クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:映像

 春分の日に NHK-FM で放送した「今日は1日ケルト音楽三昧」で放送された楽曲解説の続き。
#zanmai

 プレイリストは番組の公式サイトに上がっています。


13. Hugh / Nightnoise
 ここで最初のゲスト、遊佐未森さんをお迎えしました。

 まずはリクエストでナイトノイズの曲。《The White Horse Sessions》(1996) 収録。

 トゥリーナのピアノが美しい曲で、タイトルはトゥリーナやミホールの父君のことと思われます。このお父さんは伝統歌の収集家でもあり、アイルランド語のネイティヴ・スピーカーでした。実家はアイルランド北西部のドニゴールで、兄妹は毎年夏休みなどにここに通います。ドニゴールはアイルランドの中でも音楽伝統の濃いところで、兄妹は伝統にどっぷり漬かって育ったのでした。

Triona Ni Dhomhnaill: piano
Micheal O Domhnaill: guitar
Brian Dunning: flute
John Cunningham: fiddle

The White Horse Sessions
Nightnoise
Windham Hill Records
1997-01-14




14. Island of Hope and Tears / 遊佐未森
 遊佐さんの楽曲へのリクエスト。遊佐さんがナイトノイズと共演、共作した最初のアルバム《水色》(1994) から。

 遊佐さんによれば、この時、ミニ・アルバムを作るからやりたいことを言うように言われて出した三つほどの企画のうちの一つがナイトノイズとの共演だったそうです。最も実現しそうになかったものがとんとん拍子に運んでしまった由。

 この歌はコーラスがたいへん美しいですが、ミホールとトゥリーナの神秘的とも言えるハーモニーは何の加工も加えておらず、二人が唄うだけでああいう風になったとのこと。

遊佐未森: vox, chorus, synthesizer
Nightnoise
Triona Ni Dhomhnaill: piano, chorus
Micheal O Domhnaill: guitar, chorus
Brian Dunning: flute, low whistle, uillean pipes
Johnny Cunningham: fiddle

水色
遊佐未森
ソニー・ミュージックダイレクト
2010-07-14



15. The Road to Nowhere / 遊佐未森
 リスナーからのリクエスト。1998年の《エコー》から。

 このアルバムはほとんどのトラックがスコットランドで、スコットランドのミュージシャンを動員して録音されています。カパーケリーのメンバーを中心としたトップ・ミュージシャンばかりで、遊佐さん自身、夢のようだったそうです。とりわけドラムス、パーカッションのジェイムズ・マッキントッシュがカッコよかった由。スコットランド最高のドラマーです。それにマイケル・マクゴールドリックはまだ20代の若者。

 この曲はトゥリーナ・ニ・ゴゥナルの作品でトゥリーナもピアノで参加しています。

遊佐未森: vox, chorus, keyboards
James Mackintosh: drums, percussion
Ewen Vernal: bass
John Goldie: guitars
Colm Malcolm: synthesizer, programming
Tommy Smith: soprano sax
Nigel Thomas: percussion
Michael McGoldrick: whistle, B-flat flute, uillean pipes
William Jackson: harp, flute, whistle
Stuart Morison: fiddle
Triona Ni Dhomhnaill: piano, chorus, whistle
Tony McManus: guitar, mandolin
Jimmy McMenemy: bouzouki

ECHO
遊佐未森
EMI Records Japan
2013-07-24



16. ロカ / 遊佐未森
 最後に遊佐さんご自身のセレクションで、昨年行われたデビュー30周年記念ツアーで、トゥリーナと共演したライヴ録音。今月中にDVDとCDでリリースされる予定だそうです。

 トゥリーナはもう70近いはずですが、ますます元気の由。

【Amazon.co.jp限定】PEACH LIFE(CD+DVD)(特典付/A4ファイル)
遊佐未森
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
2019-03-27



17. Nobody Knows / Paul Brady
 ここからしばらくリクエスト曲が続きます。

 まずはアイルランドのシンガー・ソング・ライターで、「最高のシンガー」(マーティン・ヘイズ)でもあるポール・ブレディのオリジナル。《Trick Or Treat》(1991) 収録。ライヴ盤《The Paul Brady Songbook》(2002) でも歌っています。

 ブレディは1960年代後半、ジョンストンズのメンバーとして世に出て、伝統音楽の世界でシンガー、ギタリストとして名を成した後、そこからは一歩離れた、現代のポップ・ソングのシンガー・ソング・ライターとしても大成します。我々から見ると、対照的な二つの面を持つと見えますが、本人の中では特に別々のことをやっているつもりはないらしい。

 この歌はポップスの方に属するもの。ただし、詞はアイルランド人らしく、単純な惚れた張ったではなく、いろいろな解釈が可能で、一筋縄ではすみません。

Paul Brady: Vocals, Guitars
Freddie Washington: Bass
Jeff Porcaro: Drums, Percussion
Elliot Randall: guitars
David Paitch: piano, Keyboards

