クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:放送

0125日・火

 クーキー・マレンコが紹介している Ampex によるテープ・レコーダー開発の話は面白い。

 もともとテープに録音する技術はドイツが1930年代半ばに開発していた。その機械は Magnetphon と呼ばれ、これによる録音はヒトラーも利用したし、放送局でも使われた。この機械が生と区別がつかないほど音質の良い録音ができたのは、HFバイアスをかけると音が驚異的に良くなることを偶然発見したためだった。連合軍側はドイツが格段に優れた録音技術をもっていることは突き止めていたが、その実態はわからなかった。

 第二次世界大戦直後、John Mullin というエンジニアがドイツ製 Magnetophon の古いユニットを2台とそれ用のリール・テープにフランクフルト付近で遭遇し、「戦利品」として持ち帰り、独自に調整したものをハリウッドでデモする。戦時中、ドイツと日本の特許は無効とアメリカ政府が宣言していたので、Ampex はマグネトフォンを研究し、改良する。マリンはこのプロトタイプをビング・クロスビーに見せる。クロスビーはテープ録音技術に興奮し、開発中の Ampex 200A 20台予約する。Ampex にとってはまことにありがたい投資だった。マグネトフォンは持ち運びができたが、200A は巨大な据置型で、4分の1インチ・テープを使い、3015KHz 0.5dB以内の誤差で録音できた。194710月、最初のプロトタイプがハリウッドのラジオ・センターでデモされる。そこでの反応から Ampex は量産にはいる。1948年4月、最初の2台が完成し、第27回ビング・クロスビー・ショーの録音に使用された。クロスビーが録音を喜んだのは、それまでは異なる時間帯の地域ごとに同じショーを毎回何度も生放送でくり返さねばならなかったためだ。200A は当時4,000ドル。家が一軒買えた。が、数週間後、ABC 12台の200A を注文し、他の放送局も続いた。200A はしかしトータル112台しか造られなかった。1,500ドルの Model 300 が続いたためだ。が、テープ録音はすでにゲームを変えていた。

 Ampex は創設者 Alexander M. Pontiaoff のイニシャルに excellence ex を付けたもので、200A の成功で会社の基礎を築く。

 つまるところ、ビング・クロスビーはカネの使い方を知っていたわけだ。



##本日のグレイトフル・デッド

 0125日には1969年と1993年の2本のショウをしている。公式リリースは1本。


1. 1969 Avalon Bollroom, San Francisco, CA

 このヴェニュー3日連続の中日。第二部3曲目〈Cosmic Charlie〉が《The Golden Road》所収の《Aoxomoxoa》のボーナス・トラックでリリースされ、第二部オープナーの〈Dupree's Diamond Blues〉が2010年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、これを含み、〈Cosmic Charlie〉を除く第二部全体が《Aoxomoxoa50周年記念版でリリースされた。つまり、第二部全部がリリースされている。

 演奏はこの時期の典型で、今にも崩れそうで崩れない緊張感が気持ち良い。ラストの〈And We Bid You Goodnight〉はなんとフェイドアウト。


2. 1993 Oakland-Alameda County Coliseum Arena

 23.50ドル。開演7時。春節祝賀ショウ2日目。これも総じて良いショウの由。(ゆ)


 番組に対していただいたリクエストの中にいくつか、ご質問があったので、できる範囲でお答えします。


□〈Mo Ghile Mear "Our Hero"〉「できれば、この曲の原曲を聴きたいです」

 これは伝統曲ですので、「原曲」というものは存在しません。最も有名なヴァージョンはおそらくスティングがチーフテンズをバックに唄ったものでしょう。ケルティック・ウーマンでも唄われています。

 あたしがこの曲を初めて聴いたのはメアリ・ブラックがソロになる前に参加していたバンド General Humbert のセカンド (1982) で唄っているものです。このトラックは後にメアリの《Collected》に収録されました。

Collected
Mary Black
Dara
2003-02-10



 アイルランド語のネイティヴの歌であればポゥドリギン・ニ・ウーラホーン Padraigin Ni Uallachain がギタリストの Garry O Briain と作った《A Stor's A Stoirin - Songs For All Ages》(1994) の歌唱を薦めます。

Stor Is a Stoirin
Padraigin Ni Uallachain
Traditions Alive Llc
2011-09-20



 またスコットランドの Mae McKenna の復帰作《Shore To Shore》(1999) の歌唱も良いです。


Shore to Shore
Mae Mckenna
Traditions Alive Llc
2008-01-01


 最近のものでは Steve Cooney と Allan Macdonald がホストになった 《The Highland Sessions, Vol. 3》収録のものが出色です。Iarla O Lionaird, Mary Black, Karen Matheson, Karan Casey, Mary Ann Kennedy, それに Allan Macdonald という、アイルランド、スコットランドのトップ・シンガーたちが声を合わせたコーラスで、1人1番ずつリードをとるという豪華版です。
 ミホール・オ・ドーナルがどこかで唄っていた記憶があるんですが、探しても出てきません。ご存知の方はご教示ください。

 教えていただいたので、掲げておきます。これも名演。


Relativity
Relativity
Green Linnet
2011-03-23




□RIVER TRANCE「The String Cheese Incident」というバンドが演奏しているRIVER TRANCEという曲があるのですが、原曲があるのでしょうか?」

 たとえば2013年大晦日の年越しライヴで、始めと終りにフィドラーが弾いているダンス・チューンのことでしょうか。どちらもごく有名な伝統曲です。たいへん有名で、よく演奏もされ、録音も多いのですが、あたしはとにかく曲名を覚えることができません。



 どなたか、ご教示のほどを。最初は2:20あたりから。後のは12:45あたりから。


□Muireann Nic Amhlaoibh の曲であれば何でも「名前が読めないんですけど、素晴らしいフルート奏者です」

 前は公式サイトに発音が出ていたんですが、今は無いようです。カナ表記してみれば「ムイレン・ニク・アウリーヴ」でしょう。この人はフルートも達者ですが、まずすばらしいシンガーです。ぜひ、歌を聴いてください。


□〈Moonfesta〉Kalafina「この曲はケルト音楽ですか?」

 前半はあたしにはケルトというよりも、クラシックの古楽、ルネサンスやバロック初期のスタイルを意図しているように聞えます。後半はケルトからは離れていると思います。


□「カントリーフォークの中に、ケルト音楽の流れ(影響)を強く感じるのは僕だけでしょうか? ということで、ケルトの流れを感じさせてくれる一曲をなにかお願いします」

 「カントリーフォーク」が何を指すのか、今ひとつはっきりしませんが、カントリー&ウェスタンの源流にアイルランドの伝統音楽があり、オールドタイムやブルーグラスの源流にスコットランドの伝統音楽があることは、よく知られています。

 ドーナル・ラニィが音楽監督を勤めた《Bringing It All Back Home》やチーフテンズの《Another Country》《Down The Old Plank Road》などには、そうした流れを実感させてくれる曲や演奏がたくさんあります。



Another Country
Chieftains
Sbme Special Mkts.
2009-08-04


ダウン・ジ・オールド・プランク・ロード
ザ・チーフタンズ
BMG JAPAN
2002-10-23



 個人的には「カントリーフォーク」から連想するのは Nanci Griffith で、彼女は一時期、ダブリンに家をもって、ナッシュヴィルと1年の半分ずつ暮していました。チーフテンズのツアーにも参加し、録音もあります。

 あるいは Tim O'Brien やその僚友 Darrel Scott なども、ケルトの流れを感じさせる歌をうたっています。たとえば前者の《Two Journeys》(2001) です。

Two Journeys
Tim O'Brien
Sugarhill
2002-07-09



 この2人も参加している《Transatlantic Sessions》のシリーズはジェリィ・ダグラスとアリィ・ベインがホストとなり、アメリカ東部、スコットランド、アイルランドのルーツ系ミュージシャンを集めて、ミュージシャンだけで、つまり聴衆無しにセッションをしてもらうのを映し、録音したもので、名演のオンパレードです。DVD と CD と両方出ています。映像はネットでも見られます。


□『ロミオとジュリエット』1968 サントラ「舞踏会の音楽にケルト音楽は使われているのでしょうか?」

 1968年という時代にはまだ「ケルト音楽」は存在しません。「ケルト音楽」という呼称、概念は30年ほど後の、1990年代も後半になって登場します。

 舞踏会の前半、男女がペアで踊っている時の音楽のベースになっているのは、当時のイタリア音楽、バロックの前のルネサンス音楽でしょう。モンテヴェルディに代表されるスタイルです。バロックにかかっているかもしれません。1967年には、イギリスで David Munrow や Christopher Hogwood が Early Music Consort を結成して、後の、いわゆる古楽の探索・復興に乗出していますから、その影響がある可能性もあります。

 後半、腕に鈴を付けて踊られるのは、イングランドのモリス・ダンスの原型を意図していると思われます。その前に女主人が「モリスカ」と言っていますし。Morris dancing はシェイクスピアの他の作品にも登場します。現在、イングランドにしか残っていない踊りで、踊りそのものはまったく異なりますが、音楽は今に残るモリス・ダンスのチューンを連想させます。

 なお、アイルランドの伝統音楽が映画に使われた例としてはスタンリー・キューブリックが『バリー・リンドン』(1975) にチーフテンズの音楽を起用したのが最初と思われます。


□豊田耕三 & 久保慧祐, Ross Memorial Hospital
「リクエストした曲はスコットランドのグループ silly wizard のメンバーであった Phil Cunningham が作った曲でしょうか。」

 そうです。CDには明記されています。

 なお、この曲は30分に及ぶ長いメドレーの2曲めで、演奏者としてはメドレーの一部として聴いてもらいたいと意図していると考え、リクエストの対象からは外しました。


□「キャンディーキャンディー」
「話の中でバグパイプ?をひく青年がいたのですが、曲も地方も分かりません」
「キャンディーの王子さまが、キルトをまとい丘の上で演奏しているもの」

 お二人からリクエストをいただきました。原作ではなく、アニメ版と思われますが、あたしにはまったくわかりません。ご存知の方はご教示ください。(ゆ)

 放送から3ヶ月経ち、いただいたリクエストの全貌がようやく見えてきました。事前にいただいていたリクエストは200本ほどで、その中でのご質問などは以前の拾遺でできるだけお答えしています。

 「三昧」では通常、放送中にいただくリクエストが圧倒的に多いそうですが、今回は最終的に1,400本以上に登りました。1本のリクエストに複数の曲が書かれていることもあり、これを一つ一つバラしてみると、延べで1,450曲を超えました。

 複数の方から重複して来た曲ももちろんあります。演奏者も含めまったく同一と思われる曲をまとめて1曲として数えなおしても、1,000曲を超えました。

 この数だけでも我々の対応能力は遙かに超えていますが、内容の幅もまたひじょうに広く、ゲーム、映画やアニメ、TV関連のもの、伝統のコアそのものから、ロック、クラシック、古楽、J-Pop、アンビエント、ヒップホップなど、ほぼあらゆるジャンル、フォームのものが含まれています。演奏者の出身地域も、日本や北米を別として、スペインからロシアまでヨーロッパのほぼ全域にわたっています。

 NHK の資料室は噂に聞いていたとおり、かなりのもので、国内盤で出ているものはまずたいていはありましたし、輸入盤も一部カヴァーされていました。事前のリクエストから推測して、小生も手持ちのものから、NHKには無いと思われるものを選んで100枚ほどのCDを持ち込んでもいました。しかし、両方合わせても、この幅の広さに対応できるものでは到底ありませんでした。

 リクエストしたのにかからないケースがひじょうに多く出てしまったのはまことに申し訳ないことでした。同じ方から同じ内容で複数回出されたと思われるものも一つに留まりません。まったく圧倒されてしまったというのが事実ではあります。

 「ケルト音楽」自体をこちらでは定義せず、広く門戸を開いたことはありましたが、いざ現れたものの広がりの大きさと奥行の深さに茫然としているというのが正直なところです。この手の音楽を愛好するのは、ほんの一握りの人間たちだけという時期が長く続いたために、小生などはどうしてもスケールを小さく捉える傾向があります。

 ジャンルとしてはゲームからのものが大きな割合を占めています。光田さんをゲストにお迎えしたことによる増幅もあるとは思われますが、RPG の BGM だけでなく、音楽ゲームからのリクエストも多いので、やはり元々、ゲーム関連にケルト音楽の存在が大きいのでしょう。ゲームに詳しい向きによれば、時代的にも黎明期から最近まで、ほぼ網羅されているようです。あるいはケルト音楽だけでなく、音楽全体に接するルートとしてゲームが機能しているのかもしれません。

 とまれ、おそらくあるだろう次回にはもう少し対応できるよう、対策を講じたいと思ってはいます。たとえ小生が関わらなくても、このデータは生かされるはずです。一つお願いは、リクエストはできるかぎり事前にいただきたい。そうすれば、より応えやすくなります。もっとも今回、発表になったのは放送の1週間前でした。次回は来年の同時期と予想されますので、その頃には NHK のサイトにご注目ください。

 リクエストのコメントにいくつか付随したご質問は、別途、できる範囲でお答えします。(ゆ)

 「今日は1日ケルト音楽三昧」に放送前にいただいていたリクエストのうち、用意しながらかけられなかったものの一部について書いておきます。
#zanmai 


 まず、Mick Hanly, Farewell Dearest Nancy。

 1976年のソロ・ファースト《A Kiss In The Morning Early》冒頭のトラックですが、CD化されてません。これに限らず、Mulligan の初期はCD化されていないのは残念であります。アナログ自体も手許にはありませんでした。

 リクエストでは「Mick Hanlyでなく、おすすめのアーティストでも可」ということで、オーストラリアのバンド Trouble In The Kitchen が《When The World Was Wide…》(2003) でとりあげています。演奏自体はたぶんハンリィのものをお手本にしてます。こちらのシンガーは女性。

 あらためて聴いてみると、これはどちらも名曲名演で、どうしてもっと唄われないのか、不思議なくらい。

 ミック・ハンリィはリムリック出身。クリスティ・ムーアやドーナル・ラニィと同世代のシンガー・ソング・ライターで、Moving Hearts でムーアの後継者としてリード・シンガーを務めました。ソングライターとしては、ジミィ・マカーシィ、ノエル・ブラジル、ドナ・ロングなどと並んで、今やアイルランドを代表する一人です。

 歌の代表としては〈Past the Point of Rescue〉があります。1988年にメアリ・ブラックがカヴァーしてアイルランドでヒット。1992年にはアメリカのハル・ケチャムが唄って、カントリー・チャートでゴールド・ディスクを獲得する大ヒットになりました。この曲のハンリィ自身の録音は《All I Remember》(1989) 収録。今でも元気で、最近はドーナルとツアーしています。この人の経歴と歌はなかなか面白いので、いずれあらためて。


 以下は楽曲のみで、ミュージシャンの指定が無かったもの。

〈Hector the Hero〉
 スコットランドの James Scott Skinner の曲。スキナー (1843-1927) はスコットランド特有のビートであるストラスペイの名曲を多数作り、The King of Strathpey と呼ばれ、またスコットランドのフィドル奏法を一新したと言われる人ですが、この曲はストラスペイではなく、ゆったりとした名曲。

 John Cunningham が Celtic Fiddle Festival の《Encore》(1998) でギターと二人だけで演奏しているのも捨てがたかったのですが、ティム・エディがソロ・アルバムで Charlie McKerron と二人で演っているのがとびきりの名演です。ここではエディはギターだけでなくアコーディオンも聞かせます。


〈Road to Lisdoonvarna〉
 有名なアイリッシュ・リールで、名演がたくさんあります。選んでいたのは
わが国のハマー・ダルシマー、ギター、バゥロンのトリオ Hammerites がデビュー作《Hammerism》(2017) でやっているもので、〈Butterfly> Road To Lisdoonvarna> Swallowtail〉というメドレー。

Hammrism ハマーリズム
Hammerites ハマーライツ
ロイシンダフプロダクション
2017-03-12



〈The coming of spring〉
 アイリッシュのジグで、選んでいたのは Dave Flynn が《Draiocht(魔法)》(2006) で〈Drowsy Maggie> The Coming of Spring〉のメドレーでやっているトラック。フリンは昨年正月に来日しているアイルランドのギタリスト。その時のレポートはこちら。伝統音楽からジャズ、クラシックまでカヴァーする幅の広い人です。この録音はギター・ソロで、アイルランドではこういうことをしている人は他にはほとんどいません。

Draocht
Dave Flynn
2007-09-25



〈Jolly Tinker〉
 これも有名なアイリッシュ・リールで、たくさん録音があります。選んでいたのは、Michael McGoldrick が《Wired》(2006) に収めているもの。例によってすっとんだ演奏。これも後にメドレーで続きますが、今、CDが手許になく、すみません、これも後日。

Wired
Michael Mcgoldrick
Compass Records
2006-01-31



 放送中にいただいたリクエストは NHK でリストアップしてますが、多すぎて、もう少し時間がかかりそうです。(ゆ)

 春分の日に NHK-FM で放送した「今日は1日ケルト音楽三昧」で放送された楽曲解説の続き。
#zanmai

 プレイリストは番組の公式サイトに上がっています。


40. Port Na Bpudai> Kilnamona Barndance> Ship In Full Sail> Jer The Rigger> The Old Blackthorn> Exile Of Erin> Humours Of Tulla> Fitzgerald's Hornpipe> Rakish Paddy> Finbarr Dwyer's Reel No.1> P Joe's Pecurious Pachelbel Special / Martin Hayes, Dennis Cahill
 トシバウロンのリクエスト。《Live In Seattle》(1999) 収録のこのトラックは11曲のメドレーで、28分あります。アイリッシュ・ミュージックの一つの究極の姿ですが、ふだん、ラジオなどではかけることができません。今回は8時間という長丁場でもあり、ぜひ、聴いてもらいたいということで実現しました。

 ごくゆっくりしたスロー・エアに始まり、徐々にテンポが上がっていって、最後、トップ・スピードでのリールに爆発します。しかもバロック音楽の有名な〈パッフェルベルのカノン〉をリールに仕立てるという離れ業。〈パッフェルベル〉はこれですっかりアイリッシュのレパートリィに定着しました。

 後で登場するゲストの豊田耕三さんがこれに倣って、演奏、録音したのが近作の《Internal Circulation 呼吸の巴 [CD]》。

Martin Hayes: fiddle
Dennis Cahill: guitar

HAYES, MARTIN & D. C
MARTIN & D. C HAYES
LIVE IN SEATTLE
2017-06-16



41. Scotland The Brave / 東京パイプバンド
 リスナーにはマーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの「神録」を聞いていただいている間に、我々はもう一つのスタジオに移動、準備をしました。

 ハイランド・パイプのパイプ・バンドの生演奏をやりたい、と始めに言われた時には、マジかと疑いました。その音量の大きさを十分承知していて、狭いスタジオのなかであれを生で聞かされるのはたまらん、と思ったからです。実際には、放送に使われていたのとは別の、遙かに天井の高い、広く、大きなスタジオが用意されていて、あたしの危惧はまったくの杞憂に終りました。

