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shinono-me + 荒谷良一 @ 横浜・エアジン
shinono-me
石川真奈美: vocal
永井朋生: percussion
shezoo: piano
荒谷良一: photography, slide show
Winds Cafe 316 in 原宿:津軽の風〜再び
いつものように早めに着くと、3階のホールの扉が開いていて、三味線の音が聞える。なにか、すごく響きがいい。この日は晴れて空気が乾いており、こういう時は三味線は音が良くなるのだそうだ。
7曲目〈津軽三下がり〉で犬の皮の楽器に替え、次の 〈りんご節〉で、またプラスティックの楽器。ここで山本さんの声に一段とハリが出る。中音域がぐわっと押し出してきて、圧倒される。
聴衆が入っての本番はやはり緊張し、その緊張がやりがいを生む。今日はリハーサルでは乾いていた空気が、人が入るとやや湿り気を帯びる。その湿り気に気が引き締まる。しかし、本番の空白が長かったために、その緊張が仇となった、ということらしい。
山本謙之助: 唄
山中信人: 三味線, 尺八
みわトシ鉄心 w/ 中村大史@ Cafe Bond, 是政, 府中市
みわトシ鉄心
ほりおみわ: vocals, guitar
トシバウロン: bodhran, percussion, vocals
金子鉄心: uillean pipes, whistle, low whistle, vocals
中村大史: bouzouki, piano accordion
みみたぼ @ Sweet Rain、中野
Christy Moore 《Flying Into Mystery》
01月19日・水
2016年の《Lily》以来のオリジナル録音。この間、2017年に《On The Road》、2019年に《Magic Nights》のライヴ盤を出し、2020年にはファースト《Paddy On The Road》からのセレクションも含む初期の選集盤《The Early Years 1969-81》を出した。
ライヴ盤は長いキャリアの中でもベストと言えるメンバーのバンドに支えられて、全キャリアでもベストの歌唱と思えるものばかりで、しかも、成熟とか、大成とか言う年齡の属性をカケラも感じさせない、瑞々しく力強いパフォーマンスに、あたしとしてはかつは驚嘆し、かつは喜んだものだ。この2枚は現在は一つのパッケージで売られていて、もしこれからクリスティの音楽を聴こうというのなら、まず真先に薦める。むろん、プランクシティから聴いてもまったくかまわないが、この2枚のライヴには、この不世出のシンガーが行きついた最高の姿が現れている。
このアルバムはライヴに現われた元気一杯なうたい手を期待すると肩透かしをくう。この人は複雑なことを一見シンプルにうたった歌をストレートに聴かせるのが巧い。ストレートに聞えるからと、中身もシンプルだと気楽に構えると、どこか納得できないところが残る。後味がよくなくなる。もっとも、後味がよくないことが、この人の歌の、とりわけソロの歌の最大の魅力とも言えるだろう。これがプランクシティやムーヴィング・ハーツのようなバンドになると、違ってくる。
何よりもこの人の声は耳に快いものではない。といって不快なわけではないが、執拗にまとわりつく。否応なく耳に入ってくる。とりわけ、今回のように、ほとんど声を上げず、しゃべるように、あるいは囁くように歌うときにはなおさらだ。初めはクリスティもついに老いたか、と思ったのだが、聴いてゆくとそうではないと納得される。こういう声しか出ないから、やむをえず、これで歌っているわけではない。故意に抑えて、こういう歌い方を選んでいる。アルバム全体の基調として選んだのか。それとも、個々の歌に合わせて選んでいるうちに、たまたまそういうものが集まったのか。あるいはその中間か。いずれにしても、終始声を上げないこのアルバムは、そのために聴く者に耳をそばだてさせる。するりと耳に入り、入った先で重くなる。
バックのアレンジももっぱらこの声を引き立たせることをめざす。数曲、別録音でキーボードとストリングスが加えられているのも、あくまでも背景に徹する。全体として、各々の曲にふさわしい背景を配して、声を前面に出す。これならクリスティのギター1本でもいいように思えるが、そうなると今度はギターが声と拮抗してしまうのだろう。むしろ、歌によって背景の色を少しだが明瞭に変えることで、各々の歌の性格を押しだし、アルバムとして聴くときの流れを作っている。
クリスティは公式サイトに全曲の歌詞とノートをアップしている。アルバムのライナーの PDF もある。もっともそこに書かれている各曲のノートは個別の歌詞のページに載っているものと同じではある。これを読み、歌詞を味わいながら聴いていると、歌の一つひとつが、各々の重みをもって、胸の内に沈潜してくる。ライヴ盤を聴くのとは対照的な経験だ。
選曲は例によって、同時代の問題意識と、個人的に惹かれるものごと、現象へのオマージュのバランスがとれている。なんとも巧い。そして、底に流れるユーモアのセンス。アイルランド人のユーモアのセンスには、底意地が悪いとしかみえないものも時にあるが、そういう要素もちゃんと入っている。かれがアイルランドで絶大な人気を得ている、人間国宝とでも言うべき存在なのは、たぶんそこではないか。
ある晩、ゲイリー・ムーアの音楽をずっと聴いてゆくうちに、深夜、この歌が現れた、と言ってとりあげた曲から、ディランの詩を伝統曲のメロディに乗せてうたうラストまで、一気に聴くべきものではないだろう。1曲聴いてため息をつき、また1曲聴いてお茶を(あるいはコーヒーでもワインでも)すすり、さらに1曲聴いて、満月を見あげる。たっぷりと時間をとって、味わいたい。あるいはこれと思い当たった曲をくり返し聴いてもいい。傑作とか名盤とか呼ばれることを喜ぶ境地はかれのアルバムはすでにずっと昔に卒業している。
