かしながら、各々の特性はしっかり打ち出す、ホンモノの異種交配には身も心もとろける。散歩の足取りも軽くなる。

Siwan (Ocrd)
Balke, Jon
Ecm Records
2009-06-30


 届いたばかりの『CDジャーナル』8月号をぱらぱらやっていたら、バッハ・コレギウム・ジャパンを率いる鈴木雅明という指揮者兼鍵盤奏者が面白いことを言っている。


バッハの教会カンタータを外国人がやるには翻訳が必要だ。ただ、翻訳を通してしかわからないことがある、外国人が一所懸命翻訳を通して学び、演奏してみる、というプロセスは実はドイツ人にはできない。


 言われてみれば同じことは何度か聞き、その度に納得してきたものの、こういう一見翻訳とは縁遠いように見える人から言われると、妙に心に沁みる。

 この人たちの演奏には、スピード感やビート感が強い、という感想があるらしい。別段速くやろうとしているのではなく、やっていて気持ちがよい速度でやろうとするとそうなる、というのは実にまっとう。


古楽も、研究の成果を発表するのではなく、日々の生活の糧になるような形で「楽しめる」ようにやりたい



 クラシックでもこういうことをいう人がいるのは意外でもあり、楽しくもなる。

 この人は自分でもソロでオルガンやチェンバロを弾くそうで、平均律も出している、となるとちょっと聞いてみたくなった。バッハの鍵盤に関してはグールドしか聞く気になれなかったが、この方面も確実に変化しているはずではある。をを、大好きなフランス組曲も出してるぞ。ゴールドベルクよりはこっちから聞いてみよう。(ゆ)

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