 演奏は東京パイプ・バンドの選抜メンバーで、パイパー3人にスネアとバス・ドラムが一人ずつという編成。この打楽器が入ると全体がぴりっと締まります。

 曲はおそらくスコットランドの音楽の中でも最も有名なもの。


42. Flower of Scotland> MacGregor of Rora> Andy’s Lullaby / 東京パイプバンド
 パイプ・バンドでもう1曲。スローな曲からだんだんテンポがアップします。こういう組合せはスコットランドの得意技。アイルランドは同じテンポの曲をつなげることの方が多いです。

 最初の曲はスコットランドの「国歌」の一つです。パイプ・バンドのリーダー、山根さんによると、「国歌」とされている曲は三つほどあり、さらに近い将来の独立を期待して新たな「国歌」もすでに用意されている由。この曲は現在最も頻繁に演奏されるもので、今年予定されているラグビー・ワールドカップのスコットランド戦では東京パイプ・バンドによって演奏される予定だそうです。

 ハイランド・パイプの演奏を聞くといつも思いますが、この楽器は剛球一直線です。とにかく真向から投げおろす剛速球のみ。それでばったばったと三振をもぎとる。ど真ん中をストレートで貫くだけで、イチローでも打ち返せない、そういう投手。


43. Opening Slip / 生梅
 スコットランドのハイランド・パイプに対してアイルランドのイリン・パイプを演奏するのが中原直生さん。中原さんのパイプと組むのはアイリッシュ・ハープの梅田千晶さん。お二人の名前から「生梅」というわけ。

 パイプとハープという組合せはアイルランド本国でも見当りません。また女性パイパーもまだまだごく少ない。とてもユニークなデュオであり、音楽です。ハイランド・パイプに比べると、こちらは流れる水の音楽です。

 演奏は3曲のスリップ・ジグの組合せ。〈Give Us A Drink Of Water> Port Na Siog> Hardiman The Fiddler〉。このトラックは彼女たちの2枚のアルバム《生梅開店》(2011) と《生梅の旅》(2012) の両方に入っています。

 スリップ・ジグはアイルランドに特徴的なビートの一種で、拍の一つにアクセントがあります。普通のジグや、あるいはリールは拍と拍の間が等しい等拍ですが、スリップ・ジグの拍は不均等です。

生梅の旅
生梅
gorey records
2012-09-02



44. 森の砂時計 / 生梅
 中原さんがホィッスルに持ち替えて、二人のオリジナル曲。かなり難しくも聞えますが、楽しい佳曲です。《生梅の旅》(2012)収録。


45. Love Theme(映画「Barry Lyndon」から) / The Chieftains
 ここでリクエストが2曲。

 まずはチーフテンズの録音が映画に使われた最初のもので、スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』の「愛のテーマ」。元は《The Chieftains 4》(1973) 収録の〈Mna Na Heireann (Woman Of Ireland)〉で、チーフテンズの前身となったグループを作ったショーン・オ・リアダ(1931-71)の作品。オ・リアダは作曲、編曲を通じてアイルランドの伝統音楽近代化の先鞭をつけた人物。

 ちなみに《The Chieftains 4》はデレク・ベルが初めて(ゲストとして)参加したアルバムです。

Michael Tubridy: flute, concertina, and tin whistle
Sean Potts: tin whistle
Paddy Moloney: uilleann pipes and tin whistle
Martin Fay: fiddle
Sean Keane: fiddle
Peadar Mercier: bodhran and bones

Derek Bell: harp 

Chieftains 4
The Chieftains
Atlantic
2000-07-18



46. A Rose For Epona / ELUVEITIE
 リクエストのもう1曲はスイスのフォーク・メタル・バンド、エルヴェイティの曲。《Helvetios》(2012) 収録。

 このバンドは今回、リクエストであたしは初めて知りました。「フォーク・メタル」というジャンルの存在も初耳でした。メタルだけでなく、アコースティックな組立てでもやっているそうなので、これから聴いてみようと思っています。

Chrigel Glanzmann: vocal, mandola, whistle, uillean pipes, bodhran
Rafael Salzmann: guitar
Kay Brem: bass
Meri Tadic: violin
Ivo Henzi: guitar
Merlin Sutter: drums
Anna Murphy: hurdy-gurdy, vocals
Patrick "Pade" Kistler: bagpipes, whistle

HELVETIOS
ELUVEITIE
NUCLE
2012-02-10



47. Ar Eirinn Ni Neosfainn Ce Hi / Dervish
 今回の企画は前の日曜日がアイルランドの祝日「セント・パトリック・ディ」だったことがきっかけの一つです。聖パトリックはアイルランドの守護聖人で、5世紀にアイルランドをキリスト教化したとされる人物。その祝日が3月17日。もともとアイルランドでは祝日として祝われていましたが、19世紀にアイルランドから大量に北米に移民した人びとが、移民先にあって故郷を偲び、出自を同じくする人びと同士の連帯のために始めたお祭が、今や世界中に広まりました。わが国では例によって短縮して「センパト」と呼ばれたりしますが、アイルランドではパトリックの愛称から "Paddy's Day" と呼ばれます。

 セント・パトリック・ディの週末には東京・代々木公園で音楽や食べ物などのフェスティヴァルが開かれ、日曜日には原宿で恒例のパレードが行われました。このパレードは今や北海道から沖縄まで開催されています。これを仕掛け、粘り強く育ててきた一方の柱が在日アイルランド大使館。その文化担当のアシュリンさんからのメッセージとリクエスト。アシュリンさんは日本語も達者で、ゲストでお招きすることも検討しましたが、スケジュールの関係からメッセージをいただいて、赤木アナウンサーが読み上げる形になりました。

 曲は《At The End Of The Day》(1996) から。タイトルの意味は "For Ireland I Won't Tell Her Name"。スイートなラヴソング。リード・シンガー、キャシィ・ジョーダンがアイルランド語と英語で交互にしっとりと、味わい深く唄います。

 ちなみにこれはダーヴィシュのアルバムとして初めて国内盤が出たもの。あたし個人としてはキャシィが参加したセカンド《Harmony Hill》(1993) が鮮烈ですが、豊田耕三さんはじめ、このアルバムを「すり切れるまで」聴きこんだ人も多いでしょう。

 ダーヴィシュは1992年にレコード・デビューしたアイルランドのバンドで、西部のスライゴーをベースにしています。リーダーのブライアン・マクドノーは1970年代に Oisin というなかなか優れたバンドをダブリンでやっていました。その彼が、ぐんと若いメンバーを集めて作ったのがダーヴィシュで、アルタンとともに1990年代のアイリッシュ・ミュージックの盛り上がりを支えた一方の柱です。アルタン同様、今でもばりばり現役。

Cathy Jordan: vocals, bodhran, bones
Liam Kelly: flute, tin whistle, vocals
Shane Mitchell: accordion
Shane McAleer: fiddle
Brian McDonagh: mandola, mandolin, guitar, vocals, bassola
Michael Holmes: guitar, bouzouki

At End of Day
Dervish
Kells Music
1996-08-01



48. Deadman’s March / Maire Una Ni Bheaglaoich & Junshi Murakami(村上淳志)
 解説の片割れ、トシバウロンはスコットランド、アイルランドに旅してきて、放送日の前夜に帰ってきました。アイルランドではあちらのセント・パトリック・ディもちょうど体験してきています。その様子など、現地の報告の一環として、アイルランドで長年活躍し、ダブリンでアイリッシュ・ハープを教えている村上淳志さんの録音を紹介しました。

 アルバムは《CEOL UISCE》(2012) で、村上さんがダブリンのバスキング(路上ライヴ)で知り合ったという、おばあさんのコンサティーナ奏者と作ったものです。タイトルは「水の音楽」の意味。

 村上さんは来月に帰国し、東京で恒例の「東京ハープ・フェスティヴァル」を開催します。

Maire Una Ni Bheaglaoich: concertina
村上淳志: harp



49. Mera’s / Rachel Hair & Ron Jappy
 もう1枚トシさんが紹介したのがスコットランドのハーパーの出来立てほやほやの最新作。レイチェルは一昨年、シンガーでダンサーの Joy Dunlop とともに来日しています。

 アルバムは《Sparks [CD]》。このトラックは3曲のジグのメドレーで、〈Grainne Brady's> The Namesake> Mera's Delight〉。

Rachel Hair: harp
Ron Jappy: guitar
Adam Brown: bodhran


 ここで18:50、ニュースと天気予報が40分入りました。我々はほっと一息ついて、夕飯の弁当をいただきます。豊田さん、長尾さんが来て、トシさんと音合わせ。もう一人のゲストの寺町靖子さんも見えました。


50. Reel Around The Sun(「Riverdance」から)
 寺町さんをお迎えして、アイリッシュのダンスについてのお話を伺いました。アイリッシュの伝統的ダンスはタップ・ダンスのように、足で素早く床を踏み鳴らします。ハード・シューズと呼ばれるダンス・シューズの底には踵と爪先にグラスファイバーの板が着いていて、ステージではシャープな音を立てます。見る要素とともにパーカッションにもなります。その靴音の入った録音をとのリクエストで、『リバーダンス』から、冒頭のシークエンス。アルバムは《Riverdance: Music From The Show》(1995)。演奏はモイア・ブレナック率いる、初演当時のアイリッシュのトップ・ミュージシャンたち。踊っているのは初代プリンシパル、マイケル・フラトリー率いるダンサーたち。

 ハード・シューズの底がグラスファイバーと聞いて、あたしはのけぞったのですが、ずっと金属だと思っていたのでした。タップ・ダンスの靴は金属だそうで、そう言われると、『リバーダンス』の中のアイリッシュ・ダンサーとタップ・ダンサーたちがダンス合戦をするシーンで、音が違っていたようにも思われます。

 ここでもあたしは『リバーダンス』の初演を1991年と言ったと思いますが、実際には1995年2月でした。どうも、なるべく昔にしたいと思うんでしょうか。ショウの元になったのは、その前年1994年4月にダブリンのポイント・シアターで開かれたユーロヴィジョン・ソングコンテスト幕間のパフォーマンスです。

Maire Breatnach: fiddle
Davy Spillane: whistle, uillean pipes
Mairtin O'Connor: accordion
Kenneth Edge: soprano saxophone
Nikola Parvo: gadulka, kaval
Eoghan O'Niell: bass
Tommy Hayes: bodhran, spoons
Desi Reynolds: tom-toms
Noel Eccles: percussion
Des Moore: acoustic guitar
The Riverdance Orchestra conducted by Proinsias O Duinn

リバーダンス ミュージック・フロム・ザ・ショウ 10周年エディション
ビル・ウィーラン
ユニバーサル ミュージック クラシック
2005-10-05



51. If I Should Fall From Grace With God / The Pogues
 寺町さんのリクエストで、寺町さんがアイリッシュにハマるきっかけとなったポーグスの曲。1988年の同名のアルバムから。

 あたしなどが特に付け加えることもなし。

Jem Finer: banjo, mandola, saxophone
James Fearnley: accordion, piano, mandolin, dulcimer, guitar, percussion, cello
Shane McGowan: vocals, guitar
Andrew Ranken: drums, percussion, vocals, harmonica
Terry Woods: cittern, concertina, mandola, tenor banjo, dulcimer, guitar, vocals
Spider Stacy: tin whistle, vocals
Pilip Chevron: guitars, mandolin, vocals
Darryl Hunt: bass, percussion, vocals

堕ちた天使
ザ・ポーグス
ワーナーミュージック・ジャパン
2005-05-25



52. UP / O’Jizo
 次のゲストはフルートの豊田耕三さんで、主に ICF、Intercollegeate Celtic Festival についてお話を伺いました。豊田さんが10年前に立ち上げ、以来、学生たちが代々自主的に受け継いできているイベントです。ここ2、3年、大学のケルト音楽サークルの急増もあり、大いに盛り上がっているそうで、その原動力の一つはセット・ダンスと呼ばれるアイリッシュの社交ダンスを取り入れたこととのこと。寺町さんも言われていましたが、このダンスの愛好者が急増しているそうで、それも男女を問わず、若い人たちだそうです。
https://icf-shamrock.com

 曲は豊田さんのバンド O'Jizo へのリクエストで、《Highlight》(2011) 収録。

豊田耕三: flutes, whistles
内藤希花: fiddle
長尾晃司: guitar, mandolin
中村大史: accordion, bouzouki

Highlight
O’Jizo
TOKYO IRISH COMPANY
2011-10-02



53. Kaprekar #6174 / Harmonica Creams
 これもリクエストで、O'Jizo とならぶわが国のトップ・バンドの一つ、ハモニカクリームズの曲。《Futura Ancient Alchemy》(2016) 収録。

 このバンドはブルース・ハープの清野さんと、ケルト系音楽の大渕さん、長尾さん、それに初期にはトシさんも加わって、二つの音楽をぶつけあう試みから始まっています。今では、この二つは融合して独自の音楽を展開しています。

清野美土: harmonica
長尾晃司: guitar, bouzouki
大渕愛子: fiddle

田中ゆうじ: drums, percussion

アルケミー FUTURA ANCIENT ALCHEMY
ハモニカクリームズ Harmonica Creams
オルターポップ
2016-04-03



54. Last Train (LIVE) / 豊田耕三、長尾晃司、トシバウロン
 ここから豊田さんのフルート、長尾さんのギター、トシさんのバゥロンのトリオによる生演奏3曲。

 まずは O'Jizo の前作《Via Portland》(2017)から、〈The Last Train from Loughrea> Lucy Farr's〉のメドレー。

Via Portland
O'Jizo
TOKYO IRISH COMPANY
2017-03-05



55. O’Raghailligh’s Grave> Jackson’s Favorite (LIVE) / 豊田耕三、長尾晃司、トシバウロン
 次は O'Jizo の最新作《Cranking Out》(2019) 収録の〈O'Raghailligh's Grave〉と〈Jackson's Favorite〉のメドレー。このライヴ放送のための特別版。レコードでは後者は別の曲につながっています。

Cranking Out
O'Jizo
TOKYO IRISH COMPANY
2019-02-24



56. Canon (LIVE) / 豊田耕三、長尾晃司、トシバウロン
 ライヴの最後は《Highlight》(2011) の曲で、〈The Eagle'S Whistle> The Sweet Flowers Of Milltown> The Flowers Of Red Hill> Pachelbel'S Frolics〉の4曲のメドレー。ラストの曲は上記マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの11曲メドレーのラストと同じものです。


 ライヴではいつも激しい身ぶりで眼鏡を飛ばすのがトレードマークのトシさんですが、スタジオでは抑えたのか、眼鏡は飛ばず。そのことを笑いあっているのが、そのままオンエアされたそうです。


57. Spanish Point / Donal Lunny
 ここからはラストまでリクエストが続きます。

 まずはドーナル・ラニィの曲で、アルバムは《Coolfin》(1998) 収録。アルバム・タイトルはバンド名でもあります。このバンドはドーナルが1996年8月の初来日のために組んだバンドを元に結成したものです。ドラムス、ベース、パーカッション、キーボードも含む大所帯バンドで、来日にはこれにシャロン・シャノンとクラナドのモイア・ブレナンが加わっていました。

Donal Lunny: bouzouki, keyboards
Nollaig Casey: fiddle
Ray Fean: drums
Roy Dodds: percussions
Fionn O'Lochlainn: bass
Graham Henderson: keyboards
 (今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)

ドーナル・ラニー・クールフィン
ドーナル・ラニー・クールフィン
EMIミュージック・ジャパン
1998-08-07



58. Song For Ireland / Mary Black
 メアリ・ブラックのうたうこの歌はメアリがゲスト参加したデ・ダナンの《Song For Ireland》(1983) に初出。後、メアリのソロ以前の録音を集めた《Collected》(1988) に収録されました。

 歌はアイルランド人ではなく、イングランド人の Phil & June Colclough の作。この夫妻はこの歌をはじめ、名曲を数多く作り、様々な人たちに唄われています。ノーザン・アイルランド紛争が終結する希望を歌ったものです。1998年4月のいわゆる「聖金曜日合意」によって、戦争状態には終止符が打たれました。そこにはこうした歌も働いていたはずです。たくさんの人たちが唄っていますが、作者自身の録音は Phil & June Colclough《Players From A Drama》(1991) で聴けます。

Mary Black: vocals
Frankie Gavin: flute, piano
Alec Finn: bouzouki, guitar
Jackie Daly: accordion

Collected
Mary Black
Dara
2003-02-10



59. Apples in Winter> The Peacock’s Feather> Hennigan’s / Beginish
 〈Apples in Winter〉の楽曲のみのリクエストなので、これを選びました。バンドのデビュー・アルバム《Beginish》(1999) から。

 当時中堅どころとして、どちらかというと目立たないところでアイリッシュ・ミュージックの屋台骨を支えていたミュージシャンたちがたまたま集まったバンドでしたが、このデビュー作の出来の良さには「魔法」が作用していたにちがいありません。この年のアイリッシュ・ミュージックの録音として、文句なくナンバー・ワンでした。

Noel O'Grady: bouzouki
Paul O'Shaughnessy: fiddle
Paul McGrattan: flute
Brendan Begley: accordion

Colm Murphy: bodhran

Beginish
Beginish
CD Baby
2016-10-17



60. 街(映画「ゲド戦記」から)
 《サウンドトラック》(2006) より。

 スペインのケルト圏、北西部ガリシアのパイパー、カルロス・ヌニェスの演奏。

 ジブリの音楽のセンスの良さは定評のあるところで、その中でも、音楽の質の高さ、演奏者との共鳴の深さでは、群を抜いているのが『ゲド戦記』とカルロスの組合せ。このサントラはほとんどかれのソロ・アルバムの趣すらあります。さらにスピンオフとして《Melodies From Gedo Senki》も生まれました。この曲はそちらでは〈街のジグ〉として展開されています。

Carlos Nunez: gaita
 (今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)

ゲド戦記・オリジナルサウンドトラック
サントラ
徳間ジャパンコミュニケーションズ
2006-07-12



メロディーズ・フロム「ゲド戦記」
カルロス・ヌニェス
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
2007-01-17



61. Arrietty’s Song(映画「借りぐらしのアリエッティ」から)
 ジブリ関連をもう1曲。

 演奏はブルターニュのシンガー、ハーパー Cecile Corbel。2006年にレコード・デビューしています。ここでは日本語で唄っています。作曲の Simon Caby はデビュー以来の音楽パートナー。

 コルベルはハーパーとしてもシンガーとしても、またソングライターとしても優れた人。英語やフランス語でも唄っていますし、他のケルト圏のうたも積極的にとりあげます。

Cecile Corbel: harp, vocals, chorus
Simon Caby: guitars, bass, piano, percussions, chorus
Eric Zorgniotti: cello
Gilles Donge: violin
Cyrille Bonneau: flutes, bagpipes, bombard, duduk
Jean-Bernard Mondoloni: bodhran, percussion
Pascal Boucaud: additional bass
Regis Huiban: accordion
Lucas Benech: violin
Laurent Muller: alto violin