サポート陣ではシェイミー・オダウドが例によって手堅い仕事をしている。そして息子のアンディがつけるコーラス顔がほころぶ。
Christy Moore: vocals, guitar
Jim Higgins: percussion, organ
Seamie O'Dowd: guitars, harmonica, bouzouki, mandolin, fiddle, banjo, bass, chorus
Andy Moore: chorus
Gavin Murphy: keyboards, orchestral arrangements
Mark Redmond: uillean pipes
James Blennerhassett: double bass
[12 Tracks ]
01. Johnny Boy {Gary Moore} 3:12
02. Clock Winds Down {Jim Page} 2:21
03. Greenland {Paul Doran} 4:43
04. Flying Into Mystery {Wally Page & Tony Boylan} 2:30
05. Gasun {Tom Tuohy & Ciaran Connaughton} 3:02
06. All I Remember {Mick Hanly} 3:01
07. December 1942 {Ricky Lynch} 4:39
08. Van Diemen's Land {Trad.} 3:57
09. Bord Na Mona Man {Christy Moore} 3:41
10. Myra’s Caboose {Trad.} 3:20
11. Zozimus & Zimmerman {Christy Moore & Wally Page} 3:33
12. I Pity The Poor Immigrant {Bob Dylan+Trad.} 3:38
Produced by Christy Moore, Jim Higgins
Recorded by David Meade
Additional Recording by Gavin Murphy
Mixed by David Meade
Mastered by Richard Dowling @ Wav Mastering, Limerick
Artwork by David Rooney
Designed by Paddy Doherty
##本日のグレイトフル・デッド
01月19日には30年間で一度もショウをしていない。年間に4日あるうちの一つ。すなわち、
01月09日
01月19日
(02月29日)
08月09日
12月25日
30年間に7回ある閏02月29日にもショウはしていない。最後のものを除いて偶然だろうか。それにしてはきれいに9の日が並んでいるのは不思議にも不気味にも思える。もっとも、デッドの場合、こういうシンクロニシティは少なくない。(ゆ)
The Songs of Elizabeth Cronin: Irish Traditional Singer
12月28日・月
アイルランド伝統音楽のソース・シンガーの中でおそらく最も有名で、後世への影響も大きいエリザベス・クローニン(1879-1956)の歌集が20年ぶりに改訂された。編纂しているのは孫の Daibhi O Croinin。
ベスと呼ばれたクローニンはコークのゲールタハトに生まれ、母親から歌好きを継いで育つ。この一帯はもともと歌謡伝統の濃いところで、19世紀から採集家が多数訪ずれた。ベスはシェイマス・エニスはじめ、様々な採集家の対象となる。アラン・ロマックスも録音し、さらにジーン・リッチーが録音したことで広く知られるようになる。
ベスの録音としては130トラックほど残っているそうで、ここでは RTE、BBC、ロマックス、リッチー、ダイアン・ハミルトンによる録音59トラックを2枚のCDに収めて付録としてある。音質劣化で使えないものを別として、音楽的、伝統的に興味深いものを選んだそうだ。録音年代はシンガー晩年の1947年から1955年の間。録音場所はいずれもベスの自宅。
本の方はベスが残した歌の歌詞を集めた。ベスが何らかの形で書き残したもので、そのすべてをいつでも歌えたわけではないだろうし、そもそも全部を覚えたわけでもないだろう。覚えたいと思って書きとめたものもあると思われる。とにもかくにも、ベス・クローニンというシンガーが自分の手で書くだけの価値があると認めた歌、ということになる。総数196曲。
巻頭のエッセイはベス・クローニンのバイオグラフィではなく、彼女が生まれ育ったコークのゲールタハトの一つ Baile Mhuirne (Ballyvourney) 一帯を訪ずれた歌の採集家たちを後づける。つまりベスの歌の背景を採集家という角度から描こうとする。
また、ベスが歌を習った、覚えた対象と方法も推測する。ここで面白いのは、ベスには歌の好みがあって、中には冒頭の2、3連しか覚えていない曲もある。これは当然のことであって、伝統的シンガーは全曲を覚える必要も義務も無い。歌いたいと思った歌の歌いたいところだけ覚える。ベス・クローニンに限らない。パーシー・グレインジャーが録音したことで有名なイングランドの Joseph Taylor の〈The Murder of Maria Marten〉も、実際に歌われ、録音されたのは最初の2連だけだ。テイラーはそれしか覚えていなかった。アシュリー・ハッチングスはこの曲をシャーリー・コリンズに《No Roses》で歌わせるにあたって、メロディはグレインジャーによるテイラーの録音のものを使い、歌詞は様々なソースから組みたてた。
収録された歌には英語とアイルランド語の両方があり、タイトルのアルファベット順に混在して並べられている。録音があるものは楽譜も付く。アイルランド語の歌には英語で内容の要約が添えられる。歌のその他の注釈は録音のあるものはその注記、既存の歌集に収録がある場合はその書誌情報と比較。