Trick Or Treat
Paul Brady
Polygram Records
1993-08-12



18. Broken Levee / Wolfstone
 このバンドの〈Broken〉を、というリクエストだったので、この曲ではないかと推察しました。今のところ最新作《Terra Firma》(2007) 収録。

 スコットランドのケルティック・ロック・バンド。1989年結成。実はCDは持っていたものの、あまり真剣に聴いたことがなく、もっと早く、きちんと聴いておくべきだったと反省してます。ランリグがスコティッシュ・ゲール語を前面に出して、どちらかというと神秘的に想像をふくらませるのに対して、ウルフストーンは英語で、きりりと引き締まった音楽を作ると言えましょう。

Stevie Saint: pipes, whistle
Ross Hamilton: vocals, guitar, programming, percussion, bass
Stuart Eaglesham: acoustic guitar
Duncon Chisholm: fiddle
Colin Cunningham: bass
Alyn Cosker: drums

Terra Firma
Wolfstone
Once Bitten
2007-05-29



19. Dulaman / Celtic Woman
 《A New Journey》(2007) から。

 『リバーダンス』からのスピンアウトの一つで、あちらがダンスをフィーチュアしているのに対し、こちらは歌をメインにしたもの。わが国では2006年冬季オリンピックのフィギュアスケートで金メダルを獲得した荒川静香選手がエキジヴィションでファースト・アルバム収録の〈You Raise Me Up〉を使用して一気に人気が出ました。

 曲はクラナドが初期のアルバム (1976) のタイトルにしているドニゴールの歌で「デュラマン」は海藻の一種。ドニゴールは土地が瘠せていて、海岸に流れつく海藻を集めて肥料とし、場合によっては食糧にもすることが古くから行われていました。元々はわらべ唄。

Meav Ni Mhaolchatha: vocals
Andreja Malir: harp
David Downes: whistle, vocals

ニュー・ジャーニー~新しい旅立ち~
ケルティック・ウーマン
EMIミュージック・ジャパン
2007-02-14



20. Cardinal Knowledge / Bruno Coulais & KiLA
 元はキーラのアルバム《Gamblers' Ballet》(2007) 収録で、アニメ『ブレンダンとケルズの秘密 The Secret Of Kells』に使われました。

 アニメは『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』を作ったプロダクションの一つ前の作品。アイルランドの至宝『ケルズの書』制作の秘密をめぐる歴史ファンタジー。

 なお、サントラでは音楽が終った後、1分半ほどの空白の後、アイルランド語のナレーションが入りますが、番組では音楽のみで切り上げました。

Eoin Dillon: Uilleann PIpes & Whistles
Ronan O'Snodaigh: Bodhran & Percussion
Rossa O'Snodaigh: Guitar, Whistle, Percussion, Piano, Bouzouki, Trumpets, Clarinet, Mandolin etc.
Colm O Snodaigh: flute
Dee Armstrong: Fiddles, Violins, Glockenspiel, Free-Notes etc.
Lance Hogan: Guitar
Eoin O'Brien: Guitars

Karl Odlum: Loops, Drum Programming, Effets sonores
Mark Gavin: Synthetized bass
Dan Klezmer Page: Clarinette

The Secret Of Kells
Bruno Coulais & Kila
Kila Records
2012-04-03



21. Only Time / Enya
 《A Day Without Rain》(2000) より。エンヤの音楽はエンヤの曲とプロデューサー Nicky Ryan のエンジニアリング、それにニッキィ夫人の Roma Ryan の詞が一体となってできています。ニッキィ・ライアンは1970年代にモダン・アイリッシュ・ミュージックの初期の録音を担当して、数々の傑作、名盤を生み出した原動力の一人でもあります。アイルランドのアコースティックな音楽の録音には定評がありますが、ブライアン・マスターソン、アンドリュー・ボーランドと並んで、アイルランドを代表する録音エンジニアです。

A Day Without Rain
Enya
Imports
2000-11-17



22. Runaway / The Corrs
 1995年のデビュー・アルバム《Forgiven, Not Forgotten》から。

 兄弟姉妹が核となっているバンドは少なくありませんが、兄弟姉妹だけでバンドが組めてしまうのは、珍しいと言えるでしょう。あえて言えば、ケルト圏に特有の現象かもしれません。

 もっと大所帯で伝統音楽寄りの兄弟姉妹バンドとして、カナダの Leahy がいます。

Caroline Corr: Drums, Bodhran, Vocals
Jim Corr: Keyboards, Guitar, Vocals
Andrea Corr: Lead Vocals, Tin Whistle
Sharon Corr: Violin, Vocals

Forgiven Not Forgotten
Corrs
Atlantic / Wea
1996-01-09



23. Irish Heartbeat / Van Morrison & The Chieftains
 もちろんリリースは1988年です。

 リリースされたレコード・ジャケットを見てまず驚いたのが、ヴァン・モリソンがまるでチーフテンズのメンバーの一人であるように映っていたことでした。いわば、もっと「不均等」な関係を想像していたわけです。音楽もチーフテンズがバック・バンドというよりは、それまでチーフテンズが出してきたシンガーをゲストとしたアルバム、たとえばドロレス・ケーンを起用して彼女に録音デビューさせた《Bonapart's Retreat》(1976) と同様に、モリソンがチーフテンズのリード・シンガーの一人という形です。