借りぐらしのアリエッティ サウンドトラック
セシル・コルベル
徳間ジャパンコミュニケーションズ
2010-07-14



62. Diamond Mountain / Sharon Shannon
 《The Diamond Mountain Sessions》(2000) より、タイトル曲。曲はイングランドのギタリスト Ian Kerr のオリジナル。

 シャロンは様々なジャンルの音楽と積極的に交わる面と、伝統の底深くから掘り起こす面を二つながらに備えています。これはその両方が備わったアルバム。それにしても、この細かい音の動きをボタン・アコーディオンで出すのはほとんど神技に近い。

 このアルバムからはアメリカのシンガー・ソング・ライター、スティーヴ・アールと共演した〈The Galway Girl〉の大ヒットが生まれています。

Sharon Shannon: accordion
Mary Shannon: mandolin
Jim Murray: Guitar
Lloyd Byrne: Drums, Percussion
Richie Buckley: Saxophone
Donal Lunny: Bouzouki
Jesse Smith: Viola
James Delaney: Organ
 (今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)

ダイヤモンド・マウンテン・セッションズ
シャロン・シャノン&フレンズ
オーマガトキ
2001-01-20



63. The Sally Gardens> Miss McLeod's Reel> The Foxhunter's> The Bucks Of Oranmore / Arcady
 ミュージシャン指定のない、楽曲だけのリクエスト。あるいは歌の方の〈Down by the Sally Garden〉かもしれませんでしたが、この演奏があまりに良いので、こちらにさせていただきました。

 アーケイディはアイルランドのバンドでこれもベテランと若手が組んで、見事な音楽を生み出した例です。プランクシティ、ボシィ・バンドに続いて現れたのがデ・ダナンですが、そのデ・ダナンのメンバーだったアコーディオンのジャッキィ・デイリー、バゥロンのジョニィ・リンゴ・マクドノーが中心となって結成。これはセカンド《Many Happy Returns》(1995) から。ここではアコーディオンが若手のコナー・キーンに交替しています。

Conor Keane: accordion
Johnny McDonagh: bones, bodhran, triangle
Brendan Larrissey: fiddle
Nicolas Quemener: guitar, flute, whistle, vocals
Patsy Broderick: piano, keyboards

Michael McGoldrick: flute
Neil Martin: cello

Many Happy Returns
Arcady
Dara
1996-07-28



64. Auld Lang Syne / Johnny Cunningham & Susan McKeown with Aidan Brennan
 事前の打合せで、先頭と末尾の曲が真先に決まりました。先頭はトシさん発案のボシィ・バンド、そして最後はやはりこの曲しかないでしょう、ということになり、であれば、その最高の演奏であるこのヴァージョンを、と選びました。

 「蛍の光」の原曲であるこの歌には、おなじみのものよりも古い、もう一つのメロディがあります。おなじみのものよりももう少しごつごつした感じの、原初的なメロディです。あたしもトシさんも、この古いヴァージョンの方が今では好きなくらいで、ぜひ、それを聞いていただきたいと思いました。

 ここではスーザン・マキュオンがまず古いメロディでうたいだし、やがておなじみのメロディに移行します。

 スーザンはダブリン生まれのシンガーで、ニューヨークに渡ってシンガーとして頭角を現しました。ユダヤ音楽も唄い、クレズマティックスというクレズマー・バンドとの共作でグラミーも受賞しています。

 ジョニィ・カニンガム(1957-2003)は始めの方に出てきたフィル・カニンガムのお兄さんのフィドラー。フィルたちがスコットランドに帰ってからも、アメリカに残って活躍しました。作曲家、プロデューサーとしても優れた人です。

 アルバムは《A Winter Talisman》(2001)。

Susan McKeown: vocals
John Cunningham: fiddle, vocals
Aidan Brennan: guitar
 (今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)

Winter Talisman
Johnny Cunningham & Susan Mckeown
CD Baby
2010-01-26



 ということで、これだけの長時間、聞かれる方もたいへんだと思いました。我々も疲労困憊、していたはずですが、やはり興奮もしていたらしく、このままでは帰れないよなあ、とダブリナーズで乾杯したことでありました。無事、8時間半の生放送を切り抜けた後のギネスは、ことの外、美味でありました。(ゆ)

 春分の日に NHK-FM で放送した「今日は1日ケルト音楽三昧」で放送された楽曲解説の続き。
#zanmai

 プレイリストは番組の公式サイトに上がっています。


13. Hugh / Nightnoise
 ここで最初のゲスト、遊佐未森さんをお迎えしました。

 まずはリクエストでナイトノイズの曲。《The White Horse Sessions》(1996) 収録。

 トゥリーナのピアノが美しい曲で、タイトルはトゥリーナやミホールの父君のことと思われます。このお父さんは伝統歌の収集家でもあり、アイルランド語のネイティヴ・スピーカーでした。実家はアイルランド北西部のドニゴールで、兄妹は毎年夏休みなどにここに通います。ドニゴールはアイルランドの中でも音楽伝統の濃いところで、兄妹は伝統にどっぷり漬かって育ったのでした。

Triona Ni Dhomhnaill: piano
Micheal O Domhnaill: guitar
Brian Dunning: flute
John Cunningham: fiddle

The White Horse Sessions
Nightnoise
Windham Hill Records
1997-01-14




14. Island of Hope and Tears / 遊佐未森
 遊佐さんの楽曲へのリクエスト。遊佐さんがナイトノイズと共演、共作した最初のアルバム《水色》(1994) から。

 遊佐さんによれば、この時、ミニ・アルバムを作るからやりたいことを言うように言われて出した三つほどの企画のうちの一つがナイトノイズとの共演だったそうです。最も実現しそうになかったものがとんとん拍子に運んでしまった由。

 この歌はコーラスがたいへん美しいですが、ミホールとトゥリーナの神秘的とも言えるハーモニーは何の加工も加えておらず、二人が唄うだけでああいう風になったとのこと。

遊佐未森: vox, chorus, synthesizer
Nightnoise
Triona Ni Dhomhnaill: piano, chorus
Micheal O Domhnaill: guitar, chorus
Brian Dunning: flute, low whistle, uillean pipes
Johnny Cunningham: fiddle

水色
遊佐未森
ソニー・ミュージックダイレクト
2010-07-14



15. The Road to Nowhere / 遊佐未森
 リスナーからのリクエスト。1998年の《エコー》から。

 このアルバムはほとんどのトラックがスコットランドで、スコットランドのミュージシャンを動員して録音されています。カパーケリーのメンバーを中心としたトップ・ミュージシャンばかりで、遊佐さん自身、夢のようだったそうです。とりわけドラムス、パーカッションのジェイムズ・マッキントッシュがカッコよかった由。スコットランド最高のドラマーです。それにマイケル・マクゴールドリックはまだ20代の若者。

 この曲はトゥリーナ・ニ・ゴゥナルの作品でトゥリーナもピアノで参加しています。

遊佐未森: vox, chorus, keyboards
James Mackintosh: drums, percussion
Ewen Vernal: bass
John Goldie: guitars
Colm Malcolm: synthesizer, programming
Tommy Smith: soprano sax
Nigel Thomas: percussion
Michael McGoldrick: whistle, B-flat flute, uillean pipes
William Jackson: harp, flute, whistle
Stuart Morison: fiddle
Triona Ni Dhomhnaill: piano, chorus, whistle
Tony McManus: guitar, mandolin
Jimmy McMenemy: bouzouki

ECHO
遊佐未森
EMI Records Japan
2013-07-24



16. ロカ / 遊佐未森
 最後に遊佐さんご自身のセレクションで、昨年行われたデビュー30周年記念ツアーで、トゥリーナと共演したライヴ録音。今月中にDVDとCDでリリースされる予定だそうです。

 トゥリーナはもう70近いはずですが、ますます元気の由。

【Amazon.co.jp限定】PEACH LIFE(CD+DVD)(特典付/A4ファイル)
遊佐未森
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
2019-03-27



17. Nobody Knows / Paul Brady
 ここからしばらくリクエスト曲が続きます。

 まずはアイルランドのシンガー・ソング・ライターで、「最高のシンガー」(マーティン・ヘイズ)でもあるポール・ブレディのオリジナル。《Trick Or Treat》(1991) 収録。ライヴ盤《The Paul Brady Songbook》(2002) でも歌っています。

 ブレディは1960年代後半、ジョンストンズのメンバーとして世に出て、伝統音楽の世界でシンガー、ギタリストとして名を成した後、そこからは一歩離れた、現代のポップ・ソングのシンガー・ソング・ライターとしても大成します。我々から見ると、対照的な二つの面を持つと見えますが、本人の中では特に別々のことをやっているつもりはないらしい。

 この歌はポップスの方に属するもの。ただし、詞はアイルランド人らしく、単純な惚れた張ったではなく、いろいろな解釈が可能で、一筋縄ではすみません。

Paul Brady: Vocals, Guitars
Freddie Washington: Bass
Jeff Porcaro: Drums, Percussion
Elliot Randall: guitars
David Paitch: piano, Keyboards

Trick Or Treat
Paul Brady
Polygram Records
1993-08-12



18. Broken Levee / Wolfstone
 このバンドの〈Broken〉を、というリクエストだったので、この曲ではないかと推察しました。今のところ最新作《Terra Firma》(2007) 収録。

 スコットランドのケルティック・ロック・バンド。1989年結成。実はCDは持っていたものの、あまり真剣に聴いたことがなく、もっと早く、きちんと聴いておくべきだったと反省してます。ランリグがスコティッシュ・ゲール語を前面に出して、どちらかというと神秘的に想像をふくらませるのに対して、ウルフストーンは英語で、きりりと引き締まった音楽を作ると言えましょう。

Stevie Saint: pipes, whistle
Ross Hamilton: vocals, guitar, programming, percussion, bass
Stuart Eaglesham: acoustic guitar
Duncon Chisholm: fiddle
Colin Cunningham: bass
Alyn Cosker: drums

Terra Firma
Wolfstone
Once Bitten
2007-05-29



19. Dulaman / Celtic Woman
 《A New Journey》(2007) から。

 『リバーダンス』からのスピンアウトの一つで、あちらがダンスをフィーチュアしているのに対し、こちらは歌をメインにしたもの。わが国では2006年冬季オリンピックのフィギュアスケートで金メダルを獲得した荒川静香選手がエキジヴィションでファースト・アルバム収録の〈You Raise Me Up〉を使用して一気に人気が出ました。

 曲はクラナドが初期のアルバム (1976) のタイトルにしているドニゴールの歌で「デュラマン」は海藻の一種。ドニゴールは土地が瘠せていて、海岸に流れつく海藻を集めて肥料とし、場合によっては食糧にもすることが古くから行われていました。元々はわらべ唄。

Meav Ni Mhaolchatha: vocals
Andreja Malir: harp
David Downes: whistle, vocals

ニュー・ジャーニー~新しい旅立ち~
ケルティック・ウーマン
EMIミュージック・ジャパン
2007-02-14



20. Cardinal Knowledge / Bruno Coulais & KiLA
 元はキーラのアルバム《Gamblers' Ballet》(2007) 収録で、アニメ『ブレンダンとケルズの秘密 The Secret Of Kells』に使われました。

 アニメは『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』を作ったプロダクションの一つ前の作品。アイルランドの至宝『ケルズの書』制作の秘密をめぐる歴史ファンタジー。

 なお、サントラでは音楽が終った後、1分半ほどの空白の後、アイルランド語のナレーションが入りますが、番組では音楽のみで切り上げました。

Eoin Dillon: Uilleann PIpes & Whistles
Ronan O'Snodaigh: Bodhran & Percussion
Rossa O'Snodaigh: Guitar, Whistle, Percussion, Piano, Bouzouki, Trumpets, Clarinet, Mandolin etc.
Colm O Snodaigh: flute
Dee Armstrong: Fiddles, Violins, Glockenspiel, Free-Notes etc.
Lance Hogan: Guitar
Eoin O'Brien: Guitars

Karl Odlum: Loops, Drum Programming, Effets sonores
Mark Gavin: Synthetized bass
Dan Klezmer Page: Clarinette

The Secret Of Kells
Bruno Coulais & Kila
Kila Records
2012-04-03



21. Only Time / Enya
 《A Day Without Rain》(2000) より。エンヤの音楽はエンヤの曲とプロデューサー Nicky Ryan のエンジニアリング、それにニッキィ夫人の Roma Ryan の詞が一体となってできています。ニッキィ・ライアンは1970年代にモダン・アイリッシュ・ミュージックの初期の録音を担当して、数々の傑作、名盤を生み出した原動力の一人でもあります。アイルランドのアコースティックな音楽の録音には定評がありますが、ブライアン・マスターソン、アンドリュー・ボーランドと並んで、アイルランドを代表する録音エンジニアです。

A Day Without Rain
Enya
Imports
2000-11-17



22. Runaway / The Corrs
 1995年のデビュー・アルバム《Forgiven, Not Forgotten》から。

 兄弟姉妹が核となっているバンドは少なくありませんが、兄弟姉妹だけでバンドが組めてしまうのは、珍しいと言えるでしょう。あえて言えば、ケルト圏に特有の現象かもしれません。

 もっと大所帯で伝統音楽寄りの兄弟姉妹バンドとして、カナダの Leahy がいます。

Caroline Corr: Drums, Bodhran, Vocals
Jim Corr: Keyboards, Guitar, Vocals
Andrea Corr: Lead Vocals, Tin Whistle
Sharon Corr: Violin, Vocals

Forgiven Not Forgotten
Corrs
Atlantic / Wea
1996-01-09



23. Irish Heartbeat / Van Morrison & The Chieftains
 もちろんリリースは1988年です。

 リリースされたレコード・ジャケットを見てまず驚いたのが、ヴァン・モリソンがまるでチーフテンズのメンバーの一人であるように映っていたことでした。いわば、もっと「不均等」な関係を想像していたわけです。音楽もチーフテンズがバック・バンドというよりは、それまでチーフテンズが出してきたシンガーをゲストとしたアルバム、たとえばドロレス・ケーンを起用して彼女に録音デビューさせた《Bonapart's Retreat》(1976) と同様に、モリソンがチーフテンズのリード・シンガーの一人という形です。

 ヴァン・モリソンと対等のチーフテンズというのは、チーフテンズの何者かを知っていた我々ですら驚きましたから、ここで初めて彼らの音楽に接するリスナーにはいかほどの衝撃であったでしょうか。ピーター・バラカンさんもこれで初めてチーフテンズの存在とその背後にあるアイリッシュ・ミュージックを知ったと言われていました。

 アメリカのポピュラー音楽の成立にアイリッシュ・ミュージックが大きな役割を果たしていることは今や常識と言ってよいかと思いますが、これが出た当時はそんなことを言えばバカにされるのが関の山でした。モリソンの音楽の奥底にアイルランド伝統音楽の血脈が通じていることを示したこのアルバムは、そうしたシェーマの転換のきっかけにもなっていたと思います。

 モリソン自身、これによって改めて己れのルーツを確認し、それまでの低迷を脱して、《Hymns To The Silence》(1991) を頂点とする傑作群を生み出してゆきます。

 チーフテンズにとってはさらに大きく、これによって彼らは世界的認知を得て、アイルランド以外の世界にとってアイリッシュ・ミュージックのアイコンになってゆきます。

Van Morrison: Lead Vocals, Guitar, Drums
Paddy Moloney: Bagpipes, Tin Whistle
Kevin Conneff: Bodhran, vocals [A1 A3 B1]
Sean Keane: Fiddle
Martin Fay: Fiddle, Bones
Matt Molloy: Flute
Derek Bell: Harp, Dulcimer [Tiompan], Keyboards

June Boyce: chorus

Irish Heartbeat
Van Morrison & Chieftains
Uni/Polygram Pop/Jazz
1988-06-20



24. Over The Hills And Far Away / Gary Moore
 《Wild Frontier》(1987) より。

 ゲイリー・ムーアがアイルランド出身であることは承知していましたが、このアルバムにはチーフテンズのパディ・モローニ、ショーン・キーン、マーティン・フェイが参加していることを今回初めて知って、改めて興味が湧いているところです。とりわけ、マーティン・フェイが参加しているのは興味深い。フィドルが2本要るとモローニが判断したのでしょうが。

 それにしても、これくらい気合いが入っているジャケットは滅多に無いですね。

Gary Moore: Guitar, Vocals
Bob Daisley: Bass
Neil Carter: Keyboards, Vocals

WILD FRONTIER
GARY MOORE
VIRGI
2003-04-28



25. Doon Well / Maire Brennan
 1998年の《Perfect Time》から。

 モイア自身のハープをフィーチュアしたインストゥルメンタル。どちらかというとアルバムの中でも地味な曲で、こういう曲をリクエストされるのは相当に聴きこまれているのでしょう。

 ここでロウ・ホイッスルを吹いているデヴィッド・ダウンズは後に Celtic Woman をプロデュースします。

Maire Brennan: Keyboards, Harp
David Downes: low whistle

Perfect Time
Maire Brennan
Sony
1998-04-21




26. 二月の丘 / ZABADAK
 《遠い音楽》(1990) から。

 ザバダックを聴きだしたのは昨年からなので、まるで初心者ですが、個人的には上野洋子さんがいた頃が好き。あたしにはケルトよりもどちらかというとイングランド的感性が感じられます。

 上野さんは後に《SSS-Simply Sing Songs》(2003) という、すばらしい伝統歌集をリリースされてます。

吉良知彦
上野洋子
金子飛鳥
梯郁夫
保刈久明
安井敬
渡辺等

遠い音楽
ZABADAK
イーストウエスト・ジャパン
1990-10-25



27. Culloden’s Harvest / Deanta
 かつては「ディアンタ」と表記されていましたが、アイルランド語の発音により近く書けば「ジュアンタ」でしょうか。

 1990年代に現れたアイルランドの若手バンドの筆頭で、この曲は最後のアルバム《Whisper Of A Secret》(1997) から。ここではメンバーはギタリストを除いて全員女性になっていました。いささか唐突に解散してしまいましたが、リード・シンガーの Mary Dillon は最近復活しています。

 なお Culloden はスコットランドの地名で、1746年4月にここで行われた戦いで有名です。1745年に始まったスコットランド・ハイランドの氏族たちによるイングランドに対する最後の大叛乱の最後の戦いで、これによって伝統的なスコットランドの社会は敗北します。このいわゆるボニー・プリンス・チャーリィの叛乱からはたくさんの歌や曲が生まれ、伝えられています。


Mary Dillon: Vocals
Kate O'Brien: Fiddle
Deirdre Havlin: Flute, Whistle
Eoghan O'Brien: Harp, Guitar
Rosie Mulholland: Keyboards, Fiddle