20年前の初版では編者が曲につけた注釈とCD収録の実際の録音の間にかなりの齟齬があった。様々な制約から本文とCDの制作が別々に行われ、編者はCDの最終形を聞かずにテキストを書いていたためだそうだ。その事情が第2版の序文に丁寧に書かれている。とすれば、まずはそのあたりもきちんと訂正され、わずか6曲だが追加されたこの第2版を買えばいいわけだ。とまれ、アイルランド伝統歌謡の最重要シンガーの1人であるベス・クローニンの全貌にこれで容易に接することができる。
##本日のグレイトフル・デッド
12月28日には1966年から1991年まで、17本のショウをしている。この数字は365日の中で2番目に多い。公式リリースは4本。うち完全版1本。
01. 1966 Governor's Hall, Sacramento, CA
Beaux Arts Ball と題されたイベント。共演クィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス。前売3ドル、当日3.50ドルというポスターと2ドルというポスターがある。3種残っているポスターのどれにも開演時刻が書いていない。セット・リスト不明。
会場はデッドのみならず、多数のロック・アクトがコンサートをしている。が、施設の実態はよくわからない。旧California State Fairgrounds にあった由。
02. 1968 The Catacombs, Houston, TX
20、21日とロサンゼルスで演奏した後、29日のマイアミ・ポップ・フェスティヴァル出演に向かう途中、ここに立ち寄った。会場は300人も入れば満杯のクラブで、当時22歳以上の人間は入れなかった。第一部は夏に出た《Anthem Of The Sun》をほとんどそのまま演奏し、第二部では〈Dark Star> The Eleven> Dark Star〉を延々とやった。とあるブログに述べる。
03. 1969 International Speedway, Hollywood, FL
ヴェニューの名前は実際には Miami-Hollywood Speedway の由。1時間半のテープがあるが、全部ではないらしい。
04. 1970 Legion Stadium, El Monte, CA
このヴェニュー3日連続の最終日。この後は大晦日のショウ。オープナーの〈Cold Rain And Snow〉が2010年、最初の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
05. 1978 Golden Hall, San Diego Community Concourse, San Diego, CA
このヴェニュー2日連続の2日目。
06. 1979 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの中日。《Road Trips, Vol. 3, No. 1》で全体がリリースされた。
この頃はまだ会場の外でデッドヘッドたちはキャンプできた。朝、プロモーターの Bill Graham Presents のスタッフがキャンパーたちに熱いスープを提供していた。
オープナーが〈Sugaree〉でいきなり15分の演奏。こういう稀なセレクションの時はバンドの調子が良い証拠。実際ダブル・アンコールの2曲目〈One More Saturday Night〉まで、気合いの入った、充実したショウ。〈Space〉は短かいが、その前の Drums で二人が大太鼓を叩きまくる迫力は、この二人でも滅多に聞けない。ミドランドはすっかりアンサンブルに溶け込み、冴えたキーボード・ワークで全体を盛りあげる。オルガンもいいが、ぽろんぽろんという電子音がここでは利いている。ガルシアのギターはジャズとしかいいようがない。が、ジャズと違ってデッドのジャムは他の全員がサポートに回るソロの形をとらない。むしろ、全員がたがいにからみあう。ガルシアのギターはほとんど混沌としたその中に筋を通してゆく。
この年は正月5日からツアーに出ているし、ガチョー夫妻からブレント・ミドランドへの交替があり、ショウの総数としては75本だが、長い1年だった。それを締め括るランのベストのショウと言われる。
07. 1980 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの中日。第二部半ば〈Terrapin Station〉の途中でバンド全体がステージに乗って、どこやら外宇宙からちょうど着陸した、という幻影が見えた、と Robin Nixon が DeadBase XI で書いている。照明と音楽と精神状態の合作らしい。
08. 1981 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの中日。
09. 1982 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの中日。13.50ドル。開演8時。第一部3曲目の〈El Paso〉は作者 Marty Robbins が死んで最初の演奏。
10. 1983 San Francisco Civic Center, San Francisco, CA
大晦日に向けての4本連続のランの2日目。開演8時。
11. 1984 San Francisco Civic Center, San Francisco, CA
大晦日に向けての3本連続のランの初日。開演8時。
12. 1986 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの2日目。開演8時。
13. 1987 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの2日目。17.50ドル。開演7時。