 ヴァン・モリソンと対等のチーフテンズというのは、チーフテンズの何者かを知っていた我々ですら驚きましたから、ここで初めて彼らの音楽に接するリスナーにはいかほどの衝撃であったでしょうか。ピーター・バラカンさんもこれで初めてチーフテンズの存在とその背後にあるアイリッシュ・ミュージックを知ったと言われていました。

 アメリカのポピュラー音楽の成立にアイリッシュ・ミュージックが大きな役割を果たしていることは今や常識と言ってよいかと思いますが、これが出た当時はそんなことを言えばバカにされるのが関の山でした。モリソンの音楽の奥底にアイルランド伝統音楽の血脈が通じていることを示したこのアルバムは、そうしたシェーマの転換のきっかけにもなっていたと思います。

 モリソン自身、これによって改めて己れのルーツを確認し、それまでの低迷を脱して、《Hymns To The Silence》(1991) を頂点とする傑作群を生み出してゆきます。

 チーフテンズにとってはさらに大きく、これによって彼らは世界的認知を得て、アイルランド以外の世界にとってアイリッシュ・ミュージックのアイコンになってゆきます。

Van Morrison: Lead Vocals, Guitar, Drums
Paddy Moloney: Bagpipes, Tin Whistle
Kevin Conneff: Bodhran, vocals [A1 A3 B1]
Sean Keane: Fiddle
Martin Fay: Fiddle, Bones
Matt Molloy: Flute
Derek Bell: Harp, Dulcimer [Tiompan], Keyboards

June Boyce: chorus

Irish Heartbeat
Van Morrison & Chieftains
Uni/Polygram Pop/Jazz
1988-06-20



24. Over The Hills And Far Away / Gary Moore
 《Wild Frontier》(1987) より。

 ゲイリー・ムーアがアイルランド出身であることは承知していましたが、このアルバムにはチーフテンズのパディ・モローニ、ショーン・キーン、マーティン・フェイが参加していることを今回初めて知って、改めて興味が湧いているところです。とりわけ、マーティン・フェイが参加しているのは興味深い。フィドルが2本要るとモローニが判断したのでしょうが。

 それにしても、これくらい気合いが入っているジャケットは滅多に無いですね。

Gary Moore: Guitar, Vocals
Bob Daisley: Bass
Neil Carter: Keyboards, Vocals

WILD FRONTIER
GARY MOORE
VIRGI
2003-04-28



25. Doon Well / Maire Brennan
 1998年の《Perfect Time》から。

 モイア自身のハープをフィーチュアしたインストゥルメンタル。どちらかというとアルバムの中でも地味な曲で、こういう曲をリクエストされるのは相当に聴きこまれているのでしょう。

 ここでロウ・ホイッスルを吹いているデヴィッド・ダウンズは後に Celtic Woman をプロデュースします。

Maire Brennan: Keyboards, Harp
David Downes: low whistle

Perfect Time
Maire Brennan
Sony
1998-04-21




26. 二月の丘 / ZABADAK
 《遠い音楽》(1990) から。

 ザバダックを聴きだしたのは昨年からなので、まるで初心者ですが、個人的には上野洋子さんがいた頃が好き。あたしにはケルトよりもどちらかというとイングランド的感性が感じられます。

 上野さんは後に《SSS-Simply Sing Songs》(2003) という、すばらしい伝統歌集をリリースされてます。

吉良知彦
上野洋子
金子飛鳥
梯郁夫
保刈久明
安井敬
渡辺等

遠い音楽
ZABADAK
イーストウエスト・ジャパン
1990-10-25



27. Culloden’s Harvest / Deanta
 かつては「ディアンタ」と表記されていましたが、アイルランド語の発音により近く書けば「ジュアンタ」でしょうか。

 1990年代に現れたアイルランドの若手バンドの筆頭で、この曲は最後のアルバム《Whisper Of A Secret》(1997) から。ここではメンバーはギタリストを除いて全員女性になっていました。いささか唐突に解散してしまいましたが、リード・シンガーの Mary Dillon は最近復活しています。

 なお Culloden はスコットランドの地名で、1746年4月にここで行われた戦いで有名です。1745年に始まったスコットランド・ハイランドの氏族たちによるイングランドに対する最後の大叛乱の最後の戦いで、これによって伝統的なスコットランドの社会は敗北します。このいわゆるボニー・プリンス・チャーリィの叛乱からはたくさんの歌や曲が生まれ、伝えられています。


Mary Dillon: Vocals
Kate O'Brien: Fiddle
Deirdre Havlin: Flute, Whistle
Eoghan O'Brien: Harp, Guitar
Rosie Mulholland: Keyboards, Fiddle

DEANTA
DEANTA
WHISPER OF A SECRET
2017-06-16


28. Johnny, I Hardly Knew Ye!(ジョニーは戦場に行った) /
 楽曲は有名なもの(ここでもあたしが何やらあらぬことを口走ったような気がします)ですが、うたい手はクラシックの訓練を受けていて、こういう人がこういう歌をうたうというのには、意表を突かれました。

