クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:映画

麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション [DVD]    今度の日曜日、ケルティック・クリスマス、メイン・アクトの翌日ですが、アイルランド文化研究会があるそうです。今回のテーマは映画。これは面白そうだな。
   
    会場が大学構内で、休日のため、入場許可をとるために事前の申し込みが必要です。




--引用開始--
アイルランド文化研究会のご案内

12/13(日)14時〜17時頃
日本大学芸術学部江古田校舎 W−301(西棟)
(西武池袋線 江古田駅、都営地下鉄大江戸線 新江古田駅下車)
報告者:岩見寿子氏(成城大学)
テーマ

「アイルランドの映画的表象 〜アイルランド映画史概観」

*要事前連絡
    休日につき会場の入構制限がある都合上、研究会参加ご希望の方は、
下記までご連絡下さい。
taku (at) iii.u-tokyo.ac.jp (山本)
--12月10日までにご連絡頂けますと幸いです。--

■要旨
    アイルランドは,映画史においてユニークな立場を示してきた。
アイルランドで初めての常設映画館であるヴォルタ座を経営したの
は,後の文豪ジェイムズ・ジョイスである。何より特筆されるのは,
この国の文化や風土,そして夥しい移民の歴史が,英米の巨匠とい
われる監督たちに豊かな霊感を与え続けてきたことだろう。

    ハリウッドがアイルランドを舞台にした話題作を作り続けてきた
一方で,財政的な窮乏や,英米流のモダニズムを敵視してきた保守
的,宗教的風土のなかで,国産映画製作の土壌を育てることは容易
ではなかった。1980年代後半にニール・ジョーダンやジム・シェリ
ダンなどアイルランド出身監督の作品が世界の注目を集めたことに
よって,ようやく国産映画に目が向けられるようになった。

    さらに1990年代以降の経済的躍進はアイルランドの社会的・文化的
状況を一変させ、アイルランド映画も独自の存在感を発揮しつつある。
映画製作のボーダーレス化に伴い,現在は英語圏であること,英米
映画界との強い絆が逆に有利となり,プロダクション誘致を政府レ
ベルでとりくみ,EU各国との共同製作にも意欲的である。

    今回の発表では、アイルランド映画の草創期から現在までの流れ
を概観し、映画産業の「周縁」に位置するがゆえに見えてくるもの、
すなわちインターナショナルな映画製作における「ナショナル・シ
ネマ」の問題を考察してみたい。
--引用終了--


Thanx! > 山本さん@CCE

    アイルランド、英国では今年の春にBBCで放映されたそうですが、アメリカでは先週末に公開が始まったようで、ニューヨーク・タイムズの記事で知りました。教えてくれたのはニューヨークの Irish Arts Center の Twitter。この記事は目配りが広く、題材にも通じていて、良い記事です。日本国内公開はどうも無さそうなので、海外のDVDを待つしかないでしょうが、これは見たい。



    記事にある通り、聖金曜日合意から10年を経て、ようやくこういう映画が作られるようになった、それだけノーザン・アイルランドの社会に余裕が出てきた。カトリック、プロテスタント双方の共同体が、融合まではいかなくとも、共存を受けいれられるようになった、と推測します。
   
    その上で、次の一節には共感します。
   
「新しいアプローチを実現するには、イングランド人脚本家(Guy Hibbert)、ドイツ人監督(Oliver Hirschbiegel)、そしてカトリックを演じるプロテスタント俳優(James Nesbitt)とプロテスタントを演じるカトリック俳優(Liam Neeson)が必要だった。『トラブルズ』(1968年から1998年にわたるノーザン・アイルランドの「紛争」を、地元とアイルランド共和国ではこう呼ぶ)時代の狂気とその後遺症にあらわれるあやうい正気をみると、なぜか、この逆説的組合せこそが適切と思われてくる。1998年の聖金曜日合意以前には、ノーザン・アイルランドについてほんとうに公平な立場から、どちらの側にも立たない視点で映画を作ることはほとんど不可能だったのだ」

    『五分間の天国(仮)』の舞台は、新旧ふたつの時代のベルファスト。主人公はふたり。片方は1975年当時、17歳で Ulster Volunteer Force(UVF = アルスター義勇軍)という、プロテスタント過激派組織に所属していたニーソン演じるアリスタ・リトル Alistair Little(この名前はまさしくスコットランド系ですね)。もう一人は当時リトルに殺されたカトリック共和主義者の兄弟ジョー・グリフィン Joe Griffin。こちらを演じるのがネスビット。実在、存命中ながら「これまでも会ったことはないし、これからも会うことはないだろう」と監督が言う二人が、もし実際に顔を合わせたならどうなるか。映画はそれを描きます。
   