14. 1988 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
大晦日に向けての3本連続のランの初日。開演7時。トム・トム・クラブ、Peter Apfelbaum & Hieroglyphics Ensemble が前座。第二部6曲目〈Uncle John's Band〉が2011年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、2018年の《30 Days Of Dead》で 〈Uncle John's Band> I Need A Miracle〉の形でリリースされた。
UJB はわずかに前のめりのテンポ。ミドランドのハーモニーはあふれてくるものを押えられない。クロイツマンがいくらか冷静にビートをキープする一方で、ハートも噴き出すものをそのまま音にする。最後のコーラスが終った途端、空気が切り替わり、一瞬、どちらへ行くかわからぬまま屹立して次の瞬間、ほとんど凶暴なギターをガルシアがくりだして INAM。ここでのウィアはシンガーとして一級と言っていい。これはもう嘆願、祈りの歌ではない。脅迫すれすれ。いや、奇跡はもらうものではない、自ら起こすものだという宣言だ。UJB ではかろうじて押えこまれていたものが、爆発している。会場のコーラスは驚くほど歯切れが良い。
Peter Apfelbaum は1960年バークリー生まれのマルチ・インストルメンタリスト、作曲家。楽器はピアノ、テナー・サックス、ドラムス。Hieroglyphics Ensemble はベイエリア出身のミュージシャンたち17人で編成したビッグ・バンド。1990年代にはドン・チェリーと共演している。トレイ・アナスタシオやフィッシュのアルバムにも参加。
15. 1989 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの2本目。20ドル。開演7時。第一部2曲目〈Feel Like A Stranger〉が2019年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
まずウィアの歌唱に気合いが入っている。ガルシアのギターとミドランドの鍵盤がこれに応える。いいジャムが続いて、後半、"Long, long, crazy night" とミドランドが入ってきてからのウィアとの掛合いが粋。"loooooooooooooooooooooooooooooong” と思いきり引っぱって、"long, crazy night" と合わせる。こういうところ、ミドランドにして初めて可能な洗練された野生だ。
この89年後半から1990年春にかけてのデッドの3度目のピークは、空前にして絶後、デッドだけでなく、およそ20世紀の音楽において他に類例も比肩もできるものはない。あえて言えば、マイルスの『ダーク・メイガス』からの三部作をも凌ぐ。
16. 1990 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの2本目。22.50ドル。開演7時。
17. 1991 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの2本目。開演7時。(ゆ)
ミキシングの違い
11月21日・日
A&C オーディオのヒッポさんがブログで大貫妙子&坂本龍一『UTAU』と井筒香奈江『レイドバック 2018』のミキシングの違いを指摘しているのを見て、Apple Music on iPad mini + AirPods Pro で聴いてみる。これはヒッポさんの言う「位相周りの良い」システムではないが、それでも違いはわかる。
確かに大貫の声も坂本のピアノもごく自然で、生で聴いている感覚。
井筒のはピアノの音がおかしい。生で聴いて、こんな風に聞えたことはない。ヒッポさんがピアノの中に頭を突込んだようだというのは言い得て妙だ。それに声とピアノとベースが全部1ヶ所に、つまり同じ空間を同時に占めているように聞える。音量のレベルも全部同じ。生ならPAを通してもこんな風に聞えることはない。おまえの耳がおかしいのだと言われるかもしれないが、あたしならこれを優秀録音とは言わない。
いずれにしても、これがリファレンスだというオーディオ評論家の評価は、あたしも聴いてみればなるほどそうだと思うものでは無いことは確かだ。そういう意味ではわかりやすい指標になる録音ではある。これをリファレンスとして書いていることの反対だと思えばいいわけだ。
歌も大貫と井筒ではだいぶ差がある。井筒は声は出せるようだが、アーティキュレーションが甘い。または歌詞の読みこみが不足。聴いていて、つまらない。念のため、3曲聴いてみるが、それ以上聴きつづける気が失せる。
大貫&坂本はCDを買おう。
##本日のグレイトフル・デッド
11月21日には1969年から1985年まで5本のショウをしている。公式リリースは完全版が1本。
1. 1969 Building A, Cal Expo, Sacramento, CA
KZAD 開局記念日パーティー。前売6.50ドル、当日7ドル。開場6時、開演8時、終演午前1時。共演 A B Skhy、Country Weather, Commander Cody、 Wildwood。
このショウの第二部のテープは SBD、サウンドボード録音としてテープ交換網に出回った最初のものと言われる。
Country Weather は1966年サンフランシスコ郊外 Walnut Creek で The Virtues として結成され、67年に改名。アヴァロン・ボールルーム、フィルモア、ウィンターランドなどでサンフランシスコ・シーンのアクトの前座を勤めた。
Commander Cody はその後、& His Lost Planet Airmen など様々な名前のバンドを率いて知られるようになる。本名は George Frayne でアイダホ出身。今年9月、ニューヨーク州で死去。