DEANTA
DEANTA
WHISPER OF A SECRET
2017-06-16


28. Johnny, I Hardly Knew Ye!(ジョニーは戦場に行った) /
 楽曲は有名なもの(ここでもあたしが何やらあらぬことを口走ったような気がします)ですが、うたい手はクラシックの訓練を受けていて、こういう人がこういう歌をうたうというのには、意表を突かれました。

 とはいえ、アイリッシュ・テナーと呼ばれる一群のシンガーたちの存在もあるわけで、ケルト圏の伝統曲のクラシック的解釈は、おそらくかなり広まってもいるのでしょう。メルマガの『クラン・コラ』でも「オーケストラで聞くアイリッシュ・ミュージック」の連載があります。

 個人的にはこの曲は歌としてよりも、スタンリー・キュブリックの映画『博士の異常な愛情』でライト・モチーフ的に使われていたのが印象に残っています。

庭の千草〜アイリッシュ・ハープ
ミッチェル(エミリー)
BMGビクター
1993-04-21



29. Molly Malone / Sinead O’connor
 楽曲だけでアーティストの指定が無かったので、このヴァージョンを選びました。《Sean-Nos Nua》(2002) 収録。

 このアルバムはシネイドが伝統歌ばかりを唄って新生面を開いたもので、ドーナル・ラニィのプロデュースのもと、バックはアイリッシュ・ミュージックのトップ・プレーヤーが集まっています。

 曲はダブリンの貧しい魚売りの少女の薄幸を唄って、イングランドでも広く唄われました。わらべ歌の一種でもあります。

Sinead O'Connor: vocals
Donal Lunny: acoustic guitar, bouzouki, keyboard, bodhran, bass guitar
Steve Wickham: fiddle, mandolin, banjo
Sharon Shannon: accordion
Abdullah Chhadeh: quanun
Nick Coplowe: Hammond organ
Cora Venus Lunny: violin
Skip McDonald: electric guitar
Carlton "Bubblers" Ogilvie: drums, bass guitar, piano
Bernard O'Neill: bass guitar
Professor Stretch: drums, programming

Sean-Nos Nua
シニード・オコナー
BEAT RECORDS
2002-10-16



30. Caoineadh Johnny Sheain Jeaic> Lorient Mornings> Illean Aigh / Duncan Chisholm
 このリクエストは嬉しかったです。スコットランドにフィドルの名手の多い中で、個人的に今一番好きな人なので。

 ダンカン・チザムは上に出てきた Wolfstone のフィドラー。バンドでは結構ハードなサウンドですが、ソロでは贅肉を削ぎ落した、ストイックな演奏で、スコットランド音楽の奥深さを体験させてくれます。こういう、一種、崇高と呼びたくなるような音楽はスコットランドならでは。

 アルバムは《Canaich》(2010) で、2008年の《Farrar》、2012年の《Affric》とともに三部作を成します。

Duncan Chisholm: fiddle
Phil Cunningham: piano
Patsy Reid: cello

Canaich
Duncan Chisholm
Copperfish
2010-06-21



31. MELKABA(オリジナル・サウンドトラック「ゼノギアス アレンジヴァージョン クリイド」から)
 ここから光田康典さんをゲストにお迎えしました。まずはその光田さんの楽曲へのリクエスト。

 この曲ではアイリッシュ・ベースのメロディに、フィンランドのヴァルティナ流のコーラスが乗っていますが、それが見事に融合して独自の世界を作っています。

 この前年の植松伸夫さんの《Celtic Moon》もそうですが、こんな豪華なメンバーは今では到底集められないでしょう。

光田康典: piano, keyboards, programming, voices, hand clap
上野洋子: vocals
Davy Spillane: uillean pipes, low whistle
Maria Kalaniemi: accordion
Maire Breatnach: fiddle
Laoise Kelly: Irish harp
HATA: guitars
渡辺等: bass
藤井珠緒: congas, bongos, glockenspiel, clasher, China cymbal, Paste 5cup cymbal, tree bell, Angel Heart, India bells, darbuka, flexatone, wind chime, nail chime, cha-cha, finger cymbals, Sleigh bells, caxixi
KALTA: drums, tambourine, programming, voices, hand clap
本間 “Techie” 哲子: vocals
素川欣也: 尺八, 篠笛
Laurie Kaszas: tin whistle
吉良知彦: bouzouki, guitar
Eimer Quinn: vocals
小峰公子: vocals
山中ちこ: chorus, hand clap
工藤ともり: chorus, hand clap
Anne-Marie O’Farrell: celtic harp

ゼノギアス アレンジヴァージョン クリイド
光田康典&ミレニアル・フェア
スクウェア・エニックス
2005-06-29



32. Shadow of the Lowlands(オリジナル・サウンドトラック「ゼノブレイド2」から)
 こちらはぐんと新しいところで、アイルランドのユニークなコーラス・グループ Anuna によるアカペラ・コーラス。

 YouTube にも上がっているPVは、アヌーナのリーダーであるマイケル・マッグリンが、自ら作りたいと言い出したそうで、光田さんの楽曲にそれだけ惚れこんだのでもありましょう。

Anuna: chorus

33. LAHAN(オリジナル・サウンドトラック「ゼノギアス アレンジヴァージョン クリイド」から)
 《クリイド》からもう1曲。これもリクエスト。


34. Welcome To Our Town!(オリジナル・サウンドトラック「ファイナルファンタジー4 ケルティック・ムーン」から)
 光田さんの《クリイド》と並ぶゲーム音楽のイメージ・アルバムの傑作。粒選りのメンバーですが、中の写真を見ると、みんな若い! とりわけ、まだデビュー・アルバムを出したばかりくらいのシャロン・シャノン。植松伸夫さんもあらためてお話を伺いたい方であります。音楽のプロデュースを務めたモイア・ブラナックはこの録音の後、『リバーダンス』のバンド・マスターになります。

Maire Bhreatnach: fiddle, viola, tin whistle, keyboards, vocals
Cormac Breatnach: flute
Ronan Brown: uillean pipes, tin whistle
Noreen O'Donoghue: harp
Mark Kelly: guitar
Sharon Shannon: accordion
Niall O'Callanan: bouzouki
Tommy Hayes: percussions

ファイナルファンタジーIV ケルティック・ムーン
ゲーム・ミュージック
NTT出版
2004-10-01



35. 麦の唄 / 中島みゆき
 映像に使われたケルト音楽ということで、朝ドラ『マッサン』のテーマ曲。

 個人的には中島みゆきの声は実に日本的だなあと再確認しました。

連続テレビ小説「マッサン」オリジナル・サウンドトラック
富貴 晴美
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
2014-12-10



36. マッサン-メインテーマ-(オリジナル・サウンドトラック「マッサン」から)
 こちらは富貴晴美氏によるメイン・テーマ。


37. Donogh And Mike’s / Lunasa
 『マッサン』の楽曲を手がけられた富貴氏からの録音メッセージが流されました。実に熱い内容で、富貴氏ももっともっとお話を伺いたいところです。その富貴氏からのリクエスト。アルバム《The Merry Sisters Of Fate》(2001) 収録。このトラックで演奏されているのは〈1st August> Windbroke〉。前者はメンバーの Donogh Hennessy の曲、後者はルナサ初期のメンバーで現在はカパーケリーの Michael McGoldrick のオリジナル。それでこういうトラック名がつけられています。

Donogh Hennessy: guitar
Cillian Vallely: Bagpipes
Trevor Hutchinson: bass
Kevin Crawford: Flute
Sean Smyth: fiddle


38. チェイサー(オリジナル・サウンドトラック「マッサン」から)
 もう1曲、『マッサン』から。リスナーからのリクエスト。

野口明生: tin whistle, Irish flute
中藤有花 (tricolor): fiddle
長尾晃司 (tricolor): guitar
中村大史 (tricolor): bouzouki, accordion
菅谷亮一: percussions

 余談ですが、このサントラの〈Ellie's Ambition〉は tricolor の3人によるインストゥルメンタルで、短かいメロディを、はじめブズーキ、次にフィドルで繰り返し、さらにそこにフィドルが装飾音を入れてゆきます。この演奏を聞くと、ケルト系のダンス・チューンの装飾音の入れ方、またその役割などが手に取るようにわかります。


39. Chetvorno Horo / Andy Irvine & Davy Spillane
 光田さんコーナーのラストは光田さんのリクエストで、《クリイド》でも大活躍のパイパー、デイヴィ・スピラーンの録音。光田さんがスピラーンにでくわして「何だ、これは?」と衝撃を受けたもの。

 アルバムは《East Wind》(1992)。モダン・アイリッシュ・ミュージックの開拓者の一人、アンディ・アーヴァインがデイヴィ・スピラーンとともに、かれのルーツの一つである東欧、ブルガリアやハンガリーの音楽を演奏したものです。アイリッシュの精鋭が集まっていて、その一人、鍵盤のビル・ウィーランはここでの体験を下にして、後に『リバーダンス』の東欧シークエンスの曲を作ります。このアルバムに参加したのは、私の誇りだ、と本人が言っていました。

Andy Irvine: bouzouki, hurdy-gurdy
Davy Spillane: uillean pipes, low whistle
Nikola Parov: gudulka, kaval, gaida, bouzouki
Bill Whelan: keyboards, piano
Anthony Drennan: guitar Tony Molloy: bass
Paul Moran: percussion Noel Eccles: percussion
Mairtin O'Connor: accordion
Carl Geraghty: sax
John Sheahan: fiddle
Kenneth Edge: sax
Micheal O'Suilleabhain: piano

Andy Irvine / Davy Spillane
Treasure Records
2003-10-18


 以下、続きます。(ゆ)

 春分の日に NHK-FM で放送した「今日は1日ケルト音楽三昧」で放送された楽曲について、簡単に説明しておきます。

 プレイリストは番組の公式サイトに上がっています。

 曲数が多いので、いくつかに分割します。まずは遊佐未森さんが登場する前まで。


00. The Kesh Jig / The Bothy Band
 タイトル・バックに流れたのは、アイルランドのバンド、ボシィ・バンドのファースト《1975》冒頭のトラックの最初の1曲。ミホール・オ・ドーナルのギターによるイントロに続いてパディ・キーナンのパイプのドローンが入ってきて、おもむろにそのパイプがメロディを始めます。1975年リリースの録音ですが、まったく古びていません。

 これを冒頭にかけようと提案したのはトシバウロンで、タイトル・バックに使うことはその場で決定。

Tommy Peoples: fiddle
Paddy Keenan: uillean pipes
Matt Molloy: flute
Micheal O Domhnaill: guitar
Triona Ni Dhomhnaill: clavinet
Donal Lunny: bouzouki

BOTHY BAND
BOTHY BAND
1975
2017-06-16



01. Raggle Taggle Gypsy> Give Me Your Hand / Planxty
 全曲をかけるトップとしてはやはりアイルランドだろう、ならばその出発点となったこの曲を、とあたしが提案しました。1973年のアルバム《Planxty》、通称「ブラック・アルバム」の冒頭のトラック。

 クリスティ・ムーアの歌とともに、ここでの鍵はやはりリアム・オ・フリンの演奏するイリン・パイプで、とりわけ後半のワルツで高くなっていって、一番高い音を三つ連発するのはかなり高度な業だそうですが、なんともカッコいい。

 彼らが登場するまで、アイルランドでもほとんどの人はイリン・パイプを見たことが無かったのでした。

Christy Moore: guitar, bodhran
Liam O'Flynn: uillean pipes
Andy Irvine: mandolin
Donal Lunny: bouzouki

Planxty
Planxty
Shanachie
1989-12-12



02. I Will Find You / Clannad
  この番組はリクエストが大きな柱でもあるので、続いてはリクエストから2曲。

 1曲めはクラナド。映画『ラスト・オブ・モヒカン The Last Of The Mochicans』(1992) のテーマとして書かれ、1993年の《Banba》に収録。歌詞はモヒカン語とチェロキー語で書かれ、唄われている由。作詞作曲はキアラン・ブレナンで、映画の監督マイケル・マンはクラナドにアイルランド語で歌うことを要請しましたが、キアランは映画に描かれた当時、北米にアイルランド人はいなかったことを指摘し、この二つの言語で書くことを通したそうです。

Maire Brennan: vocals
Ciaran Brennan: bass, guitar, piano, vocals
Noel Duggan: guitar, vocals
Padraig Duggan: guitar, vocals

Banba
Clannad
Atlantic
1993-06-15



03. John Ryan’s Polka / THE CHERRY COKE$
 アイリッシュ・ミュージックをパンク・ロックの手法で解釈する国産バンドの最新作《The Answer》(2018) から。

 トシさんはご存知でしたが、あたしはこの方面には暗く、初耳でした。と思っていましたが、ハイランド・パイプの五社義明さんのライヴに飛び入りで熱いブズーキを披露していたのが、確かこのバンドのマサヤ氏ではなかったかしらん。

 こうしたタイプの音楽を "Paddy Beat" と呼ぶそうですが、ポーグスに源流があるように聞えます。

 曲は有名なもので、マイク・オールドフィールドもその昔やっていました。

KATSUO: vo., banjo
MASAYA: guitar, Irish bouzouki, banjo
SUZUYO: A-sax, tin-whistle, harmonica
LF: bass, bodhran
MUTSUMI: accordion
TOSHI: drums

THE ANSWER
THE CHERRY COKE$
徳間ジャパンコミュニケーションズ
2018-06-13



04. Danny Boy / tricolor, Hanz Araki, Colleen Raney
 このあたりでアイルランドの有名曲を1曲ということで選びました。演奏、録音は無数にありますが、このヴァージョンはアレンジが秀逸。後半、音域が高くなるところが、あたしにどうしてもセンチメンタル過剰で、あまりアイリッシュらしくなくも聞えるのです。ここでハンツ・アラキとコリーン・レイニィの二人は高くせず、しかも自然に歌っています。

 わが国ケルト系アコースティック・バンドのトップの一つ、tricolor のアルバム《うたう日々》(2016) 収録。

Hanz Araki: vocals
Colleen Raney: vocals
中藤有花: fiddle
長尾晃司: guitar
中村大史: bouzouki, accordion
渡辺庸介: percussion

うたう日々
tricolor
Pヴァイン・レコード
2016-04-20



05. All about Flying=Nenny's> Tam Lin / Uiscedwr
 〈Tam Lin〉のリクエスト。楽曲だけでアーティストの指定が無かったのでこれを選びました。「イシュカドーア」と読みます。アンナ・エセルモントがイングランドで結成したトリオ。《Everywhere》(2004) 収録。

 〈Tam Lin〉は有名なバラッドもあり、どちらにするか迷いましたが、バラッドの録音はフェアポート・コンヴェンションか無伴奏のものしか見つからなかったので、こちらにしました。無伴奏歌唱にもすばらしいものはありますが、ラジオでかけるのはちょっとためらいます。

Anna Esselmont: fiddle, chiddle, vocals
Cormac Byrne: bodhran, percussion
Ben Hellings: guitar

Everywhere
Uiscedwr
Yukka
2004-06-07



06. Chi Mi’n Geamhradh / Catherine-Ann MacPhee
 ここからケルト圏各地域の音楽を紹介しました。まずはスコットランド。

 「ケルト音楽」とはケルト語を話す地域の伝統音楽というのが、我々が掲げたものですが、スコットランドのケルト語、スコティッシュ・ゲール語で唄う、現役最高峰のシンガーがこのキャサリン=アン・マクフィー。タイトルの意味は "I See Winter"。アルバム (1991) のタイトルでもあります。

 曲は実は伝統歌ではなく、スコットランドを代表するルーツ・ロック・バンド Runrig のソングライター・チーム Rory & Calum Macdonald のペンになるもの。かれらの作る曲は、キャサリン=アン・マクフィーのような伝統に深く根差したうたい手が、かれらの歌の無いアルバムは考えられないと言うくらい、質の高いものです。オリジナルは1988年のライヴ盤《Once In A Life Time》収録。

 Runrig もぜひ紹介したかったのですが、「次」を待ちましょう。

Cahterine-Ann MacPhee: vocals
Savourna Stevenson: harp
Jack Evans: whistles
Charlie McKerron: fiddle
Neil Hay: fretless bass
Allan MacDonald: practice chanter, jew's harp, chorus
Jim Sutherland: percussion

I See Winter
Catherine-Ann Macphee
Greentrax
1994-09-06


Once in a Lifetime Runrig Live
Runrig
EMI Europe Generic
1990-07-01



07. Megan’s Wedding> The Herra Boys> The Barrowburn Reel / Aly Bain & Phil Cunningham
 スコットランドでもう1曲、ダンス・チューンのメドレー。この3曲はビートが異なるので、曲のつなぎがよくわかります。

 演奏しているのはシェトランド出身の大ベテラン、アリィ・ベインと、こちらもベテランの鍵盤アコーディオン奏者、フィル・カニンガムのデュオ。1994年のデュオとしてのデビュー作《The Pearl》から。その後、この二人は見事な録音をコンスタントに出しています。

Aly Bain: fiddle
Phil Cunningham: accordion

The Pearl
Aly Bain & Phil Cunningham
Whirlie



08. Redeside Hornpipe> Kyloe Burn / Alistair Anderson & NORTHLANDS
 ケルト圏各地の音楽紹介は続いてノーサンバーランド。スコットランドとイングランドの境界、北海側の州。ここにはノーサンブリアン・スモール・パイプと呼ばれる独特のバグパイプがあります。アイルランドのイリン・パイプ同様、鞴でバッグに空気を送り込みます。

 今回はそちらではなく、コンサティーナを中心としたアンサンブルで、ノーサンブリアン・チューンのメドレー。このコンサティーナはアイルランドで使われる「アングロ・コンサティーナ」ではなく、「イングリッシュ・コンサティーナ」です。「アングロ」は同じキーを押しても、蛇腹の押す引くで別の音が出ます。「イングリッシュ」はキーが同じなら、押しても引いても同じ音が出ます。

 アリステア・アンダースンは1960年代から活躍している大ベテランで、ノーサンブリアン・パイプの名手でもあります。近年、孫ほどの若い人たちとバンドを組んで、みずみずしい音楽を聞かせてくれます。

Alistair Anderson: English concertina
Sophy Ball: fiddle
Sarah Hayes: flute
Ian Stephenson: guitar, double bass, piano 


09. Pa Le? / 9Bach
 ブリテン島の西側にアイルランドに向かって突き出た、半島というよりは陸の塊がウェールズ。キムリア語と名告るケルト語の一派が話される地域です。ケルト語は他の地域ではどこでも消滅の危機が叫ばれていますが、ここだけは日常語として定着しています。英語ももちろん通じますが、近年では従来英語が強かった南部の中心都市カーディフでもキムリア語が日常語になっているそうです。ケルト語に属する言語はどれも我々日本語ネイティヴには極端に発音が難しいものですが、キムリア語はとりわけ難しいです。