 とはいえ、アイリッシュ・テナーと呼ばれる一群のシンガーたちの存在もあるわけで、ケルト圏の伝統曲のクラシック的解釈は、おそらくかなり広まってもいるのでしょう。メルマガの『クラン・コラ』でも「オーケストラで聞くアイリッシュ・ミュージック」の連載があります。

 個人的にはこの曲は歌としてよりも、スタンリー・キュブリックの映画『博士の異常な愛情』でライト・モチーフ的に使われていたのが印象に残っています。

庭の千草〜アイリッシュ・ハープ
ミッチェル(エミリー)
BMGビクター
1993-04-21



29. Molly Malone / Sinead O’connor
 楽曲だけでアーティストの指定が無かったので、このヴァージョンを選びました。《Sean-Nos Nua》(2002) 収録。

 このアルバムはシネイドが伝統歌ばかりを唄って新生面を開いたもので、ドーナル・ラニィのプロデュースのもと、バックはアイリッシュ・ミュージックのトップ・プレーヤーが集まっています。

 曲はダブリンの貧しい魚売りの少女の薄幸を唄って、イングランドでも広く唄われました。わらべ歌の一種でもあります。

Sinead O'Connor: vocals
Donal Lunny: acoustic guitar, bouzouki, keyboard, bodhran, bass guitar
Steve Wickham: fiddle, mandolin, banjo
Sharon Shannon: accordion
Abdullah Chhadeh: quanun
Nick Coplowe: Hammond organ
Cora Venus Lunny: violin
Skip McDonald: electric guitar
Carlton "Bubblers" Ogilvie: drums, bass guitar, piano
Bernard O'Neill: bass guitar
Professor Stretch: drums, programming

Sean-Nos Nua
シニード・オコナー
BEAT RECORDS
2002-10-16



30. Caoineadh Johnny Sheain Jeaic> Lorient Mornings> Illean Aigh / Duncan Chisholm
 このリクエストは嬉しかったです。スコットランドにフィドルの名手の多い中で、個人的に今一番好きな人なので。

 ダンカン・チザムは上に出てきた Wolfstone のフィドラー。バンドでは結構ハードなサウンドですが、ソロでは贅肉を削ぎ落した、ストイックな演奏で、スコットランド音楽の奥深さを体験させてくれます。こういう、一種、崇高と呼びたくなるような音楽はスコットランドならでは。

 アルバムは《Canaich》(2010) で、2008年の《Farrar》、2012年の《Affric》とともに三部作を成します。

Duncan Chisholm: fiddle
Phil Cunningham: piano
Patsy Reid: cello

Canaich
Duncan Chisholm
Copperfish
2010-06-21



31. MELKABA(オリジナル・サウンドトラック「ゼノギアス アレンジヴァージョン クリイド」から)
 ここから光田康典さんをゲストにお迎えしました。まずはその光田さんの楽曲へのリクエスト。

 この曲ではアイリッシュ・ベースのメロディに、フィンランドのヴァルティナ流のコーラスが乗っていますが、それが見事に融合して独自の世界を作っています。

 この前年の植松伸夫さんの《Celtic Moon》もそうですが、こんな豪華なメンバーは今では到底集められないでしょう。

光田康典: piano, keyboards, programming, voices, hand clap
上野洋子: vocals
Davy Spillane: uillean pipes, low whistle
Maria Kalaniemi: accordion
Maire Breatnach: fiddle
Laoise Kelly: Irish harp
HATA: guitars
渡辺等: bass
藤井珠緒: congas, bongos, glockenspiel, clasher, China cymbal, Paste 5cup cymbal, tree bell, Angel Heart, India bells, darbuka, flexatone, wind chime, nail chime, cha-cha, finger cymbals, Sleigh bells, caxixi
KALTA: drums, tambourine, programming, voices, hand clap
本間 “Techie” 哲子: vocals
素川欣也: 尺八, 篠笛
Laurie Kaszas: tin whistle
吉良知彦: bouzouki, guitar
Eimer Quinn: vocals
小峰公子: vocals
山中ちこ: chorus, hand clap
工藤ともり: chorus, hand clap
Anne-Marie O’Farrell: celtic harp

ゼノギアス アレンジヴァージョン クリイド
光田康典&ミレニアル・フェア
スクウェア・エニックス
2005-06-29



32. Shadow of the Lowlands(オリジナル・サウンドトラック「ゼノブレイド2」から)
 こちらはぐんと新しいところで、アイルランドのユニークなコーラス・グループ Anuna によるアカペラ・コーラス。

 YouTube にも上がっているPVは、アヌーナのリーダーであるマイケル・マッグリンが、自ら作りたいと言い出したそうで、光田さんの楽曲にそれだけ惚れこんだのでもありましょう。

Anuna: chorus

33. LAHAN(オリジナル・サウンドトラック「ゼノギアス アレンジヴァージョン クリイド」から)
 《クリイド》からもう1曲。これもリクエスト。


34. Welcome To Our Town!(オリジナル・サウンドトラック「ファイナルファンタジー4 ケルティック・ムーン」から)
 光田さんの《クリイド》と並ぶゲーム音楽のイメージ・アルバムの傑作。粒選りのメンバーですが、中の写真を見ると、みんな若い! とりわけ、まだデビュー・アルバムを出したばかりくらいのシャロン・シャノン。植松伸夫さんもあらためてお話を伺いたい方であります。音楽のプロデュースを務めたモイア・ブラナックはこの録音の後、『リバーダンス』のバンド・マスターになります。