Wildwood は調べがつかず。デッドの前身のブルーグラス・バンドの一つに Wildwood Boys があるし、この名前のバンドはいくつもある。
2. 1970 Sargent Gym, Boston University, Boston, MA
3.50ドル。偽造チケットが発覚し、開演が遅れる。セット・リストは曲順がはっきりしない。DeadBase XI と SetList Program を合わせると〈That's It for the Other One〉を1曲と数えて9曲やっている。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。DeadBase XI はまた "a chimp act" が前座をした、とする。どんなものなのだろう。猿回し? 同じく DeadBase XI の Thomas Flannigan のレポートでもよくわからない。セット・リストでは〈That's It for the Other One〉とされているところ、フラニガンは〈Not Fade Away〉としている。
タダで入ろうと押し込んだ連中を警官隊が排除し、騒動になる。ボストンの警察でも最も手強い群衆を相手にする黒人からなる警官隊が動員された。
デッドが出てきたのはすでに10時。最初の4曲はこともなく終り、休憩が入って、再び出てきたデッドは〈Good Lovin'〉をやり、会場は爆発する。その次に〈Dancing in the Street〉をやり、これには黒人の警官隊もガードマンたちも踊った。この曲もセット・リストには無い。さらに〈St. Stephen〉〈Not Fade Away〉と続いて、ラストは〈Uncle John's Band〉。喝采は止まなかったが、とうとうクルーが出てきて、バンドはくたびれてもう終りと宣言。
3. 1973 Denver Coliseum, Denver, CO
このヴェニュー2日目。《Road Trips, Vol. 4, No. 3》で全体がリリースされた。
〈Me And My Uncle〉は演奏回数1位だがオープナーは珍しい。どの曲もよい演奏だが突破しているところはなかったのが〈They Love Each Other〉でがらりと変わる。リズミカルに、弾むようなビートに乗って歌われるのは新鮮。〈Here Comes Sunshine〉がまたすばらしい。以後、〈Big River〉〈Brokedown Palace〉〈Weather Report Suite〉とハイレベルの演奏が続く。
1973年は72年のような、決定的名演、突出した瞬間はあまりないのだが、全体として中身の詰まった、水準の高い演奏が、どの曲でも変わらないところがある。
4. 1978 Community War Memorial Auditorium, Rochester, NY
7.50ドル。開演7時。第一部最後の〈Deal〉で、ガルシアは最後のリフレイン"Don't you let that deal go down."を34回繰返した由。
5. 1985 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA
15ドル。開演8時。3日連続の中日。第一部はそこそこ、第二部が良かった由。
この日、開演前、ステージ裏のドアがビールの樽を入れるために開けられ、会場は凍りついた。この日は寒かった。ビールの樽はステージ裏のバーのためだったが、ここでは酒を売る免許をとっていないことを、酒類販売取締りの担当者が発見し、以後、代金は受けとれなくなった。(ゆ)
みみたぼ @ In F、大泉学園
みみたぼはシンガーの石川真奈美さんとピアノの shezoo さんのデュオ。あたしは初体験だが、もう4年やっているのだそうだ。「みみたぼ」って何だろうと思ったら、「みみたぶ」と同じ、と辞書にある。どういう訛かわからないが、みみたぶではユニットの名前にはならないか。
歌とピアノは対等に会話するが、ピアノが歌を乗せてゆくこともある。逆はどうだろう。やはり難しいか。一方で、ピアノが歌に反応することはありそうだし、実際そう聞える瞬間もある。そういう瞬間を追いかけるのも愉しそうだ。次はそうしてみよう。今回2人のからみが一番良かったのは、後半最初のリチャード・ロジャースの〈Blue Moon〉。
歌は石川さんのオリジナル、shezoo さんのオリジナル、ジャズのスタンダード、バッハ、歌謡曲。この振幅の大きさがいい。
中でもやはりバッハはめだつ。石川さんも参加した2月の『マタイ』で歌われた曲。あの時の日曜日の方を収録した DVD がもうすぐ出るそうだ。いや、愉しみだ。あれは生涯最高の音楽体験だった。生涯最高の音楽体験はいくつかあるけれど、その中でも最高だ。今、ここで、『マタイ』をやることの切実さに体が慄えた。その音楽を共有できることにも深く歓んだ。DVD を見ることで、あの体験が蘓えるのが愉しみなのだ。石川さんもあれから何度か、いろいろな形でこの歌を歌われてきた、その蓄積は明らかだ。それはまた次の『マタイ』公演に生きるだろう。
バッハの凄さは、どんな形であれ、その歌が歌われている時、その時空はバッハの時空になることだ。クラシックの訓練を受けているかどうかは関係ない。何らかの形で一級の水準に達している人が歌い、演奏すれば、そこにバッハの時空が現出する。
その次のおなじみ〈Moons〉が良かった。石川さんはもちろん声を張って歌うときもすばらしいが、この日はラストに小さく消えてゆく、その消え方が良かった。消えそうで消えずに延ばしてゆく。『マタイ』の前のエリントンもそうだし、この〈Moons〉、そしてホーギー・カーマイケルの〈Skylark〉。
ここでは封印していた?インプロが出る。でも、いつものように激しくはならない。音数が少なく、むしろ美しい。