 ここには中世以来続くハープの伝統があります。弦が3列になっているトリプル・ハープと呼ばれる独特のタイプです。また合唱もひじょうに盛んです。1965年にチャーチルが死んだ日の晩、いつもは歌声の絶えないウェールズのパブで、誰もがチャーチルについてしゃべる中、歌声がまったく聞えないことを記している人もいました。

 一方で、1970年代後半から、アイルランドやスコットランド同様、モダンな形の伝統音楽が盛り上がります。その現在最先端の形がこのバンド。この歌は伝統歌で2014年のセカンド《Tincian》から。唄われているのはキムリア語です。

Lisa Jen: piano, vocals
Ali Byworth: drums, percussion
Esyllt Glyn Jones: harp, vocals
Dan Swain: bass
Martin Hoyland: guitar, percussion
Mirain Haf Roberts: vocals

ティンシャン (TINCIAN)
9Bach
サンビーニャ・インポート
2014-05-11



10. Amazing Grace / Yann-Fanch Kemener
 ケルト圏の音楽紹介のしめくくりはブルターニュ。フランスの北西に突き出た半島です。ケルト語は大きく二つのグループに分られます。アイルランド語、スコティッシュ・ゲール語、それにマン島のマンクス・ゲール語が一つ。キムリア語、ブルターニュのブルトン語、それにウェールズの南、ブリテン島の南西に伸びる半島のコーンウォールのコーンウォール語がもう一つです。音楽的にも、この二つのグループはそれぞれに共通しています。

 ブルターニュはアイルランド、スコットランド、ウェールズとならぶ「音楽大国」です。ということはヨーロッパでも、また世界的に見ても「音楽大国」の一つでもあります。実は「ケルト音楽」ということを最初に言い出したのはこのブルターニュ音楽の先頭に立ってきたアラン・スティヴェールです。1960年代末のことでした。当時、フランスはまだ中央集権的で、ブルトン語やフランス南部のオック語などの諸言語は「方言」として抑圧されていました。それに対してブルトン音楽の独自性を訴えるために、これはフランスの一部ではない、広くケルト音楽の一環なのだと主張したのです。

 スティヴェールは父親が復興した小型のハープを主な楽器とし、カリスマ的リーダーとしてブルトン音楽を引張りました。元々強かった独自の伝統はかれによって現代化され、大きく花開いています。

 本来ならば、その音楽の実例をそのままご紹介すべきではありますが、ここの音楽の個性にはかなり強烈なものがあります。一つには、番組の始めの方に各々に相当に異なるものをあまりにたくさん並べると、混乱するリスナーも出てくるという配慮がありました。もう一つには、ブルターニュの音楽の多様性の幅は飛び抜けて大きく、どれか一つだけ選ぶのに困ったという事情もあります。

 そこで思いついたのが、このブルトン語による〈Amazing Grace〉でした。よく知っているメロディにのせて唄われると、初めて聞く言語が多少とも親しみやすく、同時に新鮮に響きます。

 〈Amazing Grace〉そのものの出自はケルト音楽とは関係が薄いのですが、ハイランド・パイプでよく演奏されることもあり、ケルト音楽の曲と認識される傾向が強い。

 歌っているヤン=ファンシュ・ケメナーはブルトン語伝統歌のうたい手として筆頭に挙げられる人です。ここでの歌詞はケメナーのオリジナルで、このトラックの録音当時2000年に注目されていたコソヴォ難民をテーマにしています。バックを支えるのも、現代ブルターニュ音楽のトップ・ミュージシャンたちです。 収録アルバムは《Les Grands Airs Celtiques》(2000)。

Yann-Fanch Kemener: vocal
Alain Genty: bass, keyboards, programming
Jacky Molard: violin
Patrick Molard: bagpipes

Les Grands Airs Celtiques
Les Grands Airs Celtiques
Traditions Alive Llc
2001-03-15



11. Here’s A Health To The Company(仲間に乾杯) / The Chieftains
 リクエストから。《A Chieftains Celebration》(1989)収録。これはまことに珍しい1曲で、ケヴィン・コネフのリードでバンド・メンバーがコーラスをつけ、アカペラで唄われます。つまり、ここでは誰も楽器を演奏していません。一度はこういうのをステージで聴きたかったものです。

Derek Bell
Martin Fay
Sean Keane
Kevin Conneff
Matt Molloy
Paddy Moloney

Celebration
Chieftains
Bmg Special Product
2004-06-01



12. Eoghainin O Ragadain / Altan
 これもリクエスト。《Another Sky》(2000) から。アイルランド語の古い歌で、メンバーのダーモット・バーンの叔父さん経由で伝わっています。ここでアコーディオンがフィーチュアされているのはそのせいかもしれません。タイトルは人名ですが、歌詞の内容はほとんどシュールリアリスティック。

Mairead Ni Mhaonaigh: vocals, fiddle
Ciaran Tourish: fiddle, whistle, chorus
Dermot Byrne: accordion
Ciaran Curran: bouzouki
Mark Kelly: guitar
Daithi Sproule: guitar, chorus

アナザー・スカイ
アルタン
EMIミュージック・ジャパン
2000-03-23



 以下、続く。(ゆ)

 まずは、「今日は1日ケルト音楽三昧」をお聞きいただき、御礼を申し上げます。昨日はやはり興奮していたのでありましょう、終ってからもあまり疲れは感じなかったのですが、今日になってくた〜としております。

 やってみての感想は番組の最後にも申しましたように、「よい勉強をさせていただいた」の一言に尽きます。それはもういろいろの面で、準備の段階からしてそうでしたが、本番では目鱗、耳ウロコがぼろぼろ落ちておりました。遊佐未森さん、光田康典さん、それに寺町さん、豊田さんのゲストの方々、富貴晴美さんの録音メッセージには、それこそ「鳥肌」の連続でありました。音楽の面ばかりでなく、リスナーへの姿勢、情報伝達のアプローチのやり方、あるいはしゃべり方や情報の裁き方などなど、あらゆる方面でよい修行をさせていただきました。NHK にはいろいろ不満もありますが、なんだかんだ言っても、プロフェッショナルな方々がおられることも認識させられました。ラストの Auld Lang Syne の説明をどうまとめるか、あたしはほとんどパニックになっていたのですが、あの最高のエンディングにもちこんだのは、アナウンサーの赤木さんはじめ、スタッフの方々の手練の賜物です。もちろん、すべてを消化吸収して、自分も同じようにできるわけではありませんが、できるところは見習って、もし次があるならば、活かしたいと思うことであります。

 それにしても何よりの収獲は、ケルト音楽との出会いが「何だ、これは?」という衝撃であったことがはっきりと把握できたことです。このことはアナウンサーの赤木さんも強調されていて、とりわけ、光田さんとのお話の中で明らかになっていったのですが、遊佐さんにとっても、富貴さんにとっても、同様の衝撃が源になっている。寺町さんのアイリッシュ・ダンスとの出会いも同じ。あたしもまさに「何だ、これは?」から始まったのでした。

 もう一つ、ああ、そういうことかと納得したのは、やはり光田さんがアイルランドをはじめとするケルト音楽の音階が長調でも短調でもない、どちらにもなりうるし、ある音だけ調を変えることもできる、そこが面白いと言われたこと。長調か短調かはドレミのミの音で決まるのだが、ケルトの音階にはこのミが無い。だから、ギターなどでコードをどう付けるかでどちらにもできる。したがってケルトのメロディは哀しいと同時に楽しくもできるし、逆も可能になる。

 富貴さんも、日本音楽の音階とケルト音楽の音階の相似を語られていました。作曲家の視点はやはりリスナーともプレーヤーとも違うのだなあ、と感服したことであります。

 生放送というのはやはり恐しいもので、ミスもたくさんありました。あたしがやらかした最大のものはヴァン・モリソン&チーフテンズの Irish Heartbeat を「1977年」と口走ったことです。なんでそんなことが口から出たのか、さっぱりわかりませんが、まあ端的にアガっていたということでしょう。幸い、すぐに誰にでも間違いとわかり、しかも正しいデータも出てくるので、それほど害は大きくなかったことを願っています。

 年号はともかく、あのアルバムが世のアイリッシュ・ミュージック認知に果たした役割には、その後の『タイタニック』や『リバーダンス』を一面では凌ぐものがあることは確かです。あれをやってのけたのはパディ・モローニの最大の業績に数えられるべきものです。

 トシさんもつくづく言っていましたが、今やっていることへの反応がリアルタイムで出てくるのはツイッターの面白いところです。

 反響の大きさには、正直、あっけにとられるところもありました。一方で、それだけ「ケルト音楽」が広く浸透していることの現れでもあります。今回、あえて「ケルト音楽」とは何かを定義したりせず、できる限り広く門戸を開いたことも寄与していたかとも思います。なかにはこれが「ケルト」かと首をかしげられる楽曲もあったかもしれませんが、また他方では、ハード・ロックやクラシックまで、実に幅広い楽曲を聞くことができました。

 「三昧」はリクエストが柱の1本ですが、前日まで来ていたものにも、あたしには初耳のミュージシャン、楽曲がいくつもあり、我々の予想は嬉しい意味で完全に裏切られました。リクエストは放送が始まってからの方が圧倒的に増えるそうですが、今回は特に顕著で、しかも相当に広く深かったそうです。生演奏が3組、ゲスト出演がお二方、それにトシさんのリクエストでマーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの28分のトラックもありましたから、放送された楽曲の総数は他の「三昧」の平均よりも少なくなりました。この点、次があるとすれば、改善の余地はありそうです。

 次があるとすれば、と先ほどから書いていますが、反響の大きさからして、次もおそらくできるのではないか、と番組のプロデューサーも言われていました。とはいえ、リスナーの後押しが一番です。次を希望される向きは、番組へのメール、あるいはツイッター公式アカウントへのメッセージなどで、直接希望をぶつけてください。

 正直、次があるとしても少し間をあけていただきたいものではあります。あたしの個人的希望を言わせていただければ、最短で来年のまた同じ時期が理想です。

 とまれ、赤木さんも繰り返し言われていたように、ケルト音楽の世界は広くて、深いものです。今回の放送でリスナーのお一人おひとりが、それぞれの「何だ、これは?」に出会い、あらためてケルト音楽の豊饒な世界の探索におもむかれる、そのきっかけになることを祈ります。

 ぼく自身、くたびれはしたものの、音楽をもっともっと聴きたくなっている自分を発見してもいます。

 とりあえずは、この企画に巻きこみ、共同解説者として責任を分担してくれたトシバウロンに最大の感謝を捧げます。(ゆ)

 肝心なことを忘れてました。この「ケルト音楽」って、何だ。というのは、番組のための打合せでもまずはじめに出たことではあります。

 アイリッシュはケルトにはちがいない。エンヤがそうだという人も多いだろう。ヴァン・モリソン&チーフテンズで「ケルト」に開眼した人もたくさんいる。ジブリのアニメでもカルロス・ヌニェスやセシル・コルベルがやっている。いやいや、『ファイナルファンタジー』をはじめとするゲームの音楽だ。

 まあ、こういうものも用意してはいますが、あたしやトシさんが基本として頭に置いているのは、もっと大きく広い。結局定義としては「ケルト語が話されている地域の伝統音楽とそれをベースにした音楽」です。

 具体的な地域をあげれば、まずアイルランド、スコットランド、ウェールズ、ブルターニュの4つが「大国」です。この4つの地域はヨーロッパ全体でみても、ひいては地球全体でみても「音楽大国」です。

 加えてスコットランドとイングランドの間のノーサンバーランド、ブリテン島の南西に伸びる半島のコーンウォール、アイルランドとスコットランドの間の島、マン島、スペイン北西部のガリシアとアストゥリアスなどの地域です。

 さらに、こうした地域からは17世紀以降、たくさんの人が移民しています。移民した先にはもちろん音楽も携えてゆき、根付いた先でその音楽が栄えます。まず北米、アメリカ東部のボストンやシカゴはアイリッシュ・ミュージックが盛んですし、カナダ東部、ノヴァ・スコシアのケープ・ブレトンではスコットランド音楽が独自に発展しています。さらには数は減りますが、オーストラリアやニュージーランドに渡った人びともいます。

 ところで、じゃあ、ケルト語とは何か。というのは番組の中でまず話すことになるでしょうが、予習として書いておきます。ヨーロッパの言語のほとんどはインド・ヨーロッパ語族に属することは、だいたい皆さんご存知でしょう。その中がまたいくつかのグループに分れます。たとえばフランス語、イタリア語、スペイン語などのラテン語派。ドイツ語、北欧諸国の言語、英語などのゲルマン語派。それとならぶ大きなグループがケルト語派です。

 ケルト語派はまた二つに分れます。ひとつが「島のケルト」と呼ばれることもあるアイルランド語、スコティッシュ・ゲール語、マンクス・ゲール語。もう一つがウェールズ語、ブルターニュ語、コーンウォール語などで、こちらは「大陸のケルト」と呼ばれたりもします。

 このケルト諸語がどういう経緯でこうした地域で話されているのかは大きすぎるのでひとまず脇に置きます。

 ケルト語が話されている地域、と言いましたが、その事情もまた複雑です。こうした地域は各々英語やフランス語やスペイン語といった大きな言語、つまり話者人口が多い言語のすぐお隣りで、こうした言語が日常語として浸透しています。そのためケルト語はどこでも少数言語として消滅の危機にさらされています。実際、コーンウォール語は二十世紀半ばに一度消滅しています。つまりネイティヴ・スピーカーが一人もいなくなりました。その後復興の努力がなされて、今はまた話せる人が増えているようです。

 アイルランドやスコットランドでも事情は同じで、言語消滅の危機が常に叫ばれています。ただ、前世紀末から風向きが変わってきました。たとえばアイルランドではアイルランド語は義務教育で必須とされているにもかかわらず、日常生活ではほぼまったく使われませんでした。わが国における英語と同じような位置にあったわけです。ほとんどのアイルランド人にとってアイルランド語はタテマエとしては大事なものではあるものの、ホンネではできれば触れたくないお荷物、あんまりカッコいいものではなかったのです。

 それが、20世紀も最後の十年ぐらいから、アイルランド語はカッコよくなってきました。名前も英語名をやめてアイルランド語にしたり、アイルランド語名前を子どもにつけたり、さらには若い夫婦が子どもをアイルランド語ネイティヴとして育てるためにアイルランド語が日常語として使われている地域、ゲールタハトと呼ばれる地域に引越すという現象まで起きてきました。

 そのきっかけとなったのが音楽です。アイリッシュ・ミュージック、アイルランドの伝統音楽は1980年代後半から急激に盛り上がり、今世紀初頭まで、空前の活況を呈します。そこで例えば筆頭に立ったアルタンが、アイルランド語のうたを歌うと、これがカッコいいと聞える。

 スコットランドでも同じで、一昨年来日した Joy Dunlop はスコティッシュ・ゲール語で日常会話もしていましたが、ネイティヴではない、つまりスコティッシュ・ゲール語は彼女にとって第二言語です。そしてジョイがスコティッシュ・ゲール語に興味をもち、ぺらぺらになるまでになったのは音楽が入口だそうです。

 実際、アルタンのマレードがうたうアイルランド語の歌や、ジョイがうたうスコティッシュ・ゲール語の歌は実に美しく、カッコよい。ヤン=ファンシュ・ケメナーがうたうブレトン(ブルターニュ)語の歌やカレグ・ラファルのリンダ・オゥエン=ジョーンズがうたうキムリア(ウェールズ)語の歌も、やはりいわんかたなく美しく、カッコいい。アイルランド人やブルターニュ人でなくても、これは一丁、自分でもこの言葉でうたってみたい、と一度は思います。

 英語やフランス語やドイツ語の歌もそれぞれに美しくカッコいいのはもちろんですが、ケルト諸語の言葉の美しさ、カッコよさには飛び抜けたところがあります。我々の耳には、歌うのではなく、ただしゃべっているだけでも歌をうたっているように響きます。それは我田引水の類としても、音楽は言葉とつながっているわけですから、ケルト語を話している地域に音楽が盛んというのは、やはりなんらかの密接な関連があるはずです。

 こういう地域の音楽を全部、今回紹介できるか、はちょっと難しいところもあります。ケルト語という共通点はあります。ダンス・チューンでは、どこの音楽も短かいメロディをくるくると繰り返してつなげていきます。ハープとバグパイプを使います。使う音階もだいたい同じ。一方で、各々はまたかなりに異なるところもあります。「島のケルト」と「大陸のケルト」の言葉の違いは音楽の違いでもあります。そういうものをあれもこれも一度にどばっと聞かされると、ちょっと待ってくれと言いたくなるでしょう。あたしなども何年もかけて少しずつ聴いてきてます。昔はネットなどはむろんありませんから、情報も手に入る音源も少ない。少しずつしか聴けなかった。それが幸いしたところはあります。

 それでも、まあ、こんなのもありますよ、と1、2曲でも紹介できればいいなとは思っています。中にはそこに引っかかる人もいるでしょう。スコットランドにはちょっと引くけれど、ブルターニュはカッコいいと感じることもありえる。なにせ、8時間以上あって、他の「三昧」のプレイ・リストを見ると、80から100曲近くかけています。アイリッシュばかり80曲かける、そりゃ、やれと言われれば100曲ぐらいは軽くかけられますが、それを喜ぶ人はやっぱり少ないでしょう。どこかでそういうイベントをやってみたい気もしますが、ラジオではないでしょうね。ですから、やはりなるべくいろいろな地域、いろいろな形のものを紹介することはできるんじゃないか、と期待してます。

 ということで、そういうリクエストをいただけると仕事がやりやすくなって、ありがたいです。この地域のお薦めを聞きたいとか、漠然としたものでもたぶんいいんじゃないでしょうか。

 ちょうど今朝、ウェールズの 9Bach のニュースレターが来ました。ウェールズでも今一番トンガった音楽をやっているバンドです。



 やはり今朝、スコットランドのハーパー Rachel Newton からのニュースレターも来てました。ソロの他、女性ばかりのバンド The Shee のメンバーでもあり、イングランドのミュージシャンたちとのジョイント・プロジェクト The Furrow Collective の一員でもあり、さらに単発やシリーズのライヴや演劇にも参加していて、多忙なんてもんじゃないようでもあります。


 このあたりはぜひ紹介したいところです。(ゆ)

 この話は実は昨年末に来ていて、以来、あれこれ準備してるわけですが、一つはこういう時必ずリクエストが来たり、かけてくれと頼まれる定番曲の用意です。

 不特定多数を相手にする発信の機会をいただいて一番ありがたいのは、こういうチャンスがないと絶対に聞かないような音源をあらためて聴かざるをえなくなることです。

 で、下記のような曲で、ありきたりのものを聴いても面白くないから、何かないかと手許の音源をさらうと、結構いろいろ出てきます。


〇Amazing Grace
Yann-Fanch Kemener, Les Grands Airs Celtiques, 2000
 この曲は楽曲の出自からするとケルトとは関係がありません。歌詞はイングランドの牧師さんが作った聖歌だし、メロディは19世紀半ばに、二つの伝統曲を合成してアメリカで作られてます。元の伝統曲はそれまで口誦伝承されていたらしく、起源不詳、たぶんブリテンのものであろうとされています。アメリカでのみ人気があり、演奏されている、というよりも、第二次世界大戦後、録音によって広まるまでアメリカ以外では知られていなかったそうです。

