クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:無線

 final の TONALITE を使いはじめて3ヶ月経った。もう他のイヤフォンで聴こうとはむあったく思わない。試してみようという気すら起きない。まっすぐ TONALITE に手が伸びる。リスニングの99.9%は TONALITE で聴いている。一度確認の必要があって有線イヤフォンで聴いてみたら、音がきつくて5分と聴いていられなかった。Accoustune HS1300SS に onso 08 の4.4mmを着けたもので、TONALITE 以前最も気に入っていたにもかかわらず。きついというのはシャープ過ぎる。音が耳につき刺さってくるように感じた。以来、有線イヤフォン、というより DTAS でパーソナライズされていないものは怖くて手にとれない。

  AirPods Pro 3 とiPhoneで聴力検査をすると、その結果に合わせたパーソナライズが可能になる。これは耳の中の聞こえ方に合わせる方式。従来のイヤフォンのパーソナライズはこの方式だ。TONALITE が画期的なのは、イヤフォンだから耳の中だけでいいだろう、ではなく、体全体、少なくとも肩から上での聞こえ方に合わせるところ。

 bayerdynamic が自社製ヘッドフォン用にキャリブレーション用プラグインを出した。基本的な機能はヘッドフォンでスタジオ環境の再現をするものだが、機能の一つとしてパーソナライズが入っていて、「耳間距離や頭囲を手動入力し、到達時間差を微調整」ができる。

 ヘッドフォンでスタジオの再現ができる機能は最近では IK Multimedia ARC ON・EAR にも登載されている。ベイヤーのはもう半歩進んで、パーソナライズまで含む。もっとも「耳間距離や頭囲を手動入力」というのはひっかかる。

 従来のパーソナライズは、耳の中での響き方、聞こえ方を測り、イヤフォンを調整するわけだが、その場合、調整とはターゲット・カーブに合わせることになる。ハーマン・カーブに代表される、音が良く聞えるとされる周波数特性のカーブだ。このカーブは多数の人間の耳を測定したデータに基いている。つまり平均値だ。あるいはメリディアン値かもしれないが、あたしにはそこまではわからないし、今はどちらでも問題ではない。いずれにしても、ハーマン・カーブなどの値は多数の人間が良い音に聞える、だろうと推測されるデータで、聞えの周波数がそのカーブに下から上までぴったり合うなどという人間は1人として存在しない。

 TONALITE のパーソナライズはこれとは対極にある。平均値またはメリディアン値のカーブではなく、対象の個人固有のカーブに合わせる。したがってそこで作られるカーブは対象の人にとっては上から下までぴったり合うが、それ以外の人間には誰にも合わない。あたしの TONLITE が良い音、最高の音に聞えるのはあたしだけで、あたし以外の人間には良い音には聞えない。

 そしてあたしにとってはますます良くなってきた。TONALITE はダイナミック・ドライバーだ。ということはエージングが効く。使用40時間を超えるあたりからぐんと良くなった。スケール感の表現がうまくなり、フルオケやジャズのビッグバンドが気持ち良くなる。空間も広がった。細部の表現にも磨きがかかってきた。ここで面白いのが、いわゆる解像感がよくなるのに音がシャープにならない。というより、すべての音がシャープになるわけでない。シャープな音はシャープに、丸い音は丸いまま、細部が聞える。

 クマさんによる TONALITE 紹介の動画の最後にもあるように、音色選択を50時間ほどのところでやりなおしてみた。するとやはり一番下を選ぶことになった。100時間でまたやってみよう。

 MacBook Pro M4 上の Tidal で再生し、TONALITE で聴くのと、同じソースを USBから I2S に変換して Ferrum Wandla > マス工房 model 433 > final DX6000 につないで聴くのと比べる。まったく違いがない。いやになるほど違いが無い。あえて違いを探せば、後者の方が音が鳴っている空間が若干広い。

