クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:唖蝉坊

    本日は本誌7月情報号配信予定日ですが、諸般の事情により、遅れます。なんとか、明日には配信したいところです。
   
   
    昨日は岡大介・小林寛明&かんからバンドのライヴ@浅草・木馬亭でした。かんからバンドは傑作《かんからそんぐ 添田唖蝉坊・知道をうたう》のサポート・バンドで、中尾勘二(ドラムス、クラリネット)、 関島岳郎(チューバ、ホイッスル)、熊坂路得子(アコーディオン)、戸次和歌子(トランペット、ゴロス)。
   
    アルバム・リリース以来、全員が一堂に会するのは初めてだそうですが、さすが皆さんヴェテランで、息の合ったアンサンブルでフロントの二人を盛りあげていました。なかでも熊坂さん(薄い桃色の和服がよく似合ってきれい)と戸次さんはそれぞれに個性を発揮して、聞かせます。それが最高潮に逹っしたのは高田渡の〈生活の柄〉で、ここでの戸次さんのトランペットはこの夜のハイライト。聴きながら、うたいながら、涙が出てきました。
   
    小林さんの二胡とラッパ二胡の嫋嫋たる音色は、一方でしたたかさも秘め、アドリブもよろしく、岡さんのうたの相棒にふさわしい。一方で、これだけ弾ける人ならばと、ジグのひとつも聞いてみたくなりました。
   
    共演者のみごとさもさることながら、とはいえ、この晩の音楽のすばらしさの中心には岡さんのヴォーカルの進境があります。岡さんの声は太くはなく、ともすれば伴奏に喰われるところもあったように思いますが、昨夜はちがいました。太くなったわけではありませんが、芯の強さが増した感じです。なにがどうあれ、自分はこのうたをうたってゆくのだ、という決意が、力むことなく、より自然なかたちで伝わってきます。同時に今このうたをうたえる歓びもまたはじけんばかり。それが最も端的な形で出たのは、小林さんとふたりだけでのアンコール〈東京〉でした。あえてノーPAでうたいのけて聴かせたその姿に、シンガー岡大介も一皮剥けたことがはっきり見えました。
   
    岡さんの広い人脈のおかげもあってか、木馬亭は満員、後ろにはぎっしり立ち見も出る盛況。旧式のエアコンがフル稼動でも場内はむんむん。武道館、カーネギー・ホールも近いぞと思わせる勢いでした。NHKもカメラも入っていて、これは唖蝉坊についての番組の一環だそうですが、岡大介&かんからバンドのライヴ映像が全国に広まることになるのでしょう。この組合せで日本語のうたを聴ける幸せにひたった夜でした。(ゆ)

    本日14:30予定で今月号を配信しました。未着の方はご一報ください。


    04/16、千歳船橋の「つぼ」での、岡大介バンド&岡林立哉のライヴはすばらしかったです。お客さんこそ少なかったものの、ラズウエル細木も言うように、その分、もらう音楽の「分け前」は増える感じ。
   
    急遽アコーディオンの熊坂路得子さんも加わって、大渕愛子さんのフィドル、トシさんのバウロンの4人編成になっての岡バンドが「前座」。たまたまこの日が敬愛する高田渡の命日とのことで、〈生活の柄〉でスタート。後でやった岡林さんもルーツは高田渡とのことで、同じこのうたで締めたのには感銘を受けました。どちらもそれぞれにうたいこんだ、シンガーの生地がよく出た演唱で、故人もあの世で喜んだでありましょう。
   
    岡さんは《かんからそんぐ 添田唖蝉坊・知道をうたう》からのうたが中心。編成がちがうこともありますが、CDリリース以来うたいこんできてもいて、良い感じに熟成しています。この編成での録音も聞いてみたい。自分でもこだわっているという〈東京〉はやはり名曲です。
   
    途中で岡さんがひっこんで、大渕、熊坂、トシのトリオでアイリッシュをふたつ。これが良かった。熊坂さんの楽器はドイツ圏に多い大型の鍵盤で、ふだんはミュゼットなどを中心にやっているそうですが、なかなかどうしてスライドなどもしっかり弾きこなしてました。トシさんになかば強引に誘われて始めたそうですが、ご自分でもやっていて楽しいとのことなので、これからが楽しみ。
   
    後半は岡林さんの馬頭琴とホーミーとうた。ノーPA。馬頭琴よりもホーミーにまず入れこんだそうで、モンゴルでは筋が良いと言われて相当仕込まれたそうな。確かにみごとなもので、生ホーミーは初めてでありませんが、初めてホンモノを体験したとおもいました。なにしろ、ホーミーでゆうゆうとメロディを奏でて、ちゃんとうたになっている。
   
    馬頭琴もモンゴルでは国のシンボルとして祭りあげられているところがあるそうですが、岡林さんの楽器は伝統本来の山羊革を前面に張ったもので、今では本国ではふつうは造られていないそうな。表面渋くくすんだ音色は内部が豊かで、足の先から体の中にしんしんと流れこんできます。
   
    馬頭琴はあまり合奏が得意ではありませんが、トシさんがバウロンで入ってやったモンゴルのダンス・チューンはすばらしかった。そしてアンコールで、岡バンドも加わり、岡さんがヴォーカルをとっての〈満月の夕〉には、久しぶりに胸が熱くなりました。サビでの岡林さんの馬頭琴のソロには言葉もなかったです。(ゆ)

このページのトップヘ