Maire Bhreatnach: fiddle, viola, tin whistle, keyboards, vocals
Cormac Breatnach: flute
Ronan Brown: uillean pipes, tin whistle
Noreen O'Donoghue: harp
Mark Kelly: guitar
Sharon Shannon: accordion
Niall O'Callanan: bouzouki
Tommy Hayes: percussions

ファイナルファンタジーIV ケルティック・ムーン
ゲーム・ミュージック
NTT出版
2004-10-01



35. 麦の唄 / 中島みゆき
 映像に使われたケルト音楽ということで、朝ドラ『マッサン』のテーマ曲。

 個人的には中島みゆきの声は実に日本的だなあと再確認しました。

連続テレビ小説「マッサン」オリジナル・サウンドトラック
富貴 晴美
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
2014-12-10



36. マッサン-メインテーマ-(オリジナル・サウンドトラック「マッサン」から)
 こちらは富貴晴美氏によるメイン・テーマ。


37. Donogh And Mike’s / Lunasa
 『マッサン』の楽曲を手がけられた富貴氏からの録音メッセージが流されました。実に熱い内容で、富貴氏ももっともっとお話を伺いたいところです。その富貴氏からのリクエスト。アルバム《The Merry Sisters Of Fate》(2001) 収録。このトラックで演奏されているのは〈1st August> Windbroke〉。前者はメンバーの Donogh Hennessy の曲、後者はルナサ初期のメンバーで現在はカパーケリーの Michael McGoldrick のオリジナル。それでこういうトラック名がつけられています。

Donogh Hennessy: guitar
Cillian Vallely: Bagpipes
Trevor Hutchinson: bass
Kevin Crawford: Flute
Sean Smyth: fiddle


38. チェイサー(オリジナル・サウンドトラック「マッサン」から)
 もう1曲、『マッサン』から。リスナーからのリクエスト。

野口明生: tin whistle, Irish flute
中藤有花 (tricolor): fiddle
長尾晃司 (tricolor): guitar
中村大史 (tricolor): bouzouki, accordion
菅谷亮一: percussions

 余談ですが、このサントラの〈Ellie's Ambition〉は tricolor の3人によるインストゥルメンタルで、短かいメロディを、はじめブズーキ、次にフィドルで繰り返し、さらにそこにフィドルが装飾音を入れてゆきます。この演奏を聞くと、ケルト系のダンス・チューンの装飾音の入れ方、またその役割などが手に取るようにわかります。


39. Chetvorno Horo / Andy Irvine & Davy Spillane
 光田さんコーナーのラストは光田さんのリクエストで、《クリイド》でも大活躍のパイパー、デイヴィ・スピラーンの録音。光田さんがスピラーンにでくわして「何だ、これは?」と衝撃を受けたもの。

 アルバムは《East Wind》(1992)。モダン・アイリッシュ・ミュージックの開拓者の一人、アンディ・アーヴァインがデイヴィ・スピラーンとともに、かれのルーツの一つである東欧、ブルガリアやハンガリーの音楽を演奏したものです。アイリッシュの精鋭が集まっていて、その一人、鍵盤のビル・ウィーランはここでの体験を下にして、後に『リバーダンス』の東欧シークエンスの曲を作ります。このアルバムに参加したのは、私の誇りだ、と本人が言っていました。

Andy Irvine: bouzouki, hurdy-gurdy
Davy Spillane: uillean pipes, low whistle
Nikola Parov: gudulka, kaval, gaida, bouzouki
Bill Whelan: keyboards, piano
Anthony Drennan: guitar Tony Molloy: bass
Paul Moran: percussion Noel Eccles: percussion
Mairtin O'Connor: accordion
Carl Geraghty: sax
John Sheahan: fiddle
Kenneth Edge: sax
Micheal O'Suilleabhain: piano

Andy Irvine / Davy Spillane
Treasure Records
2003-10-18


 以下、続きます。(ゆ)

終日建設作業をした後の疲れた筋肉、岩だらけの平原の向こうから低く斜めにさしこんでくる錆色の太陽の光には、どこかひどく滑らかで優美なところがあって、何の前触れもなく、自分は幸福だと感じられたのだ。ちょうどその瞬間、アルカディイがフォボスから呼んできたので、上機嫌で答えた。
 「ちょうど一九四七年のルイ・アームストロングのソロみたいな気分なんだ」
 「どうして一九四七年なんだい」向こうが訊ねる。
 「つまりね、あの年彼は一番幸せそうな音を出してたんだ。一生のうち大体はあの人の音には鋭いエッジが立ってて、ほんとにすばらしいんだけど、でも一九四七年にはもっとすばらしくて、肩の力の抜けた流れるような喜びがあるからなんだよ。あとにも先にも絶対に聞けない音だ」
 「やつにとっちゃいい年だったんだな」
 「そのとおりだよ。とんでもない年だったんだから。二十年もひっどいビッグ・バンドで過ごしてだよ、ホット・ファイヴのような小さなグループにもどったんだ。それって若い頃に自分がリーダーだったバンドだよ。そしたらどうだい、懐かしい曲、懐かしい顔まで何人もいる——しかも何もかも最初のときよりも良くなってるんだよ。録音技術もギャラもお客たちもバンドも自分の能力も・・・若さの泉みたいな感じだったに違いないんだ」
——キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』上・207頁