shezoo 流インプロが噴出したのは後半2曲目〈Blue Moon〉の次の〈砂漠の狐〉。これが今回のハイライト。いつもよりゆっくりと、丁寧に歌われる。グレイトフル・デッドもテンポが遅めの時は調子が良いけれど、こういうゆったりしたテンポでかつ緊張感を保つのは簡単ではないだろう。ラスト、ピアノが最低域に沈んでゆくのにぞくぞくする。
エミリー・ディキンスンの詩におふたり各々が曲をつけたのも面白かったが、ラストの立原道造の〈のちの想いに〉に shezoo さんが曲をつけたものが、とりわけ良かった。声がかすれ気味なのが歌にぴったり合っていた。
アンコールの歌謡曲〈星影の小道〉が良かったので、終演後、服部良一の〈昔のあなた〉をリクエストする。雪村いづみがキャラメル・ママをバックに歌った《スーパージェネレーション》で一番好きな曲。歌詞もメロディも雪村の歌唱も、そしてバックも完璧。〈胸の振子〉もいいけれど、このデュオには〈昔のあなた〉の方がなんとなく合う気がする。
このアンコール、ア・カペラで歌いだし、ピアノに替わり、そしてピアノとうたが重なる、そのアレンジに感じ入る。
shezoo さんは以前はインストルメンタルが多かったけれど、ここ数年はシンガーとつるむことが多くなっているのは嬉しい。いいうたい手を紹介してもらえるのもありがたい。願わくは、もっと録音を出してくれますように。配信だけでも。(ゆ)
高橋美千子+shezoo with 笠松泰洋@カーサ・モーツァルト
10月09日・土
shezoo さんが猛烈に誘うので「音楽×空間 第3回公演」に、原宿に出かける。いやもう、確かにこれは聴けたのはありがたい。また一人、追っかける対象が増えた。
この企画は作曲家の笠松泰洋氏が高橋、shezoo デュオのライヴを見て、自分の曲も歌ってほしいともちかけて始まった由。笠松氏もオーボエ始め、各種リード楽器で参加する。細かいフレーズは吹かず、ドローンや、ゆったりしてシンプルなメロディを奏でる。曲によっては即興もされていたようだ。shezoo さんの〈Moons〉ではピアノのイントロの後、メロディを吹いた。
とにかく何といっても高橋さんの声である。みっちりと身の詰まった、空間を穿ちながら、同時に満たしてくる声。一方で、小さく細く延ばすときでさえ、倍音が響き、そしてサステイン、という言葉を人間の声に使ってもかまわなければ、サステインがおそろしく長い。音域も広く、音量の幅も大きく、会場一杯に朗々と響きわたるものから、聞えるか聞えないかの囁き声まで、自由自在に操る。その声で歌われると、〈Moons〉のような聞き慣れた曲がまるで別の様相を現す。
専門はバロック、古楽の歌とのことで、オープニングはヒルデガルド・フォン・ビンゲンの曲から shezoo さんの〈Dies irae〉の一つ(どれかはすぐにはわからん)、そして笠松氏の〈Lacrimosa dies illa〉をメドレーで続ける。というのは、説明され、プログラムにあるので、ああ、そうなのかと思うが、後はもうまったく夢の世界。歌とピアノ、それにご自分では「ヘタ」と言われる割には確かな笠松氏のリードが織りなす音楽に聴きほれる。
shezoo さんのピアノの音がまた尋常ではない。あそこのピアノは古いタイプの復元で、弾きやすいものではないそうだが、音のふくらみが聴いたことのない類。高橋さんの声に拮抗できるだけの実を備えている。ピアノもまた朗々と歌っている。ピアノ自身が天然の増幅装置になって大きな音はまさに怒りの日のごとく、小さな音はどこまでも可憐にささやく。
会場にも来ておられた岩切正一郎氏の詩に笠松氏が曲をつけた3曲、しかも1曲は世界初演というプログラムとこれに続く〈Moons〉が後半のハイライト。岩切氏の詩は気になる。全体を読んでみたい。日本語の現代詩、口語の詩は、韻文としては圧倒的に不利だが、歌にうたわれることで、別の命を獲得することは体験している。そのもう一つの実例になるだろう。
〈Moons〉のイントロはまた変わっている。訊いたら、先日のエアジンでの10人のシンガーとの共演の際、全員がこの歌をうたい、そのため、全てのイントロを各々に変えたのだそうだ。ちょっと凄い。この歌だけで1枚、アルバムをぜひ作って欲しい。一つの歌を10人の別々のシンガーが歌うなんて、まず他にはできないだろう。スタジオに入るのが無理なら、ライヴ録音はいかが。今のエアジンの体制なら可能ではないか。
しかし、本当に夢のような時間。人間の声の魅力をあらためて思い知らされる。歌にはパワーがある。ありがたや、ありがたや。
今日の14時から音降りそそぐ 武蔵ホール(西武池袋線武蔵藤沢駅前)で、同じ公演がある。
徃きのバス、電車の中で借りてきたばかりのヤコブ・ヴェゲリウス『曲芸師ハリドン』を一気に読む。このタイトルはしかし、原著の意図を裏切る。話はシンプルだが、奥はなかなか深い。それに、海の匂いと乾いた文章は魅力的。そしてハリドンがやはりあたりまえの存在ではないことが最後にはっきりするところはスリリング。これなら他も愉しみだ。
帰り、ロマンスカーの中でデッドを聴くが、A4000の音が良い。すんばらしく良い。ヴォーカルが前面に出て、生々しい。をを、ガルシアがウィアがそこに立って歌っている。全体にクリアで見通しが良く、にじみもない。聴いていてわくわくしてくる。音楽を心底愉しめると同時に、ああ、いい音で聴いてるなあ、という実感がわく。ここは A8000と同じだ。うーむ、エージング恐るべし。
それにしても、FiiO FD7 は「ピュア・ベリリウム・ドライバー」、A8000は「トゥルー・ベリリウム・ドライバー」。どう違うのだ。というより、それが音の違いにどう出ているのか。もちろん、音は素材だけでは決まらないが、うー、聞き比べたくなってくる。それもこの場合、店頭試聴ではだめだ。両方買って、がっちりエージングをかけて、自分の音源で確かめなければならない。