「オーディオは自分の好きな音を見つけ、それを聞かせてくれる機器を探す趣味のはずなのに、評論家が推薦する音を好きになろうと努力する人が多過ぎる」

 昔、ヘッドフォン祭である人に言われて、なるほどと共感した言葉である。「評論家」は今なら「インフルエンサー」を加えてもいいだろう。TONALITE が聴かせる音は誰かが推薦しているわけではない。あなたに最適な音はこれですよと聴かせてくれる。その最適な音を日々聴くたびに好きになってゆく。これ以外の音で聴きたいとも、聴こうとも思わない。したがって、TONALITE 以外のイヤフォンはもちろん、ケーブルの類、ドングルも含む DAC/amp の類、すべて不要になった。したがって関心も湧かない。これは正直ゆゆしきことである。

 万一 TONALITE がイヤフォン業界を席捲するようなことがあれば、このシーンは壊滅するだろう。それはやはりまずい。今のところ、そうなる気配が無いのは、とりあえず世間のためにはプラスであろう。願わくは final が研究・開発を続け、DTAS を改良しつづけ、ヘッドフォンなどの新製品を出せるくらいには売れていてほしい。

 パーソナライズによって市場が崩壊、消滅してしまったことには実例がある。広告である。屋外の看板、電車の中吊りなど、不特定多数に訴える広告は消えてしまった。残っているのは本来不特定多数を対象にしている商品・サーヴィスのものだけだ。

 当然のことながら、Bluetooth が気になってきた。TONALITE を使うまでは、関心がほとんど無かったのと対照的ではある。そうしてみると現状で DAP でサポートされているのは 5.x までだ。iPhone ではすでに 6 がデフォルトになっている。先日発表された iPad Air や MacBook Air, Neo でも6になった。ヴァージョンが上がっても音質が上がるわけではない、というのだが、4.x と 5.x ではやはり違う。6 をサポートしている iPhone 17 で一応比べてみた結果 5 と 6 で音質の違いはわからなかったが、店頭での短時間での試聴だから、日常的に使ってどうか。

 Bluetooth が前提なので、近頃ぼつぼつ出てきているストリーマーやストリーマー機能を盛込んだ DAC なども関係がなくなってしまった。こういう機器は有線が前提だから、Bluetooth はサポートしていなかったり、していても受信オンリーだったり、AAC や LDAC はサポートしていなかったりする。

 TWS イヤフォンはケースと一体化されている。ケースは本体がぴったりはまるようにできている。したがって筐体に何か貼って音を良くする技は使えない。もっとも今のところ、そうしたいとも思わない。DTAS によるパーソナライズは完璧だ。あるいは現在の技術水準で完璧に限りなく近い。

 これまでのところ、一度トラブルがあった。Safari で開いているあるサイトで音が出なくなった。再生はされているようだが、TONALITE から音が出ない。ブラウザの再起動、MacBook Pro の再起動、TONALITE のペアリングのオフ・オンでは一向に直らない。さらに、他のアプリ、Tidal やプレーヤー・ソフトでも音が出なくなった。ペアリングをやりなおすと、他のアプリでは直るが、Safari 上のそのサイトではだめで、そこで試した後ではまた他のアプリでも音が出なくなる。ブラウザを落として、Tidal だけを立上げても、音が出ない。一時は途方に暮れた。

 ようやく思いついて、予備の MacBook Air で同じサイトを開くと、ちゃんと音が出る。ここにいたって原因に思いあたった。Safari のキャッシュを空にすることで解決。

 さて、万能のように見える Tonalite だが、一つ、できないことがある。DSD 再生だ。DSD は DoP にしても、無線では今のところ不可能だ。DSD 再生はケーブルが要る。

 とはいうものの、である。DSD ファイルが手許にいくつあるか、数えてみる。これから急激に増えるか、と考えてみる。DSD 録音・再生では急先鋒の Blue Coast Records のクーキー・マレンコが、先日の NAMM で DSD に興味のある複数の録音エンジニアに紹介されたことに驚き、DSD の時代がやってくるのかとあおっていたけれども、グラミーを獲るような録音が DSD でもリリースされる日は来るとしてもまだ遠い先だろう。

 そのマレンコが先頃、またテスト用のトラックを出した。CDレベルの16/44.1から、24/48、24/96、24/192、DSD64、DSD128、DSD256 の各フォーマットを同じ録音で聴き比べることができる。無料での公開だ。