    上記のブログによれば、映画の前半は実話、後半はフィクションですが、虚構の部分も、もしこうだったらどうするか、何を言うか、といちいち本人に確認しながら脚本が作られた由。

    ニーソンは自分が演じる相手には会わないことにしましたが、ネスビットはジョー・グリフィンに会ってみた。というのも、「はじめ脚本を読んだとき、あまりにも極端な人物に思えたからだ。肉体的にも感情的にも、とてもこんな人間がいるとは信じられなかった」からでした。6時間、一緒に過ごしてみて納得しました。

「かれの人格は爆弾だったよ。おそろしく巨大な怒りと抑圧されたものを抱えていた。むちゃくちゃな人間のように聞こえるかもしれないが、その通りなんだ。見たり聞いたりしている分には最高だ。想い出を話している間中、しょっちゅう気分が変わる。それに訛がきつくて、ほとんど何を言っているのか、ぼくにもわからない。ただ、きちんとした教育は受けていないのに、話すことは明晰だし、それにひどく笑わせてくれるんだ」

    これも納得できる。政治経済軍事あらゆる面で圧倒的に不利な立場にありながら、プロテスタント勢力と英軍を向こうにまわして、互角といっていい戦いを30年にわたって続けたカトリック側組織 IRA を支えたのは、こうした人びとであったのでしょう。物語そのものもひどく興味をそそられますが、ネスビットが演じるこの人物像を見るだけでも、この映画は見たい。

    記事はもう一本のノーザン・アイルランド紛争を題材にした映画を紹介しています。Kari Skogland の “Fifty Dead Men Walking” です。こちらは IRA 内にあってその活動を長年英軍に通報していた Martin McGartland (演じるのは Jim Sturgess) の物語だそうです。
   
    ぼくは実は映画というメディアは好きではないのですが、この2本はなんとかして見てみたい。見たからといって、あの複雑きわまるノーザン・アイルランド紛争の実態が理解できるとは思いません。が、多少ともその実像に近づけるのではないかと期待するからです。

    さらに「トラブルズ」は、その後の民族紛争、旧ユーゴのムスリムとキリスト教徒にかかわる紛争や、東ティモールをめぐる紛争、旧ソ連領で進行中の紛争などの祖型という性格を備えるという見方もできます。ノーザン・アイルランドの紛争は時代こそ冷戦に重なりますが、東西陣営の代理戦争ではありません。とすれば、ノーザン・アイルランド紛争の理解は、現在進行形の紛争の性質の理解とそして解決をめざすためのヒントを提供する可能性もでてくるでしょう。(ゆ)

 1981年のノーザン・アイルランドでのIRAのハンガー・ストライキを描いた Steve McQueen 監督の映画 HUNGER がカナダのトロント映画祭で Discovery 賞を受賞したそうです。この映画はカンヌでも Camera d'Or を受賞しています。どちらも新人賞ですね。

 なお、この監督はもちろん有名な俳優とは別人。1969年ロンドン生まれの人で、この映画がデビュー作ということです。

 1981年のハンガー・ストライキは、当時IRAの関係者が多数収容されていたメイズ刑務所(ベルファストの郊外リスバーンにあった)で、刑法犯ではなく、政治犯としての処遇を求めてIRAのメンバーがおこなったもの。ボビー・サンズを筆頭に、10人のメンバーがストライキを完徹して餓死しました。

 英国政府はいわゆるノーザン・アイルランド紛争("The Troubles")で刑務所に収容したIRAをはじめとする準軍事組織のメンバーに、1976年、それまで認めていた政治犯としての待遇を拒否し、刑法犯として、他の犯罪者と同様に扱い始めました。この政治犯としての権利も、1972年にベルファスト出身の Billy McKeee という人物がハンガー・ストライキをおこなって、認められるようになったものでした。

 ハンガー・ストライキ自体は新しいものではなく、不当な扱いに対する異議申立の手段として、アイルランドでは古来から使われています。

 英国政府がそういう措置をとったのは、ノーザン・アイルランドでの紛争を、プロテスタントと対等の人権を求めるカトリックの「政治」闘争ではなく、「テロとの戦い」としてかたづけてしまいたかったからです。そうすれば「弾圧」と非難されても、「犯罪を撲滅」しようとしているだけだと言いぬけられますからね。

 くわしくはこちら

 この闘争にはクリスティ・ムーア始め、アイルランドのミュージシャンも多数共鳴、支援活動をおこなっています。ライヴがおこなわれ、アルバムも出ました。ボビー・サンズ自身、ミュージシャンであり、クリスティ・ムーアは名作《RIDE ON》で、サンズの曲を2曲とりあげてもいます。これはなかなかの佳曲です。