 この曲がなぜケルトと結びつけられるのか、あたしにはよくわかりません。ハイランド・パイプでよく演奏されるからというのも、どちらかといえば、パイプ側の主体的選択ではなさそうですしねえ。確かに、パイプで演奏すると映えますけどね。

 それはともあれ、ブルターニュ伝統歌謡最高のシンガーがこれを唄っているわけです。歌詞は本人のオリジナル。2000年の録音で、当時大きくとりあげられていたコソヴォ難民を謳っている由。バックはモラール兄弟とベーシストの Alain Genty と、これもベストの布陣。アレンジはジェンティ。

 これがもう良いなんてもんじゃない。ブレトン語というだけでまず新鮮ですが、何せヤン=ファンシュ・ケメナーです。うたい手としては、ブルターニュだけじゃない、ヨーロッパ全土でも指折りの人が心をこめて唄い、それを鉄壁のアレンジがささえる。絶唱といっていいでしょう。これを見つけたときには、今回の企画がどうなろうと、これだけでもうあたし個人としては最高の収獲と思いました。

 収録されているのは2000年に Keltia Musique が出したオムニバスで、そっけないタイトルとトラック・リストに並んでいる定番曲だけ見て、放置していて、持っていることすら半ば忘れていたもの。今回のような企画がなければまず永遠に聴かなかったでありましょう。

 聴いてみれば、ほとんどがこのための新録で、他にも冒頭の Jamie McMenemy の〈Scotland the Brave〉とか、掉尾のベルギーのグループ Orion の〈Auld Lang Syne〉とか、さらには The Fallen Angels のアカペラ版アイルランド国歌とか、とんでもない録音が詰まってました。このアイルランド国歌も番組のどこかで紹介したいもんです。


 というような感じで、まあ楽しいんですが、以下の曲で複数の名前が書いてあるのは、どれにするか絞りきれていないもの。こういうところで、これが聴きたいというリクエストをいただけるとありがたいです。


〇Danny Boy
Hanz Araki & Colleen Raney, tricolor, うたう日々, 2016

〇Down By The Sally Gardens
Kathryn Roberts, 1993, Intuition, 0:04:11
Maireid Sullivan, 1994, Dancer, 0:03:36
Noirin Ni Riain, 1996, Celtic Soul, 0:05:51

〇Foggy Dew
奈加靖子, Slow & Flow, 4:53
Tomas Lynch, The Crux Of The Catalogue, 5:55

〇Lagan Love
Sinead O'Connor, Sean-N'os Nua, 0:04:44
Niamh Parsons, Heart's Desire, 0:03:12
上野洋子, SSS 〜Simply Sing Songs〜, 0:03:49
Lisa Hannigan, The Chieftains, Voice Of Ages

〇My Love Is a Red, Red Rose
Davy Steele, 1998, Complete Songs Of Robert Burns, Vol. 04, 0:02:22
Kathryn Tickell + Corrina Hewat, 2006, The Sky Did't Fall, 0:03:21

〇Raglan Road
Alyth, Homelands, 4:43
Tommy Sands, Too Shorten The Winter, 5:13
奈加靖子, Slow & Flow, 6:23

〇Scotland the Brave
Jamie McMenemy, Les Grands Airs Celtiques, 

〇Siuil a Run
Anam, First Footing, 3:24
Carmel Gunning, The Lakes Of Sligo, 3:05
Connie Dover, The Wishing Well, 4:34
Skylark, All Of It, 3:05
Maighread Ni Dhomhnaill & Iarla O Lionaird, Sult, 4:47

〇The Last Rose Of Summer
Megson, On The Side, 3:42

〇Water Is Wide
Sian James, Di Gwsg, 3:05
Ross Kennedy & Archie McAllister, THE GATHERING STORM, 1996, 4:30
Josienne Clarke & Ben Walker, Nothing Can Bring Back The Hour, 3:14
優河, 街灯りの夢, 6:01

〇Whiskey in the Jar
Frank Harte & Donal Lunny, My Name Is Napoleon Bonaparte, 2:43


 さて、あと1週間しかないし、まだまだ用意しなければならないことはあるんで、作業にもどります。(ゆ)

 ようやくサイトが公開になりましたので、お知らせします。

 来週03/21(木)にNHK-FM で「今日は1日ケルト音楽三昧」が放送されます。正午過ぎ、12時15分から夜9時15分までの生放送、途中、夜の7時前後にニュースなどで40分の中断が入ります。公式サイトはこちら。リクエストもこちらのサイトからどうぞ。

 これの解説にあたしが駆り出されました。トシバウロンと二人で8時間半を担当します。

 ラジオには何回か出させていただいてもいますし、ライヴのイベントもやってはいますが、8時間半の生放送は初めてで、どういうことになるのか、まるで見当もつきませんが、まあ、なんとかなるだろう、と亀の甲より年の功というやつで、楽観してます。

 リクエストが優先されるようなので、皆さん、濃いやつをお願いします。リクエストとなるとエンヤなんかも来るでしょうし、ラスティックも多いんじゃないかと思いますが、正直、そういうのはもう避けたい。そういう向きは、他にいくらでも聴けるチャンスはあるわけですから、時間に余裕のあるこういうときには、ふだん、かけられないようなものをかけてみたいもんであります。リクエストはあたしにではなく、あくまでも上記公式サイトからお願いします。

 それと、今回は「ケルト音楽」ということで、アイリッシュに限りません。スコットランド、ウェールズ、ブルターニュはもちろん、コーンウォール、ノーサンバーランド、マン島などのケルトの中でもマイナーなところや、スペイン北部、北米、オーストラリアなどまで手を伸ばしたいものです。もちろん、わが国で今盛り上がっている状況も紹介したいですね。

 トシさんがいるということもあって、ゲームやアニメ方面の話や楽曲にも触れる予定です。こないだ『フェアリー・テイル』アニメ版のテーマを聞いて、あんまりマンマなんでびっくりしました。

 あたしなんてはたして8時間も保つのか、不安もありますが、トシさんがいるんで、まあ何とかなるでしょう。しかし、前日ははにわオールスターズのライヴ。ほんとにどうなるんでしょうねえ。(ゆ)

 FMの地方ネットワーク JFN に "A・O・R" という番組があります。毎晩19:00〜21:00の2時間枠で、その後半が曜日変わりの特集で木曜日がワールド・ミュージック。

 この番組はローカルなFM局で聞ける他、radiko などのネット経由でも聞けるそうです。

 しばらく前からこの番組のワールド・ミュージックの特集でコメントと音源の提供をしているんですが、昨日は明日放送予定の「スウェーデンの音楽」のコメント収録してきました。

 今回はあたしよりも適任者がいると言って推薦したんですが、諸般の事情からやっぱりあたしがやることになった次第。といっても最近の状況については真暗なので、あわてて泥縄で話を伺い、音源も拝借する始末。おかげでなんとかこなしました。

 久しぶりにスウェーデンの音楽をまとめて聴きなおしましたが、やっぱりええのう。番組の中でもコメントしましたけど、伝統と革新のバランスがうまくとれてる点ではダントツじゃないかと思います。

 聴きなおしてみてあらためて感嘆したのは Groupa。リアルタイムで聴いていた頃はどうも目立たない印象でしたが、うーん、マッツ・イーデン偉い! スウェーデンの大物は誰もかれもトンガってますが、トンガる方向がひょっとすると一番ラディカルかもしれない。サイト行ってみると、まだバンドとして現役じゃないですか。

 それとやっぱりあたしにとってスウェーデン音楽の原点フォルク・オク・ラッカレは、いいんですよねえ。カリン・シェルマンのヴォーカルは、その後リエナやウリカやを聴いても、やっぱり最高だあーと思う。この凛とした気品は伝統音楽の本流からはあるいははずれるかもしれないけれど、彼女のうたを聴くだけで心洗われて、別の人間になっていく気がします。その点では、世界にディーヴァもたくさんいる中で、この人の右に出るうたい手はいない。最近再編したそうですが、一度は生で聴きたいですなあ。

 スウェーデンは音楽的には「大国」で、これは1回ではすみそうもないですね、という話にもなりましたので、たぶんまたやることになるでしょう。まあ、知っている人には特に目新しい話はありません。この番組自体は浅く広くの方なので、これから聴こうとか、スウェーデンに音楽があるのかという向きは、流し聞きしてみてください。(ゆ)

 昨日放送されましたピーター・バラカンさんの番組「ウィークエンド・サンシャイン サマースペシャル - ケルト音楽」でかけました楽曲リストです。

 ひとくちに「ケルト」といっても、こんなにいろいろとあるのです、と紹介したいことがメイン・テーマでしたが、もう一つ隠れたテーマは「うた」であります。ケルトというとインストルメンタルばかりが脚光を浴びがちなので、もっとうたを聴いていただきたい、と思った次第。収録が終わったところで hatao さんから、こんなにうたがお好きだとは意外でした、と言われましたが、ぼくの原点はうたであります。あちこちで言ったりしておりますが、ある時期までぼくはダンス・チューンが苦手でありました。LP片面というと平均20分ですけど、それがダンス・チューンで埋まっていると聴き通すのが苦痛でした。アイリッシュをアイリッシュとして意識したのもドロレス・ケーンのうたでしたし、アイリッシュでいいなと当初思ったのはクリスティ・ムーアのソロでした。

 というわけで、まずは出発地のアイルランドもうたを聴いていただきました。

Ireland
Darach O Cathain
O Cathain Darach
Traditions Alive Llc
2004-05-24


01. 〈Sail Og Rua (Sally of Red Hair)〉
Darach O Cathain
《Traditional Irish Unaccompanied Singing》
 ダラク・オー・カハーン (1922-1987) はゴールウェイはコネマラ出身のシンガーです。もちろんプロなどではなく、録音はこの1975年リリースのアルバム1枚と、ショーン・オ・リアダのキョールトリ・クーランとのアルバムがあります。そちらもダラクのトラックはすべて無伴奏です。お聴きのとおり、何の飾りもギミックも、あるいは技巧すら無いと思えるほど、坦々とうたっているだけの録音ですが、聴いているうちに妙に胸に沁みてくる不思議。シャン・ノースって何よ、と訊かれれば、これです、とためらわず差し出します。アイルランド音楽の真髄。ですが、アイルランドだけのものでもありません。うたというもののひとつの究極、最も普遍的な姿です。もし、これを聴いて何も感じなければ、アイルランド音楽ともケルトの音楽とも縁は無いものと諦めて、別の方へどうぞ。ひょっとすると音楽そのものが合わないかもしれません。

Daybreak: Fainne an Lae
Muireann Nic Amhlaoibh
Compass Records
2006-03-14


02. 〈Slan Le Maigh (Farewell to Maigue) 〉
Muireann Nic Amhlaoibh
《Daybreak: Fainne An Lae》
 そのアイルランド歌謡伝統のいまを代表するうたい手です。ムイレン・ニク・オウリーヴと読みます。今世紀初頭のアイルランドを代表するバンド Danu のシンガー。ですが、ぼくは実は彼女が 同じくアイルランドの Eamon Doorley、後で出てくるスコットランドの Julie Fowlis、そしてやはりスコットランドの Ross Martin と作った《DUAL》(2008) でその存在に開眼しました。これはソロ・ファーストで、アイルランド語だけでなく、英語のうたもうたっています。ドロレス・ケーンやニーヴ・パースンズ、ポゥドリギン・ニ・ウーラホーンなど、アイルランドのすぐれたシンガーの伝統を継いで、ふくよかなアルトを聴かせてくれます。ひょっとするとアルトよりもっと低いかも。タイトルの "Maigue" は川の名前の由。彼女はまたフルートとホィッスルの名手でもあり、上記の録音でもすばらしい演奏があります。

Transatlantic Sessions 3 Vol.2
Various Artists
Whirlie
2008-02-28


03. 〈Sail Away Ladies/Walking In The Parlour〉
Michael McGoldrick
《Transatlantic Sessions 3 Volume 2》
 うたばかり、というわけにもいかないのでチューンも1曲。ですが、これは実はアイリッシュ・チューンではなく、アメリカのオールドタイム・チューンとして有名なもの。マイケル・マクゴールドリックのイルン・パイプにブルース・モルスキィのフィドル、ブズーキでドーナル・ラニィが加わったトリオでの演奏。BBCスコットランドが製作して大ヒットした "Transatlantic Sessions" の第3シーズンの1曲。このシリーズは演奏もですが、とにかく映像がすばらしいので、ぜひご覧になってください。ネットにも上がっていますが、DVD を買う価値は十分以上にあります。PAL 方式ですが、PC/Mac で見られます。リージョンはフリーです。

 この演奏でも3人がそれはそれは楽しくてしかたがないという風情で、とりわけマイケル・マクゴールドリックのパイプが出色。イルン・パイプでオールドタイムをやったのはこれが史上初ではないでしょうが、これだけ自家薬籠中のものとして、まるでこのパイプのために作られたかのように演奏しているのは初めてと思います。

Transatlantic Sessions 3 [DVD] [Import]
Aly Bain & Jerry Douglas
Whirlie
2008-01-21



 アイルランドはあっさりとここまでで、早速旅に出ます。最初の寄港地はスコットランド、ではなく、アイルランドとスコットランドの間にあるマン島です。ここにはマンクス・ゲール語があり、独特の音楽伝統が生きています。

 もっとも、後で出てくるコーンウォールもそうですが、伝統文化は20世紀半ばには衰頽し、マンクス・ゲール語も一度は死にたえました。1970年代以降、アイルランドなどの盛り上がりに刺激されて復興の動きが始まっています。

Isle of Man
04. Ushag Veg Ruy (Little Red Bird)/ Emma Christian // Beneath The Twilight  
05. Lament Of The Duchess Of Gloucester/ Emma Christian // Beneath The Twilight
 ここでご紹介するエマ・クリスチャンは1994年に突如このソロ・アルバムで登場して、ぼくらを仰天させました。今のところ録音はこれだけです。うたとリコーダーの名手、という以上に、ミステリアスな世界はユニークです。

 ただし、これだけがマン島の音楽というわけではもちろんなく、もっと明るい側面もあるようです。マン島の言語や音楽はむしろスコットランドからやって来たものとされますが、その後、ウェールズやコーンウォールとの交流もできたらしい。現在では年1回の全島的なフェスティヴァルも開かれています。


 マン島から狭い海を渡ればスコットランド。今回最大の目玉の一つです。


Scotland
 スコットランドの文化はアイルランドからの植民の遺産です。スコティッシュ・ゲール語、ガーリックと呼ばれる言葉はアイルランド語から別れたもので、ゆっくりしゃべればたがいに通じるそうな。ぼくらの耳にはあくまでもやわらかいアイルランド語に比べるとやや硬質な響きがまじります。

 スコットランド特有の楽器というと何をおいてもハイランド・パイプでしょうが、普及の点では圧倒的にフィドルです。ということで、まずはフィドルをどうぞ。

Farrar
Duncan Chisholm
Copperfish
2008-06-23


06. Nuair Bhios Mi Leam Fhin (When I Am Alone)/ Duncan Chisholm // Farrar
 ダンカン・チザムは Wolfestone のフィドラーとして名を上げましたが、この《FARRAR》から始まる "Strathglass Trilogy" には作曲も含めた音楽家としての成熟が現われ、スコットランドのフィドル音楽の一つの頂点と思います。曲はアルバム冒頭のスロー・エアで、ビブラートをまったく使わないことから生まれる響きの美しさは心に沁みます。録音全体はスロー・エアばかりでなく、ストラスペイ、ジグ、リールなどもあり、どれも急がずあわてず、じっくりと耳を傾むけるに値します。

07. An Cailleach (Cailleach 'Sa Mhaistrim (Hag at the Churn)/Cailleach An Tuirne (Hag of the Spinning Wheel)) / Salsa Celtica // El Camino
El Camino
Salsa Celtica
Discos Leon
2008-03-27


 スコットランドの「いま」を象徴するバンドがこのサルサ・ケルティカ。北海油田で働くためにカリブ海からやってきた人びとと地元の連中がそれぞれの音楽を持ち寄って組んだバンドの3作め。試行錯誤を重ねた末に生みだした新しい「伝統音楽」がここにあります。カリブのビートに乗って疾走するのは、実はアイリッシュ・チューン。ここにはバンジョーのエイモン・コインもいますし、シェトランドからクリス・スタウトも駈けつけてます。さらに、うたのトラックでリードをとるのはイングランドのイライザ・カーシィ。スコットランドでこそ可能になった「お祭」は、次のライヴで爆発し、さらについ先日出た最新作で一層の融合に向かいます。

08. Thou Has Left Me Ever, Jamie/Let Not Woman E'er Complain/Gat Ye Me, O, Gat Ye Me / Elspeth Cowie // The Complete Songs Of Robert Burns, Vol.5
Vol. 5-Robert Burns Complete Songs
R. Burns
Linn Records
1999-06-15


 スコットランドのうたといえばまずはロバート・バーンズ。英語圏全体としても偉大な詩人のひとりとして声価の高い存在ですが、スコットランドでは唯一無二。一方で300曲をこえる「うた」を残してもいます。伝統歌を換骨奪胎したものもあり、まったくの新作もあります。それらを網羅し、第一線のミュージシャンを総動員して製作されたのがこの『全歌集』です。従来よくあったような「観光地みやげ」のような感傷を排し、うた本来の姿を引き出すよう、入念なアレンジと入魂の演奏で、詩集としても、歌集としても、また伝統音楽のプレゼンとしても画期的な成果を生みだしました。全10集CD12枚をリリースしたのはグラスゴーに本拠を置くオーディオ界の雄 Linn Audio 傘下の Linn Records。録音もまた模範的です。リンはいち早く音楽配信をとりいれ、CDプレーヤーの製造を数年前にやめてしまいました。リン・レコードもハイレゾ配信に熱心です。このシリーズはハイレゾはありませんが、サイトからファイルの形で購入できます。

 エルスペス・カウイーは1970年代から活動するベテランの一人で、伝統歌のシンガーとしてスコットランド有数の一人です。無伴奏を最も得意としますが、ここではマルコム・スティット、サンディ・ブレチン、エイダン・オルークをバックに味わいの深いうたを聴かせます。最後に入る男性シンガーはジョン・モラン。


09. An Glas Mheur (The Fingerlock) / William MacDonald // Ceol Na Pioba - Piob Mhor
Ceol Na Pioba-Piob Mhor
Ceol Na Pioba-Piob Mhor
Greentrax
2000-05-16