 昨日見聞したのは残念ながら1947年のものではない。1955年、1964年、1967年の映像だ。だけど、これらの映像を見、音を聴いて、あらためてこの一節が思い出されたのは、そこに現れるサッチモの姿と音楽があまりにすばらしかったからだ。

 もちろんサッチモの名前と顔は知っている。音楽だって聞いたことはある。これはたぶんあたしだけのことではなく、サッチモの名前と顔の知名度に匹敵するのはビートルズぐらいだろう。サッチモはジャズを大きく踏み越えているのだ。世の「ジャズおやじ」どもがサッチモを気に入らないのは、たぶん、そのためだ。後生大事に抱えこんでいる「ジャズ」など眼中にないようなフリをしているとその眼には映るのだろう。

 それでも昨日は来る客はたぶん爺どもばかりではないかと思ってはいた。その予測は嬉しくも裏切られて、ほとんどがごく若い人びと、女性もたくさんいる。より自在に、自分の感性に忠実に、サッチモの音楽を楽しんでいる。

 いずれ劣らぬ一騎当千のバンド・メンバーに支えられて、サッチモはとにかく明るい。それはあくまでも明るくあろうとする意志と、どこにあっても、どんなところでも、明るくならざるをえない性格とが融合したもののようにみえる。

 一連の映像にライトモチーフがあるとすればそれは〈What A Wonderful World〉だ。1967年、ヴェトナムへ送られる直前の兵士たちにこの歌を唄いかけるサッチモから始まり、ラストはオーストラリアの芸人がこの歌をバックに見せる、両手を使ったみごとというしかない影絵のパフォーマンスまで、この歌はサッチモの遺したものを象徴しているようにみえる。生前この歌はほとんどヒットしなかったそうだ。レコード会社の社長が、この歌のプロデューサーもサッチモの声も曲も大嫌いで、まともなプロモーションをしなかったらしい。ヒットしたのは1985年の映画『グッドモーニング、ヴェトナム』で使われてからという。

 この歌はこの世はすばらしいと朗々と唄いあげる曲ではない。隣に座ったサッチモが、こちらの肩に手をかけて、一語一語打ち込むように、語りかけてくる。今がそういう世界なんだというよりは、本来すばらしい世界なんだから、もう一度そういう世界に造ってゆこうぜという訴えだ。どんなに悲惨な世界でも、これをすばらしい世界にしてゆくんだという意志が、底抜けに明るく、ユーモアたっぷりで、何事にもめげない積極的な性格にまでなっている、その現れだ。

 バンド・メンバーたちの圧倒的な演奏とサッチモの唄が作り出す音楽が、ヨーロッパ各地の、アフリカはガーナの、あるいはニューヨークの聴衆を熱狂させるのは、まったく当然だと思えてくる。これで熱くならないやつは人間じゃねー、とわめきたくなってくる。聴衆だけではない、サッチモのバンドと共演する若きバーンスタインの指揮するニューヨーク・フィルの楽団員たちも、初めはどこか遠慮がちだったのが、サッチモのバンドとやりとりを始めると、がらりと音が変わる。共演できて光栄なのは我々の方ですというバーンスタインの言葉にはその通りだろうと納得する。

 昨日拝見したのは、主にアメリカのテレビ番組用に作られた映像で、フィルムで撮影していたので残っていたものだ。元は16ミリのフィルムで、今はデジタル化して、DVDに収めてある。メインは1955年にサッチモが音楽大使としてヨーロッパに派遣された際にCBSがスタッフを同行させて作り、1957年に放映した1時間強のドキュメンタリーだ。わが国でも『サッチモは世界を廻る』のタイトルで公開されたが、当時はニュース映画専門館で上映された由。

 これは楽しい。アルプスの上、というよりも、その間を飛ぶプロペラ旅客機の中で演奏するサッチモのバンドから始まり、空港での歓迎、ステージの演奏、観客の表情の変化、そして、小さなクラブでの、地元のバンドとの共演と追ってゆく。はじめは気難しい顔をしていた客が、どんどんノっていって、最後は大喝采する。音楽に踊らされる姿は、後にロックのコンサートやクラブで見られるのと同じだ。

 独立前夜のガーナへの「帰郷」では、ヨーロッパと同じく、地元の音楽で迎えられたのに、自分たちの音楽で返礼すれば、それまでジャズなど聞いたこともなかったはずの住民たちが踊りだす。

 いや聞いたこともなかったというのは誇張かもしれない。ガーナは英国の植民地だったから、英国経由あるいは英語圏ということで直接アメリカからレコードなどが入っていただろう。また、当時首相で後に大統領になるエンクルマはじめ、イギリスやアメリカに留学し、そこでジャズに触れていた人間もいたはずだ。しかし、生で、「ホンモノ」を聴くのは初めてという人間が圧倒的大多数ではあったはずだ。そしてその初めての体験がサッチモであったことは、おそらく、その中の少なからぬ人びとにとってラッキーであっただろう。後にアフリカン・ジャズを代表することになるヒュー・マセケラも、サッチモからトランペットを贈られている。