 国内でも公開されるかは微妙なところですが、いずれDVDは出るでしょうし、サントラもちょっと期待できます。


 ちなみに同じトロント映画祭では『トレインスポッティング』のダニー・ボイルの新作 SLUMDOG MILLIONAIR が People's Choice 賞を受賞したそうです。これはインドのムンバイ(旧称ボンベイ)のスラムに住む十代の少年が、テレビのゲーム・ショウで優勝して百万長者になる夢を追いかける話らしい。

 なおこの映画祭では観客の投票によって受賞作品が決まるそうで、People's Choice は最高の賞の由。

 ネタの記事はこちら

 外国の圧政から同胞を解放するためだったはずの戦いが、そのまま同胞を殺すための戦いに変わってゆく、その過程を心からの共感をもって、しかしあくまでも冷徹に描ききったこの作品は、見おえたとき、重い課題が残って、またもう一度見たいとは思えませんでした。

 しかし、1年ほど経ったときには、ふとしたきっかけで様々なシーンが浮んできて、そのディテールを確認したくて仕方がなくなるだろう。それもわかっています。そう、やはりこの映画はぼくにとってはエルマンノ・オルミの『木靴の樹』とともに、生涯忘れ得ぬ作品なのでした。

 この映画を見てあふれるのを止められぬ涙は、いったい誰に手向けられたものなのか。やはりその答えをまがりなりにも出すのでなければ、生きている意味は無いのでしょう。


Thanx! > 熊谷さん@京都

 ヨーロッパではすでに2枚組DVDが発売になりましたが、こちらではまだ絶賛上映中ですし、DVDも日本語版を待ちましょう。

 ところで映画の脚本は独立の本として刊行されています。

The Wind That Shakes the Barley: A Screenplay
by Paul Laverty
ISBN0954215958

 アマゾン・ジャパンでは品切れてしまっていますが、Amazon.co.uk などではもちろん手に入ります。版元はアイルランドの出版社なので、アイルランドの本屋から買いたい場合にはこちらをどうぞ。

 この本には脚本の他にも専門家が寄稿しているそうです。ノートル・ダム大学のアイルランド研究科教授でアイルランド映画や文化についての著書がある Luke Gibbons が序文、トリニティ・カレッジ・ダブリン準教授で映画研究の Kevin Rockett が映画とアイルランド独立闘争の関りについて、ユニヴァーシティ・カレッジ・コークの歴史学講師で映画自体の歴史顧問でもある Donal O/ Drisceoil がアイルランド独立戦争について、映画監督でもある Mike Robins がケン・ローチの作品について、各々エッセイを書いているほか、映画のプロデューサー、Rebecca O'Brien のエッセイもあるとのこと。

 他にカラー・スチール・ページ8ページ。

 本日、メルマガの配信日ですが、例によって(^_-)、遅れます。明日か、遅くとも明後日には配信できると思います。


 今年のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞したケン・ローチ監督の映画
The Winds That Shakes The Barley が『麦の穂をゆらす風』として国内でも
公開されます。
 11/18、とりあえず、シネカノン有楽町と渋谷シネ・アミューズにて封切りです。
 公式サイトはこちら

 先頃すばらしい新作《EL CAMINO》をリリースしたスコットランドのラテン・ケルト・バンド、サルサ・ケルティカが出演した映画がこの秋、英米で公開されるそうです。

 映画はジェレミー・ブロック監督の "Driving Lessons" で08/25にエディンバラ・フェスティヴァルでプレミア、その後09/08に全英で公開(全米は10/13)。日本公開はまだわかりません。ご存知の方はご一報を。
 十代の少年と年配のベテラン女優のラヴ・ストーリーにからめた、少年の成長物語、らしい。
 簡単な紹介、あちらでの評価など(英語)。
 一応日本語での情報。ルパート君のファン・サイトらしい。

 主演は Julie Walters, Laura Linney, Rupert Grint。ルパート・グリントは『ハリ・ポタ』のロン役で売りだした子で、これが『ハリ・ポタ』以外の初主演作の由。

 サルサ・ケルティカは3曲、サントラに曲を提供し、2度、出演しているそうで、一番目立つのはラストに、地下鉄駅の外でバスキングをしているところ。やっている曲はもちろん〈Auld Lang Syne〉。

 なんでも監督自身がテレビで放映されたケルティック・コネクションズでのライヴを見て連絡をとってきて、わざわざバンドのためのシーンを書きくわえたそうです。


Thanx! > BBC Folk News

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