Linda C. Cain, Susan Rosenbaum, Blast Off 着。Leo & Diane Dillon が絵を描いている、というだけで買った絵本。宇宙飛行士になる夢をずっと持っている黒人の女の子が、友だちにあざけられ、空地にあったガラクタでロケットを作って宇宙へ飛びだす。友だちは夢と笑うが、もう動じない。初版1973年。この時期に黒人の女の子が主人公で、なおかつ、その子が宇宙飛行士になるという話は先駆的。ということで、New York Review of Books が再刊。
##本日のグレイトフル・デッド
10月09日は1966年から1994年まで、11本のショウをしている。公式リリースは3本。うち完全版2本。
01. 1966 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA
午後2時から7時までで、ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド、ジェファーソン・エアプレインとの共演。セット・リスト無し。
02. 1968 The Matrix, San Francisco, CA
前日と同じでウィアとピグペン抜き。
03. 1972 Winterland Arena, San Francisco, CA
後半冒頭、グレース・スリックがブルーズ・ジャムに参加して、即興の歌をうたった。どうやら酔っぱらっていたらしい。テープが残っていて、「あのビッチをステージから連れだせ」とどなっているビル・グレアムの声が聞えるそうな。彼女がデッドのステージに一緒に出たのはこの時だけ。
04. 1976 Oakland Coliseum Stadium, Oakland, CA
The Who との共演2日間の1日目。ショウ全体が《Dick's Picks, Vol. 33》でリリースされた。
Philip Garris とい人のポスターがすばらしい。2日間のコンサートのためだけにこういうポスターを作っていたのはエライものだ。
演奏はデッドが先。11時開演。前座というわけではなく、普段のショウをきっちりやっている。後半は最初から最後まで切れ目無しにつながった一本勝負。
この頃はまだ聴衆録音は公認されておらず、録音しているところを見つかると機材やテープが没収されることもあった。
05. 1977 McNichols Arena, Denver, CO
8.25ドル。7時半開演。良いショウらしい。
06. 1980 Warfield Theatre, San Francisco, CA
15本連続のレジデンス公演の11本目。この日と翌日の第一部アコースティック・セット全体が、2019年のレコードストア・ディのためのタイトルとしてアナログとCDでリリースされた。また第三部の2曲目〈Greatest Story Ever Told〉が《Dead Set》でリリースされた。
このアコースティック・セットの全体像を聴くと、他も全部出してくれ、とやはり思う。
07. 1982 Frost Amphitheatre, Stanford University, Palo Alto, CA
12ドル。屋外で午後2時開演。この年のベストの一つ、と言われる。
08. 1983 Greensboro Coliseum, Greensboro, NC
後半 Drums の後、2曲しかやらず、最短記録かもしれない。演奏そのものは良かったそうだ。
09. 1984 The Centrum, Worcester, MA
2日連続の2日目。ジョン・レノンの誕生日で、アンコールは〈Revolution〉。
良いショウらしい。
10. 1989 Hampton Coliseum, Hampton, VA
前日に続き、"Formerly the Warlocks" として行われたショウ。《Formerly The Warlocks》ボックス・セットで全体がリリースされた。その前に、オープナーの〈Feel Like A Stranger〉が1990年に出たライヴ音源集《Without A Net》に収録されていた。
このサプライズ・ショウの試みはバンドにとっても刺激になり、新しいことをやろうという気になったらしい。ブレア・ジャクソンのライナーによれば、しばらくやったことのなかったこと、つまり事前のリハーサルをした。しばらくレパートリーから外れていた曲がいくつも復活したのはそのためもあった。
2日間ではこちらの方がいいという声が多い。あたしもそう思う。前日は自分たちの勢いに呑まれているところがなきにしもあらず。この日はうまく乗れている。MIDI による音色の変化もハマっている。
この日のサプライズは〈Dark Star〉。1984-07-13以来の復活で、この後は比較的コンスタントに演奏された。最後の演奏は1994-03-30。演奏回数は235回。演奏回数順では56位。5年ぶり、それにデッドのシンボルともいえる曲の復活とあって、聴衆の歓声は前日にも増して大きく長かったことは録音でもわかる。さらにアンコールの〈Attics Of My Life〉は1976-05-28以来、13年ぶり。
まだネットも携帯もないこの晩、深夜、明け方にもかかわらず、全米のデッドヘッドたちはおたがいに電話をかけまくった。
11. 1994 USAir Arena, Landover, MD
3日連続の初日。35ドル。午後7時半開演。レックス財団のための資金集めのショウ。そこそこの出来とのこと。(ゆ)
Muireann Nic Amhlaoibh & Irish Chamber Orchestra @ Kickstarter
シンガーの Muireann Nic Amhlaoibh(ムイレン・ニク・アウリーヴ)が、アイルランドの作曲家が編曲したシャン・ノースの伝統歌を Irish Chamber Orchestra と伴に歌うというコンサート "ROISIN REIMAGINED" が来月7日の Kilkenny Arts Festival であります。