 スコットランドといえばハイランド・パイプは欠かせませんが、そのハイランド・パイプにとっての古典音楽がピブロック piobaireachd です。ハイランド・パイプは本来ピブロックを演奏するための楽器と言うべきものでもあり、これをきちんと演奏できないと一人前のパイパーとは認められません。ハイランド・パイプにとってダンス・チューンは「小音楽」であり、ピブロックこそは「大音楽」です。

 ピブロックは必ずソロで演奏されます。まず比較的シンプルなメイン・テーマが提示され、それを繰り返しますが、繰り返す際にメロディの各音の間に装飾音が加えられます。そして装飾音の数が繰り返すごとに増えていきます。最終的には7個になり、最後に再びメインのメロディだけが演奏されます。

 この音楽は演奏するにも高度の訓練が必要ですが、聴く方にもそれなりの習熟と忍耐が求められます。1曲の演奏は短かいもので10分、長くなると20分を超えます。一方で、他には類例のない魅力にはまってしまうと、この演奏時間が短かく感じられます。

 今回はこういう音楽の存在を知っていただきたく、あえてかけてみました。


10. Lon-dubh (Blackbird) / Julie Fowlis // Cuilidh
Cuilidh
Julie Fowlis
Spit & Polish
2008-08-19


 スコティッシュ・ゲール語の響きの特質がよくわかるのは、こういう聴き慣れたうたをその言葉で聴くときでしょう。ジュリー・ファウリスはスコットランドの若手シンガーとして「旬」の一人です。こうしてうたわれると、ポールのうたがまるでスコットランドのトラディショナルに響きます。


 スコットランドのすぐ南、イングランドの最北部がノーサンバーランドです。一般的に「ケルト」には数えられない地域ですが、もともとはスコットランドとイングランドの間でとったりとられたりしてきたところでもあり、住民も自分たちの都合によってある時は北の一部となり、ある時は南側に立つことを選んできました。独自の音楽伝統をもちながら、従来なかなか紹介されるチャンスが無かったので、今回はなかば強引にケルトの一角として入れてみました。何よりもここにはノーサンブリアン・スモール・パイプという独自のバグパイプがあります。

Northumberland

11. Keelman Ower Land/Farewell to Rothbury/Cat in Coldstream / The Kathryn Tickell Band // Instrumental
Instrumental
Kathryn Tickell
Park Records
2008-05-20


 そのノーサンブリアン・パイプの第一人者がキャスリン・ティッケルです。このパイプはなぜか女性の名手がめだち、キャスリンの他にも Pauline Cato もいます。圧倒的男性社会のイルン・パイプやハイランド・パイプの世界とは対照的であります。

 キャスリンはまだ10代だった1970年代はじめから第一線で活躍しており、録音も数多く出しています。フィドラーとしても第一級です。アイルランドのシャロン・シャノンにも比べられる存在ですが、音楽家としてのキャリアではシャロンよりずっと先輩ではあります。

 スタジオで hatao さんが紹介していたように、ノーサンブリアン・パイプはチャンターの末端が閉じられています。そのため、ひじょうに小回りの効いた演奏ができます。また、ホーンパイプの演奏では他のどんな楽器よりも跳ねる感じをよく出すことができます。スモール・パイプの名のとおり小型なので立って演奏することもできます。

 なお、鞴を使うバグパイプとしてはアイルランドのイルン・パイプ、ノーサンブリアン・スモール・パイプ、そしてスコットランドの、ハイランド・パイプより小型のロゥランド・パイプがあります。


12. 〈Space Cowboys〉
Baltic Crossing
《Baltic Crossing》

Kristian Bugge: violin
Antti Larvela: double bass
Esko Jarvela: violin
Andy May: Northumbrian small pipes
Ian Stephenson: guitar, melodeon

 ノーサンブリアン・スモール・パイプの若手の名手が Andy May。このバンドはメイが参加しているバンドで、デンマーク、フィンランドとブリテンのハイブリッド。ベースはデンマーク。冒頭でパイプの面白い使い方が聴けます。スコットランドのサルサ・ケルティカもそうですが、ノーサンバーランドの人たちも域外の音楽との交流をためらいません。一般にケルトのミュージシャンたちは、他の音楽伝統との交流に積極的です。もともと伝統音楽そのものが閉じられたものではなく、商業音楽も含めた他の音楽伝統を積極的に取入れるものです。「純粋な伝統音楽」というものが仮にあるとすれば、それはすべてミクスチャーであります。そうでなければ、アイルランドの「伝統音楽」で使われている楽器のほとんどは存在しません。フィドルも蛇腹もパイプもフルートもすべて外から持ち込まれたものです。ジグもリールもポルカも同じです。


 ノーサンバーランドの次はウェールズです。ゲール語の中でもアイルランドやスコットランドとは系統の異なるキムリア語が話されており、土着言語が元気なことではヨーロッパでも1、2を争います。英語のような支配言語の普及にともない、アイルランド語のような土着言語が衰頽し、ネイティヴ話者人口の減少が続いていたのがどこでも共通する現象ですが、ウェールズだけはキムリア語の復興に成功し、英語とのバイリンガル社会になっています。1990年代以降、他の地域でも土着言語が復興に向かいますが、ウェールズでもその復興はさらに進み、従来英語が優勢であった南部のカーディフ周辺でもキムリア語を日常語とする人が増えているそうです。

 ここは1970年代後半、Ar Log を先頭にモダンな伝統音楽が立ち上がり、1990年代の第2波を経て、現在3度目の波が来ています。アル・ログたちによるウェールズ音楽の展開はアイルランドやスコットランドの盛り上がりをお手本にしたものでした。とはいえ、その独自の音楽は当時まことに新鮮で、アル・ログのファーストを聴いたときの衝撃は忘れられません。

Wales
13. Dole Teifi (Teifi Meadows; Y Bobol Dwyllodrus) / Fernhill // Whilia
Whilia
Fernhill
Beautiful Jo
2000-05-22


 シンガーのジュリー・マーフィーを中心とするファーンヒルは第2波を代表するバンドで、かつて来日もしました。日本語ネイティヴにとってアイルランド語をはじめとするケルト諸語の発音は難しいですが、キムリア語の発音はことに難しく、目の前でゆっくり発音されても聞き取ることさえほとんどできません。実はジュリー・マーフィはイングランドの生まれで、ウェールズ人と結婚し、ウェールズに移住してからキムリア語を身につけていますが、キムリア語シンガーの筆頭です。

14. 〈Y Crefftwr (The Craftsman); Llawenydd pob Llu (Everyone's Delight); Dic y Cymro (Dick the Welshman)〉
Crasdant
《NOS SADWRM BACH (Not Yet Saturday)》

Robin Huw Bowen: harp
Andy McLauchlin: flute, pibgyrn
Stephen Rees: fiddle
Huw Williams: guitar

Crasdant Not Yet Saturday
Crasdant Not Yet Saturday
Traditions Alive Llc
2008-01-01


 クラスダントも第2波に属するバンドで、ここでの目玉はこれも hatao さんがスタジオに持ち込まれたピブホーン、角笛です。水牛の角でできたリード楽器で、スペインのアルボカの同類です。このバンドにはまたハーパーもいて、ウェールズの伝統楽器がそろっています。ファーンヒルはその意味では非ウェールズ的ではあります。ハープはケルト音楽の象徴的楽器ですが、他の地域ではすべて一度その伝統が途絶えているのに対し、ウェールズだけは中世以来つながっています。トリプル・ハープという独自のタイプで Llio Rhydderch(この人の名前がまた読めない)はじめ、録音もたくさん出ています。


15. Pa Le? (Which Places?) / 9Bach // Tincian
Tincian
Nine Bach
Real World
2014-05-22


 そして現在の第3波の代表がこのバンド。fRoots誌の表紙を飾って一躍ヨーロッパ伝統音楽の第一線に躍り出ました。このセカンドも Real World からのリリース。イングランドのサム・リーにも通じる21世紀の伝統音楽のひとつの姿でしょう。ポップスでもロックでも、またジャズでもない、この形は、まさに現代音楽です。


 ウェールズはもっと紹介したかったんですが、今回は涙を飲んでこれだけ。そこから南に下るとブリテン島の南西端コーンウォールがあります。ここもコーンウォール語と呼ばれるゲール語の一派があります。ウェールズのキムリア語、コーンウォール語、そしてさらに海を渡ったブルターニュのブレトン語は、ゲール語のもう一つのグループ。源はウェールズで、ここから南へ植民していったと言われます。


Cornwall
16. Gweli Delyow (Bed Of Leaves)(Illian Y Thalhear; Pelea Era Why Moaz) / Anao Atao // Poll Lyfans (Frogpool)
 コーンウォールの音楽はやはりアイルランドなどからの刺激で1970年代後半に復興が始まっています。Bucca というバンドが1980年代に活動し、そのメンバーであった Neil Davey は後にスコットランドのグループや汎ケルト・バンドともいうべき Anam に参加し、後者のメンバーとして来日もしています。

 アナオ・アタオは1990年代、コーンウォールの音楽をより深く展開しました。このトラックはマン島の伝統曲と17世紀の歌集にあるコーンウォールのうたを合体したものです。


17. Come To Good / Mike O'Connor And friends // 無印良品 BGM 14
 そしてコーンウォール音楽の最新の形がこの無印良品のオムニバスです。コーンウォール音楽の録音としてわが国では最も手に入りやすいものですし、またとても良質の音楽でもあります。

 この無印良品の BGM シリーズにはアイルランドが二つ、スコットランド、コーンウォール、そしてブルターニュがあり、最新の 19 はガリシアです。いずれも現地の一線のミュージシャンを起用したオリジナル録音で、どれも質の高い演奏であり録音です。しかも安い。各地の音楽に最初に触れる入口としても格好ですが、深く聴きこんでからあらためて聴き直しても十分に鑑賞に耐えるすぐれものでもあります。


 さてここでようやくブリテン諸島を離れて海を渡ります。今回のもう一つの目玉ブルターニュです。ブルターニュはそもそも「ケルト」という捉え方を言い出したところでもあります。1960年代、アラン・スティーヴェルがブルターニュ音楽復興を始めたとき、これをケルト音楽の一部として、アイルランドやスコットランドとの連帯を提唱したのでした。スティーヴェルにとっては戦略の一環だったのでしょうが、それが今ではいわば「独り歩き」した形です。とはいえ、それはまったく根も葉もないものだったわけでもないでしょう。

 ブルターニュには様々な形の伝統音楽がありますが、ここでもまずはうたを聴いてください。


Breton
18. Toniou Hir Da Filie Dragomir / Erik Marchand & Le Taraf De Caransebes // Dor
 エリク・マルシャンはヤン・ファンシュ・ケメナーなどの後を追って出てきた人で、今ではもはや大御所のひとりといっていいと思います。外部との交流をいとわないケルトのなかでもブルターニュはことに異文化との交流に熱心ですが、マルシャンもその先頭に立って実に様々な人びととコラボレーションをしてきました。これはその中でも最も成功した例のひとつ。ルーマニアのタラフのひとつとの共演です。これはブルターニュの有名な伝統歌ですが、この録音にはルーマニアの伝統歌をマルシャンがブルターニュ流にうたいのけるトラックもあります。


19. La Casquette (The Cap) / Kate-Me // Kate-Me
Entrance
Kate-Me
Imports
2009-03-24


 ブルターニュを代表する楽器がボンバルドとビニュウです。ボンバルドはチャルメラと同類のリード楽器。ビニュウは小型のバグパイプで、数あるバグパイプの中でも最も音域の高いものです。一般にケルトは高音が好きですが、ブルターニュの人びとはその中で最も高音が高い人たちです。

 ボンバルドも hatao さんが持ってきてくださいましたが、サイズに比べておそろしく大きな、しかも鋭い音の出る楽器です。それをサックスのように使い、ファンキーなリズム・セクションに載せ、さらに伝統的なうたをかませる、というこのスタイルは実はかなり斬新です。ボンバルドは異常なほどに音がキレるので、こうして使うとえらくカッコよくなります。

 かけたのはファーストですが、上記のリンクはセカンド・アルバムです。これも良いです。


20. Breakin' Brec'h / Kevrenn Alre // La.ri.don.ge!
21. Dans/Tro Fanch Mitt (plinn) / Kevrenn Alre // La.ri.don.ge!
La.Ri.Don.Ge !
Kevrenn Alre
Coop Breizh
2007-04-10


 そのボンバルドを、音域の異なるものを十数本ならべ、ハイランド・パイプも十人ほど加え、これにサイド・ドラムと大太鼓を組み合わせた、バンドというよりはオーケストラと呼ぶべき集団がバガドです。ブルターニュでは各自治体にそれぞれのバガドがあり、祭りの時など音楽を演奏しながら練り歩きます。年1回、全土のバガドが集まってのコンテストが開かれます。その音楽は伝統にのっとりながら、高度に洗練されてアレンジされたもので、これはその一例。こうしたバガドのCDを聴くのはちょっとスポーツをするのにも似ていて、聴きおえるといい汗かいたな、という感じになります。

 ブルターニュにはまだまだ面白く、すぐれた音楽がたくさんありますが、今回はここまで。次は大陸を伝ってスペインに行きましょう。スペインのケルトというとガリシアと言われますが、そのお隣りのアストゥリアスの音楽もケルト的色彩の濃いものです。

Asturias
22. Cabraliega/Romance De Cangas/Canteros De Cuadonga/A La Mar Fui Por Naranxes/El Garrotin / Llan De Cubel // Llan De Cubel IV
 そのアストゥリアスの音楽に開眼させてくれたのがリャン・デ・クベル。この4作めがスコットランドのレーベルからリリースされたことでスペインというよりアストゥリアス地元の外に初めて大々的に知られることになりました。アストゥリアスの音楽はとにかくまず明るい、心浮き立つ雰囲気が楽しい。このトラックはアルバム冒頭のメドレーですが、2番目と3番目の曲を組合せたメロディに1番目の歌詞を載せてうたい、さらに4番目と5番目を後につなげています。

Galicia
23. Parolando Con Moxenas / Rodrigo Romani // As Arpas De Breogan
ブレオガーンの竪琴
ロドリーゴ・ロマニ
ビーンズ・レコード/アオラ・コーポレーション
2013-01-27


 一方のガリシアですが、カルロス・ヌニェスだけがひとり背負っているわけではありません。カルロスはもちろん天才ですし、かれの功績はまことに大きなものですが、ガリシア音楽ではむしろ新しい存在です。ガリシアの伝統音楽を世に知らしめたのは Milladoiro で、かれらはいわばガリシアのチーフテンズと言うべき存在です。そのミジャドイロの創設者でリーダーがハーパーのロドリーゴ・ロマニです。これはかれの最新のソロから、ハープをフィーチュアしたトラック。無印良品の BGM19 ガリシアはロマニが中心になっています。

 はじめは長くてたっぷりあると思っていた時間もだいぶ少なくなってきて先を急がねばなりません。一気に大西洋を新大陸に渡ります。

Canada
24. 〈Les Metiers; Jalbert Brandy〉
Le Vent Du Nord
《LA PART DU FEU》

Simon Beaudry: vocals, bouzouki
Nicolas Boulerice: vocals, hurdy gurdy
Rejean Brunet: accordeon
Olivier Demers: violin, foot percussion

La Part Du Feu
Le Vent Du Nord
Borealis Recording
2009-10-12


 カナダにはアイルランド、スコットランド、イングランドから音楽伝統が渡っていますが、ひとつ独自の展開をしているのがケベックのフレンチ・カナディアンです。シャロン・シャノンが有名にした〈Mouth of the Tobique〉がフレンチ・カナディアンの曲で、あれにも現われているように、明るく、しかも陰翳に富んだすばらしいメロディがたくさんあります。一方でケベックの音楽にはケルト系音楽の影響も濃いものがあります。

 このバンドはケベック音楽を担う最も新しいバンドの一つ。独特のフット・パーカッションが気分を高揚させてくれます。


25. Where's Howie? (Miss Stewart/Braes Of Tullymet/The Gillisdale Reel/We'll Aye Gang Back To Yon Town/Break Yer Bass Drone) / Natalie MacMaster // No Boundaries
No Boundaries
Natalie Macmaster
Rounder / Umgd
1997-03-11


 カナダのケルト音楽を代表するのがケープ・ブルトンのフィドル音楽であることは、かつてアシュレイ・マクアイザックが来日したりして、ご存知の方もおられるでしょう。そのケープ・ブルトン・フィドルの女王がナタリー・マクマスターです。近年はアメリカでの活動が多いようですが、ここではピアノを伴奏にしたオーセンティックな演奏です。ケープ・ブルトンではこのようにたくさんの曲をメドレーにするのがお好みです。


26. The Thistle (Airs for the Seasons, for Summer) / Concerto Caledonia / Colin's Kisses: The Music of James Oswald
Colin's Kisses
Lucy Russell
Linn
2009-06-30


 カナダ出身のフルーティスト Chris Norman を紹介しようと hatao さんが選ばれたトラック。この人は伝統音楽出身ながら古楽でも活動していて、これはその成果のひとつ。コンチェルト・カレドニアはスコットランドをベースとする古楽集団で、バーンズの曲を当時の姿で再現する試みなど、なかなか面白い活動をしています。ここで演奏しているのは17世紀スコットランドの作曲家の曲で、ノーマンのフルートは案外当時の演奏に近いんじゃないでしょうか。

U.S.A.
27. Don't Let Go/Martin Wynne's Reel / Wake the Dead // Blue Light Cheap Hotel
 アメリカはもちろんアイリッシュ・ミュージックの宝庫でもありますが、今回は趣向を変えて、アメリカでしか絶対にありえない形をご紹介します。ウェイク・ザ・デッドはサンフランシスコをベースとするバンドで、中心はカナダ出身のダニー・カーナハン。この人は1980年代 Chris Caswell というハーパーと Caswell Carnahan というデュオを組んで優れた録音をリリースしています。1990年代アメリカに移り、Robin Petrie というダルシマー奏者と組んで、ちょっとリチャード&リンダ・トンプソンを思わせる、やはり優れた録音を出しました。そしてこのバンドはグレイトフル・デッドの曲とケルト系ダンス・チューンと組み合わせるというコンセプトです。ジェリィ・ガルシアは半分アイリッシュですし、デッドの前の若い頃はブルーグラスをやってもいたので、こういう試みが出現するのもむしろ必然かもしれません。実際、このバンドの音楽は「コロンブスの卵」と言いたくなるくらい、二つの要素はよく合います。