 サッチモのユーモアのセンスが最もよく出たのは1964年東ベルリンでの公演だ。一向に鳴りやまない喝采に対して、閉じたカーテンの間から、まずネクタイをはずして出てきて挨拶し、次には寝間着のガウン姿で出てきて挨拶する。

 これらの映像を蒐集、整理されて、字幕まで添えてあたしらが見られるようにしてくださったのは、外山喜雄氏ご夫妻だ。夫妻はサッチモに惚れこむあまり、1968年、当時最も安かったブラジルへの移民船に同乗してニューオーリンズに渡る。氏はトランペット、夫人はバンジョーをよくするから、現地で音楽演奏の仕事を見つけ、2年、滞在する。その後、日本ルイ・アームストロング協会を設立される。見習いたいとは思うが、あたしなどには到底できないなあ。

 サッチモという人は人間の器が大きかったのだろう。そしてその器の大きさは音楽だけに留まらなかったのだろう。だから、演奏だけ聞いても、おそらくよくわからない。こうして映像を見て、そのふるまい、仕種、そして何よりも、あの笑顔、がま口=サッチェル・マウスすなわちサッチモと言われた大きな口に真白い歯がまぶしく輝くあの笑う顔を見て、初めてその一端に触れることができるのだろう。

 そのサッチモの映像を見せてくださった外山ご夫妻、場所を設営された後藤マスターはじめ「いーぐる」関係者の皆様に、心より感謝する。(ゆ)


レッド・マーズ〈上〉 (創元SF文庫)
キム・スタンリー ロビンスン
東京創元社
1998-08-26



サッチモ・アット・シンフォニー・ホール+11
ルイ・アームストロング
ユニバーサル ミュージック
2017-09-20


 どういうイベントなのか、実はよくわからずに出かけた。shezoo さんから聴きにきてくれと頼まれたからなのだが、なんともすばらしいイベントで、最高のクリスマス・プレゼントだった。しかも、これはこれから2年かけて全33話をこの形でやるという。それぞれが楽しみだが、最後まで順調にいけば、まことにユニークな成果になるにちがいない。

 shezoo さんのスケジュール表によればこのイベントは
 
「Nishikawa Sachiko Solo Show 『星の煌めきと夜のやさしさと』 第1部  『絵のない絵本』」

というもので、西川祥子さんの映像のもと、西田夏奈子氏がテキストを朗読し、それに加藤里志さん (sax)、相川瞳さん (perc)、それに shezoo さんが音楽をつける。

 音楽は各エピソードごとにテーマを shezoo さんが作曲し、それに続いて3人が即興する。

 テキストはアンデルセンの『絵のない絵本』で、昨日はその序章と第一話、第二話の3つが演じられた。もちろん名前は知っていたが、古典の例にもれず、読んだことはなかった。聴いて驚いた。これは読もう。

 朗読とはいっても、西田氏は俳優が本業でもあり、むしろ演技というべきだろう。しかも、自身演奏者として、他の3人とともに即興する。テーマが提示された後は、音楽のどこで、どのように読みだしてもいい、ということになっている。この呼吸がすばらしかった。朗読も完全に音楽の一部となっている。うたではなく、あくまでも散文を読む演技であることが、かえって音楽を立体化し、固有の世界を作りだす。そして、描かれたシーンが眼前に活き活きと浮かんでくる。序章の月の顔、第一話の川面を流れてゆく火、第二話の怒れる父親。

 そこには正面のスクリーンに投影された西川氏の絵の力もあずかっていた。西川氏は shezoo さんのトリニテ最初の CD 《prayer》の曲から霊感を得た「クロとカゲ」というイラストと文章による映像作品を作ってもいる。モノクロなのだが、見る者がそれぞれに色を投影できる。そして、静止画なのに、動いているように見える。あるいは絵が物語を語る。

 会場の喫茶茶会記がまたこの世界形成に貢献している。まず場所が秘密めいている。四谷三丁目の交差点からほど近いのだが、やや奥まったところにあり、地図を見ながら行ったにもかかわらず路地の入口を通りすぎてしまい、だいぶ歩いてからこりゃ違うと、今度は慎重にあともどりしてようやく見つけた。会場を見つけられない人が何人かいて、スタートが遅らされた。必要な時だけそこに存在し、ふだんは絶対に見つけられない店のようでもある。

 中に入ると、靴はぬいでスリッパに履きかえる。入ってすぐのところはカウンターとテーブルが一つ。ここは喫茶やバーになっているらしい。正面の扉の向こうがホール、さらにその奥にもう一つ小部屋があり、ここはこの日は楽屋になっていた。表の部屋とホールにはヴィンテージものの大型のオーディオ装置がでんと置かれて、いい音で鳴っている。ホールはステージのようなものはなく、演者と客席の境は何もない。20人も入れば一杯で、昨日は満席。照明も少なく、白昼にはこの部屋も存在しない雰囲気だ。月が訪れては語る話を演ずる場所としては、これほどふさわしい場所もそうないだろう。