このコンサートを録音してCDとしてリリースする計画があり、その資金を Kickstarter で募っています。
締切まで1週間足らずですが、まだ目標額には達していません。皆さま、ぜひぜひ応援しましょう。
ムイレンはアイルランドの現役シンガーでも最高の一人です。「謎に満ちた完璧だ」とドーナル・ラニィも言ってます。これまでの録音は Bandcamp で試聴の上、購入できます。(ゆ)
介護保険料、ハーモニカ・ジャズ、The Secret Trio、行川さをり
玉響@横浜・エアジン
ベッシー・スミスの伝記
Jackie Kay という人は現在スコットランドの桂冠詩人で、ベッシー・スミスのこの伝記は1997年初版の再刊。スコットランド人の母、ナイジェリア人の父に1961年に生まれ、誕生と同時にスコットランド人夫婦の養子となる。2歳上の兄も同じ夫婦の養子になっていて、グラスゴーの、周りに自分たち兄妹以外に黒人がまったくいない環境で育つ。12歳の時、父がプレゼントしてくれた2枚組 Any Woman's Blues でスミスの歌に出逢い、生涯の友となる。この出逢いから話は始まる。スミスは別格だった。14歳の時、カウント・ベイシーとともにやってきたエラ・フィッツジェラルドを生で聞いたが、エラの声は娘らしく、くすくす笑っていた。スミスの剥出しの生の声は、それまで存在すら知らなかった場所に引きずりこむ(13pp.)。ジャケットのスミスの写真を見て、自分と同じ色をしていることで黒人としての自覚が目覚める。本人も差別を受けている。
eGrado, イングランド伝統歌
散歩用ヘッドフォンに久しぶりに eGrado を使ってみる。夜、少しじっくり聴こうと 428 をかますと良く歌う。これは素姓が良いのだ。ディスコンになったのは残念。SR60e を使えということなんだろうが、屋外で使うときには、eGrado のこの固いプラスティックががっちりはまるのが気持ち良いのだ。価格.com で見ると SR80e はもう無くて、SR60e の次は125e。325 も無く、GW100、Hemp と来て、RS2e になる。
すばらしい。ゆったりと悠揚迫らず、イングランドの歌の世界にどっぷりと浸れる。James Patterson のヴォーカルとギター。John Dipper のはヴィオラ・ダ・モーレとのことだが、ちょっといなたい、けれど気品のある響きが聞き慣れたフォークの世界と一線を画す。練りに練られたフレーズを即興に聴かせ、声を縫って、水墨画のような空間を描きだす。ハーディングフェーレほどではないが、共鳴弦が立体的な響きを生む。ソロではクラシック的な技法でノルディックの伝統曲を演るのが、やや乾いた音になるのが面白い。
3月8〜10日 医者通い
Hanz Araki - vocals, flute, whistle, shakuhachi, bodhran
夜の音楽 @ 横濱 エアジン
松本泰子 + shezoo @ブールマン、成城学園
アンディ・アーヴァイン詩集
中村大史@ホメリ、四谷三丁目
岡大介 第11回木馬亭独演会、浅草
引田香織 @ Salone Fontana、成城学園
彩 @ ホメリ、四谷三丁目
彩 @ ホメリ、四谷三丁目
夜の音楽 @ strings、吉祥寺
仙波清彦とはにわオールスターズ 気がつけば芸歴50年祭
朝日カルチャーセンター、新宿でアイリッシュ・ミュージック入門講座
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/23bd4144-13a1-acd6-ec5d-5adf1d1846a4
矢野あいみ、服部あゆみ、高梨菖子、梅田千晶@ホメリ
Susan McKeown《BLACKTHORN》, 2005
Winds Cafe 215 メランコリーの妙薬 解説 その1
03. The Lady Of York, Chris Wood, Trespasser, 2007, Trad.
04. The Dalesman's Litany, Dave Burland, A Dalesman's Litany, 1971, Trad.
05. Why Old Men Cry, Dick Gaughan, "Far, Far From Ypres", 2008, Dick Gaughan
06. Sailing to Australia, Dougie MacLean, Butterstone, 1983, Dougie MacLean
07. Wild Rover, Jim Causley, Lost Love Found, 2007, Trad.
08. L & N Don't Stop Here Anymore, Jimmy Aldridge & Sid Goldsmith,
09. Wild Rover, Mick West, A Poor Man's Labour, 2004, Trad.
10. The Bonnie Banks Of Fordie (Child 014), Nic Jones, Ballads (Anthology), 1997, Trad.
11. Moon In The Glass, Paul Stephenson, Light Green Ball, 2002, Paul Stephenson
12. The Folkstone Murder, Pete Castle, False Waters, 1995, Trad.
13. Fair And Tender Lovers, Roger Wilson, Stark Naked, 1994, Trad. & Roger Wilson
14. The Wind That Shakes The Barley, The Alias Acoustic Band,
15. Boots Of Spanish Leather, Tony Rose, Bare Bones, 1999, Bob Dylan