 ここでのデッド側の曲は実はデッド本体ではなく、ジェリィ・ガルシア・バンドのレパートリィですが、これを選んだのは録音時間などを考慮にいれた結果です。


Korea
28. Kidhood (Ai Shijol) /

 もともとの計画ではオーストラリアにも寄港する予定で用意もしていましたが、時間が押して今回は涙を飲んでカット。太平洋を横断してアジアです。

 この韓国の男女のデュオは hatao さんがフルートやホィッスルに関する情報などをやりとりする中で知り合ったそうです。日本人がこれだけケルト音楽に親しむのだから、アジアの他の地域でもいずれケルト音楽を自分たちの音楽として演奏する人たちが出てくるはずと思っていましたから、この音楽には喜びました。台湾にも hatao さんの生徒さんがいるそうで、放送収録の直前にもかれは台湾にツアーに行かれています。これからいろいろ出てくるでしょうし、大陸からも当然出現するでしょう。ケルトの音楽がどこまで広がるか、興味のひかれるところです。

 ファーストはインスト中心の自主制作でしたが、このセカンドは自作のうたを中心にして、韓国ソニーからのリリース。こういう形の日本語のうたも聴きたいものです。

Japan
29. A Punch in the Dark/Barry's Trip to Paris / hatao & nami // Silver Line
SILVER LINE
hatao & nami
h & n
2014-06-08


 さて、今回の旅も日本にまでもどってきました。まずはゲストの hatao さんの最新の録音から1曲。大阪のシャナヒーのリーダー nami さんのピアノとのデュエットです。


30. 丘の上にて〜ダニー・ボーイ / 奈加靖子// Sign
sign
奈加靖子
cherish garden
2012-10-14


 しめくくりは Bard への日本語からの回答と言えそうな奈加靖子さんのうたです。この歌詞は奈加さんのオリジナルですが、とりわけ低くした声域とあいまって、とかく感傷に流れがちなこの曲を、「大人の鑑賞」に耐えるもう一つの次元にあげていると思います。


 ということで、ケルト音楽世界の一端を駆け足でめぐってみました。ほんとうはそれぞれの地域でサマースペシャルが組めるわけです。アイルランドだけがケルトであるわけでもありません。もちろんこれで終わりでもなく、むしろどこでも音楽はますます元気です。録音、録画をはじめとしたリソースもたくさんあります。ケルトの広がりを多少とも感じ、1曲でも心の琴線に響く音楽があれば幸いです。(ゆ)

が、NHK FM のブログにアップされました。

 hatao さんが持ってきてくれたノーサンブリアン・スモール・パイプやウェールズのピグホーン(角笛ですね、hatao さんが手に持っているやつ)の写真がいい感じです。

http://www.nhk.or.jp/fm-blog/200/194784.html

http://www2.nhk.or.jp/navi/detail/index.cgi?id=09_0157

 ご参考までに。放送は明後日の土曜日朝です。(ゆ)

 ピーター・バラカンさんに誘われて、ラジオに出ます。NHK FM の毎週土曜日朝のバラカンさんの番組「ウィークエンド・サンシャイン」の「サマースペシャル2014」です。来週08/16(土)の放送です。始まる時間はいつもと同じ。終わるのが遅くなります。普段の倍以上の3時間40分という枠で、お題は「ケルト音楽」。先日、収録をしてきました。

 これだけ時間があるならいっぱいかけられるぞ、と張り切り、うんと大風呂敷を拡げましょうと提案したら、二つ返事でOK。そこでアイルランドから始めて日本までケルト音楽世界旅を企画しました。

 でもやはり時間が足りなくて、当初考えたものの半分に削り、さらに収録直前の打合せであれこれ削り、やっていくうちにまた足りなくなって、もう一度削り。

 とはいえ、ふだんはまずかけれらないようなものもたくさん入れることができたので、まずまず楽しめるのではないかと思います。

 もう一つ、ぼくだけではこんな長時間はもたないので、フルートの hatao さんに助っ人をお願いしました。hatao さんはブルターニュ音楽に詳しいし、ウェールズやコーンウォールのミュージシャンたちにも会いにでかけたりしておられるし、さらにはアジアのケルト音楽シーンにも直接関係しておられらます。楽器にももちろん強い。当日もウェールズの角笛であるピグホーンやブルターニュのボンバルド、あるいはノーサンブリアン・スモール・パイプ、スコティッシュ・ロウランド・パイプなどをスタジオに持ち込んでくれました。どんな音がするか、少しだけ、吹いてもいただいてます。

 詳しい音源のリストなどは放送当日まで秘密です。放送されたら、あらためてリストと解説をここに書きます。番組のブログにも写真付きで出るはずです。

 聴いて面白かったら、NHK に「続篇」の希望を出してください。今回はもちろん個々の各地域ではほんのサワリしか触れられなかったので、それぞれにもっと聴きたい、という声が大きければ、普段の「ウィークエンド・サンシャイン」で企画できるかもしれもせんし。

 来年の「サマースペシャル」の話なんかもしましたが、今から明かすと鬼が笑うでしょうから、それはまた後日。(ゆ)

 InterFM の番組 The Selector に参加しまして、10/07(月)に(ゆ)のセレクションが放送されます。公式サイトはこちら

 お題は「もう一つのチーフテンズ」。今年はチーフテンズのレコード・デビュー50周年です。そのデビュー・アルバムから1980年までの、チーフテンズ前半生を録音でふりかえろうというもの。ゲストの影も形もない、すっぴんのかれらだけで勝負していた時期です。

 曲目リスト、コメントなどは上記の公式サイトに載ります。


 種々の事情で遅れに遅れていたお約束をやっと果たしてほっとしています。(ゆ)

     金沢大学の粕谷さんからお知らせをいただきました。
   
    今週の木曜日、真っ昼間ですが、金沢の「えふえむエヌワン」に出演されて、アラブ音楽のお話をされるそうです。インターネットでも聞けるそうですので、ぜひどうぞ。粕谷さんのことなので、アラブのなかでもアルジェリアが中心にはなるでしょう。
   
    アラブ音楽はアイリッシュ・ミュージックとも地下水脈でつながっている、といわれてます。むろん、ひと口にアラブ音楽といってもおそろしく多種多様ですから、こういうモノのわかった方の案内についてゆくと迷子にならずにすむかも。もっとも、迷子になったらなったで、それもまた楽しいですが。

--引用開始--
    金沢のコミュニティラジオ、えふえむエヌワン 76.3mHz
http://fmn1.jp/
で4月2日(木)午前10時15分から11時15分の「ジャンおぢのソウルダイナマイト」にゲストとして出演、アラブ音楽を聞きながらお話させていただくことになりました。

    DJは金沢随一のCDショップ、レコードジャングル店主の中村政利さんです。生放送です。

    上記のサイトの右上のところから入ると、インターネットで放送を聴くことができます。
--引用終了--


    先日亡くなった Seamus Creagh の追悼とか、こないだ聴きにいった O'Jizo のライヴの感想とか、書きたいものも多々あるし、バーンズの歌詞対訳もしたいのですが、例によって浮気の虫がうずいて、なかなか進みません。しかも、今回は巨人、ハリボテではない、モノホンの巨人が相手なので、いつ帰ってこられるか(爆)。気長におつきあいのほどを。
   
    ひとつだけ、O'Jizo はすばらしいです。旬、だと思います。結構頻繁にライヴをやってますから、どこかで一度は体験することをお薦めします。


    そうそう、臨時収入があったので、Yuin G2A も注文しちまいました。今週中には着くでしょう。そちらの報告もいずれ。(ゆ)

聴いて学ぶ アイルランド音楽 (CD付き)    今朝 NHK-FM で放送されたピーター・バラカンさんの「ウィークエンド・サンシャイン」のトラック・リストです。個々のミュージシャン、音源についてはいずれ詳しく書きます。今、ちょっととりこみ中なので。

    今回は『聴いて学ぶアイルランド音楽』刊行記念ということで、本の内容にちなんだ選曲をしています。ページ数は本の該当ページです。





01. 025pp.,  The Hills Of Coor/ Junior Crehan's - Hornpipes, Anders Trabjerg & Tak Tamura, FOR THE SAME REASON, 2004, Junior Crehan
    本書冒頭のセッションを主宰するジュニア・クリーハン作曲のホーンパイプ。1曲めは故郷クーアを記念したもの。演奏するのはデンマーク人アコーディオン奏者と日本人フィドラー。アイルランドで出会ったふたりの共演。

    アナス・トラビェアはてっきりオランダ人と思いこんでいたので、番組中でもそう言っていますが、あらためて調べてみたらデンマーク人でした。お詫びして訂正します。


02. 030pp., The Drunken Gauger (Jig), Ronan Browne & Peter O'Loughlin, THE SOUTH WEST WIND, 1988, Trad.
    なかなか教えてくれない師匠から、ジュニア・クリーハンが友人の協力で「盗んだ」ジグ。フィドルとパイプの演奏。


03. 032pp., The Girl That Broke My Heart, Martin Hayes & Dennis Cahill, WELCOME HERE AGAIN, 2007, Trad.
    ジュニア・クリーハンが奥さんをくどいた曲。同じくクレアのマーティン・ヘイズの演奏。


04. 043pp., George Brabazon/ Planxty Hewlett, Anne-Marie O'Farrell & Cormac De Barra, DOUBLE STRUNG, 2005, Turlough O'Carolan
    カロランのハープ・チューンの現代的演奏。2台のハープによる形は新しい。


05. 045pp.,  Silent, O Moyle, Anuna, ANUNA 2002, 2002, Thomas Moore & Trad.
    ここからはしばらくうたを聴きます。まずは19世紀に出版され、後世に大きな影響をあたえたトマス・ムーアの代表曲。ムーアの曲はいわゆる「アイリッシュ・テナー」によってうたわれることが多いのですが、ここでは珍しく女性ヴォーカルで。

    この曲の下になったのはリアの娘フィヌーラの物語。フィヌーラは継母のイーファによって白鳥に姿を変えられ、アイルランドの川や湖を何百年もさまよわねばならなかった。その呪いを解いたのはアイルランドにやってきたキリスト教のミサを告げる鐘の音だった。

    これはアイルランドでは有名な伝説ですが、トマス・ムーアはこれをもとにして、英国からの解放の鐘が鳴るまで苦しみつづけるアイルランドの姿を白鳥に投影しています。
モイルはアイルランド北部アントリム州の北端バリキャッスル周辺の地域名。

Joanna Fagan: lead vocals
Denise Kelly: harp


06. 061pp., The Foggy Dew, The Alias Acoustic Band, 1798 - 1998 IRISH SONGS OF REBELLION, RESISTANCE & RECONCILIATION, 1998, Trad.
    歴史ぬきにアイルランド音楽は聴けません。最終的に英国からの独立につながった1916年のイースター蜂起のうた。

Ron Kavana: vocals, guitar
Andy Martyn?: slide guitar
Miriam Kavana?: fiddle
Brian McNeill?: mandolin
Tomas Lynch: uillean pipes


07. 113pp.,  The Grey Cock, Chris Foster, JEWELS, 2004, Trad.
    ここから著者が参加したゴーリーン・シンガーズ・クラブのセッションでうたわれたうたを再体験してみます。これは最初の若者がうたう「ナイト・ヴィジティング・ソング(夜這いうた)」の代表曲。うたうのはイングランドのシンガーですが、ソースはバーミンガムに住んでいたアイルランド移民セシリア・コステロ。


08. 119pp.,  Tá Bó Agam Ar An tSliabh (Away upon the mountain blow), Micho Russell, CEOL AGUS FOINN SCOIL SAMHRAIDH WILLIE CLANCY, 1990, Trad.
    アイルランド語と英語の歌詞を交互にうたうマカロニックのうた。うたうのはウィリー・クランシィとともに、クレアの寒村ミルタウン・モルベイを伝統音楽のメッカにしたマイコ・ラッセル。ウィリー・クランシィ・サマー・スクールでのライヴ録音。アイルランド語でもこういうユーモラスなうたもあります。


09. 119pp.,  Siúil A Rún, Hajime Chitose 元ちとせ, 蛍星, 2008, Trad.
    これもマカロニックの〈シューラ・ルーン〉。元ちとせがチーフテンズと共演した録音。

    アイルランドの伝統曲ではかなりの有名曲で、たくさんの人が歌っています。ピーター・ポール&マリーのヒット曲「虹に消えた恋」の原曲であり、こちらのカヴァーもたくさんあり、比較的最近ではボニー・レイットも歌っています。

    十七世紀末、名誉革命でイングランドを追われたジェイムズ二世がプロテスタント側のウィリアム王の軍とアイルランドで戦ったことを題材に成立した歌といわれます。その時ジェイムズ側に参戦したアイルランドの兵士が戦い破れて大陸に渡らねばならなくなり、その兵士の恋人が兵士への想いを歌うのがテーマ。リフレイン部分はアイルランド語で、タイトルの意味は「道中ご無事で」。この部分だけがアイルランド語のまま残っているのは、詩の美しさのゆえと思われます。


10. 120pp., Done With Bonaparte, Niamh Parsons, HEART'S DESIRE, 2002, Mark Knopfler & Trad.
    マーク・ノップラーの手になるナポレオン・ソング。うたうのはアイルランド現役最高のシンガーのひとり。彼女がこのうたを知ったのはゴーリーン・シンガーズ・クラブのジェリー・オライリィがうたうのを聞いたことによります。オライリィは本文にも出てくるテリィ・モイランから詞を見せられて、シェイマス・エニスが演奏していた伝統曲〈Valentia Island〉に乗せました。ここではそちらの版。

Niamh Parsons: vocals
Mick Kinsella: harmonica
Graham Dunne: gutiar


11. 147pp.,  The Parting Glass, Joe Holmes & Len Graham, A LIVING THING, 1979,  Trad.
    レン・グレアムとうた仲間のジョー・ホームズのデュエット。ユニゾンではなく、コーラスとも言いがたい、ふしぎな共演。後半はリルティングになります。

    アイルランドではパブの閉店の音楽として有名ですが、ふたりがうたっているのは他では聞いたことのない版で、レン・グレアムのライナーによれば、40年ぶりにカナダから帰ってきたアントリム出身の友人から教わった由。とすれば、カナダ版かもしれません。


12. 158pp., Riverdance, Brendan Power, PLAYS THE MUSIC FROM RIVERDANCE, 1997, Bill Whelan
    アイルランド音楽の最先端の例として、『リバーダンス』の音楽から。演奏するのはオーストラリア生まれのハーモニカ奏者。

Brendan Power: harmonicas
Des Moore: guitar
Jim Higgins: bodhran, percussion
Ken Edge: sax
John Hogan: sax
Geoff Castle: keyboards
Chris Haigh: fiddle
George Petrov: gadulka


13. An Mhaighdean Mhara (Mermaid), Shanachie, TIME BLUE, 2008, Trad.
    近年、急速に力をつけてきている日本人ミュージシャンのなかから、実例をふたつ。こちらは大阪の女性ばかりのカルテット。曲はアイルランド語のうたで、アルタンやアヌーナがとりあげて有名。

河原のりこ: vocal
みどり: fiddle
Aki: percussions (djembe, conga, cuiro, claves maracas, tamboruien)
上原奈未: synthesizer, organ, harp


14. Abbey Reel Set, Modern Irish Project, MIP LIVE, 2008, Trad.
    こちらは東京の、フィドル、ギター、ドラムスのトリオ。3曲のリールのセット。

大渕愛子: fiddle
長尾晃司: guitar
田嶋友輔: drums


15. 025pp.,  An Buachaill Caol Dubh (The Dark Slender Boy), Willie Clancy, The Pipering Of Willie Clancy, Vol. 2, 1973, 2:21, 17 / 24, , Trad.
はじめにかけたジュニア・クリーハンの親友で、ウィリー・クランシィ・サマー・スクールのもととなったパイパー/ホイッスル奏者/シンガーによるパイプ演奏でお別れ。曲は有名なスロー・エアで、ルナサのキリアン・ヴァレリィもよく演奏しています。

聴いて学ぶ アイルランド音楽 (CD付き)    ピーター・バラカンさんがDJを努める NHK-FM 土曜朝の「ウィークエンド・サンシャイン」にゲストとして出演させていただきました。

    昨日収録があり、放送は今度の土曜日、03/07 の07:15から09:00までです。
   
    テーマは拙訳書『聴いて学ぶアイルランド音楽』のプロモーションで、たっぷりとアイリッシュ・ミュージックを聴いていただこう、というもの。とにかく1時間45分にわたって、アイリッシュ・ミュージックだけ。この本をダシにした選曲で、かなり濃いものもかけてます。ふだん、まずラジオでは聴けない類の曲も聴けるとおもいます。音といっしょに紹介できるのは気持ちがよかったです。
   
    なお、当日かけた曲目のリストなどは放送後、上記 NHK のサイトで公開されるはずですが、当ブログでもあらためて紹介します。うたものもかけたので、歌詞の内容も含めて紹介する予定。
   
    ご感想などもよろしく。(ゆ)
   
Very Special Thanks to Mr Peter Barakan!

 北海道限定のようですが、カンテレのあらひろこさんが今度の日曜日にラジオに出演されるそうです。タイトルも

STV・ラジオスペシャル「カンテレの世界へ」

だそうです。

 やはり北国生れの楽器は北国の人びとに好まれるということでしょうか。

 あらさんの公式サイト

 MySpace

 先日、ラジオ番組内で私のアルバム《MOON DROPS》をご紹介いただい
たのがおかげさまでご好評いただいたそうで、あらたに、ラジオスペシャルと
して取り上げていただくことになりました。

 よろしければ、ラジオのダイヤルを合わせてみて下さい。

 STV・ラジオスペシャル「カンテレの世界へ」
 パーソナリティ:宮永真幸アナウンサー
 ゲスト:あらひろこ
     小野寺淳子(旅行ジャーナリスト)
 放送:01/27(日)21:30〜22:00 STVラジオ


Thanks! > あらさん

 今年のクロップレディ・フェスティヴァルでは、フェアポート・コンヴェンションのオリジナル・ラインナップによる《LIEGE AND LIEF》全曲のライヴ演奏が行われたわけですが、その模様をBBCが録音し、現地時間今日10日夜7時からの Mike Harding Show で放送されるそうです。

 番組はネットでもリアルタイムで聞くことができますし、以後1週間、BBCのサイトの "Listen Again" のコーナーで聞くことができます。

 なお、ライヴで亡きサンディ・デニーの代役を務めたのはクリス・ホワイルでした。


 ピーター・バラカンさんのラジオ番組として人気があった "Barakan Beat" がネット・ラジオとして復活するそうです。

 新しく出来たソーシャル・ネットワーク・サイトの otonamazu.com の一部として出発するネット・ラジオ局。

 将来的にはオン・デマンド式で聞けるようにする計画ですが、当面は毎週日曜日の午後1時から1時間。おそらく平日の再放送もあり。喋りは英語。選曲はバラカンさんの自由だそうなので、これまで以上におもしろくなると期待できます。ただし、著作権の関係から、インディーズ以外の日本の音楽はまだ流せない由。ほんと、日本のレコード業界のケツの穴の狭さは、自分で自分の首を絞めてますな。

 リクエストもよろしくとのことです。

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