 1時間弱の演奏は緊張感に満ち、音楽と話が混然一体となった世界に吸いこまれた。

 加藤さんはソプラノとバリトンを持ち替える。shezoo さんのシニフィアン・シニフィエのゲストで見たのが最初だった。クールな姿勢から振幅の大きな、冴えた音楽をくりだす。

 パーカッションの相川さんは中村大史さんとトリオも組んでいる人だった。かなり多彩な楽器を駆使して、これまたシャープな演奏をする。第二話でのダラブッカがみごと。

 shezoo さんを加えた3人での演奏は今回初めての由だが、他の人も感嘆していたように、とてもそうは見えない。西田氏も含めて、相当に練りあげたように聴こえた。

 そしてこの形でこの会場で毎回3話ずつ、隔月で2017年いっぱい、ひょっとすると2018年までかかるかもしれないというスケジュールで全33話を演ずる計画。昨日はプロの映像作家によって動画も撮られていたので、あるいは完結の暁にはDVDのボックスセットも出るかもしれないが、それよりもやはりライヴで体験するのがまず第一の選択肢でしょう。なにしろ即興の部分は当然演奏者たち自身にもどうなるかわからないのだから。あたしはもう全部スケジュールに組みこみました。これの完結を見るまでは死ねないよ。(ゆ)

    現役最高のオールドタイム・バンドと編集部が信じるカロライナ・チョコレート・ドロップスの先日のワシントン、DCでのライヴが、会場の国立アメリカン・インディアン博物館のサイトにあがっています

    全体は約80分のストリーミングで、CCD は前半分。実に実にサイコーのライヴ。画面を見ながら、思わず拍手してしまいます。これだけまとまって映像が見られるのは、初めてでしょう。
   
    先日亡くなったマイク・シーガーの名前も出して、今ぼくらがここでこういう音楽をやっているのはかれのおかげだとドムが言っていましたが、かれらこそは21世紀のニュー・ロスト・シティ・ランブラーズと呼ばれる資格は十分。そして汲みあげてくる源泉のヴァラエティの豊富なことでは、先輩たちを凌ぎます。マイク・シーガーたちはやはり白人がメインだったのではないか、とCCDを聞いていると思われます。黒人の文化に流れこんでいた、あるいはかれらが日常的に接触していた文化は、白人たちのものより実は遥かに多様で、幅広かったのでしょう。
   
    それを強く感じたのはリアノンがフィドルを持つときで、その際彼女が弾いたりうたったりする曲はあきらかに東欧やケルト系のメロディです。例えば冒頭から20分経過ぐらいから始まる、ジャスティンが手拍子と足拍子、ドムともう一人のゲストがそれぞれ両手にボーンズを持っての曲。
   
    もうひとつはドムが小型のパンパイプとブルース・ハープで披露した小品。声をアクセントに使う曲。こちらはアフリカにまっすぐつながっているようです。
   
    舞台さばきも堂に入ったもので、アンコール前の曲でのドムの「ドブロ回し」やリアノンのダンスも見せます。
   
    それにしても、出産のせいかリアノンが急に貫禄たっぷりになっていたのは少々びっくり。もっともその分、ヴォーカルに力が増すとともに深みが出て、いよいようたうたいとして成熟してきました。このライヴははじめから最後までハイライトの連続ですが、リアノンのうたはその中でも聞き物です。


    ちなみに後半はカナダ在住のインディアンがメンバーである4人組ブルース・バンド。良質の音楽を聞かせてくれますが、インディアンの伝統はほとんど感じられません。(ゆ)

 Robbie O'Connel のブログ(2008.02.17 の項)によると、こういうタイトルのアイリッシュ・ミュージックをテーマにしたドキュメンタリー映画が来月アメリカの PBS で公開になるそうです。

 作ったのは Paul Wagner、主にドキュメンタリーで知られる人で、これまでにも Out of Ireland: Story of Irish Emigration (1995) という映画があります。

 今回は昨年4月に撮影された8時間におよぶ演奏を編集したものの由。参加したミュージシャンは、

Mick Moloney, Susan McKeown, John Doyle, Seamus Egan, Eileen Ivers, Karan Casey, Liz Carroll, Joanie Madden, Athena Tergis, Niall O'Leary, Darrah Carr, Tim Collins, Jerry O'Sullivan, Mike Raferty, Billy McComiskey, Brendan Dolan, Rhys Jones, Mac Benford and Jo McNamara、それにロビー・オコンネル自身。

 ロビーも映画そのものは見ていないが、コンサートは信じられないほどすばらしかったので、悪いはずはなかろうとのこと。サンプル映像が YouTube で見られます。リズ・キャロル、アイリーン・アイヴァース、Athena Tergis にジョン・ドイル。アシーナというフィドラーは初めてですが、なかなかの人ですね。

 03/02 にニューヨークの Irish Arts Center でプレミア。放映後、CD と DVD が出るそうです。

 個人的にはスーザン・マキュオンのライヴを見られるのが楽しみ。(ゆ)

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