 これを PCM で再生すると TONALITE はちゃんと違いを出す。TONALITE で聴いて、それぞれの違いがわかる。

 もっとも、DSD256相当まで聴いていって、また16/44.1にもどってみると、これで十分じゃないかと思ったりもする。そりゃ、DSD版があれば、そしてリーズナブルな価格で手に入るなら買ってもいいが、何が何でも DSD でなければダメだ、とあたしはならない。

 TONALITE でもう一つ、不満がある。マルチポイント接続である。TONALITE は一度に2台までしか接続できない。3台目につなぐと、これまでつながっていた相手が2台とも切れ、ペアリングをやりなおさねばならなくなる。おまけに Profile が General にもどってしまい、他の設定もデフォルトに戻る。TONALITEアプリで設定をしなおさねばならない。これを避けるためにはつなぐ相手を固定するしかない。TONALITE は外出時にも使うから、iPad や Mac は母艦にならない。1台は iPhone にする必要がある。ここはもう少し柔軟にしていただきたい。

 ということで、今はストリーミングはもっぱら iPhone で聴いている。折りしも JPLAY というアプリが出た。iOS と iPadOS 用だ。2週間無料で試せる。料金は年額5,400円のサブスク。試してみるとなかなか音が良い。Tidal も扱える。今まで使ってきた Amarra がどうも今ひとつ使い勝手がよくないので、JPLAY をメインのプレーヤーにして Tidal を聴いている。

 Tidal に無いものは Apple Music で聴く。こちらは iPhone でほぼ何の不満もない。N響の録音が Apple Music で Dolby Atmos で出たというので、これに対応している AirPods Pro 3 と iPad mini で聴比べてみた。Tonalite では Apple Lossless での再生になる。空間の広さは APP3+Dolby Atmos の方が実感できる。オーケストラのサイズ感もこちらの方が近い。ところが、個々の楽器、パートは Tonalite の方が明瞭で、定位もきちんとわかる。 APP3+Dolby Atmos では、とりわけトゥッティの場面でごちゃとなる。ほとんどユニゾン。広い空間でユニゾンで鳴っている。で、どちらが音楽として気持ちよいかというと、Tonalite になる。今回はフルオケで、小編成ではどうだろうか。

 Bandcamp も Bandcamp アプリで聴くとなかなか音がいい。ブラウザ上で聴くよりもずっと良く聞える。これの問題は発売前のアルバムの先行リリース・トラックは聴けないことだ。

 かくてあたしのオーディオ・ライフは TONALITE と iPhone とストリーミングでほぼ完結している。どんなにカネをかけたシステムよりもこの組合せの音が一番気持ちよい。音楽に没入できる。ここに入ってこないグレイトフル・デッド関連用には Sony の Walkman の高い方から2番目 AM2 の中古を買った。むろんもう不要になった有線イヤフォンを売って、実際の支払いはほとんど無かった。Walkman を選んだのは LDAC の本家だからというのが一つある。AM2+TONALITEの音にも満足している。

 それにしても聴くべきものが増えてしまってどうしようもない。また聴けてしまう。聴けてしまうのは恐しいことである。昔は音源、すなわちCDなりLPなりの物理的メディアが手に入らなけば、そこで諦めがついた。他に方向転換できた。今は聴けてしまうから聴く。それだけ時間がとられる。次々に出てくるものをどんどん聴いてしまう。優先順位をつけてもそれを守ることがひどく難しい。(ゆ)

 final TONALITE を使いだして1か月経った。この年末年始を含む1か月は TONALITE に始まり、TONALITE に終る日々だった。



 他の追随を許さない画期的で突出した製品やサーヴィスはゲーム・チェンジャーと呼ばれるが、TONALITE はあたしにとってワールド・チェンジャーとなった。オーディオの世界が百八十度変わってしまった。というよりはこれまで世界だと思っていたものが平面で、TONALITE によってそこから垂直に上へ飛びだしたけしきだ。

 こういう世界の変わり方を味わったのは遠い昔、CDウォークマンを買って音楽を外に持ちだした時以来だ。あの時は音楽がスピーカーから解放された。音楽を聴くにはスピーカーの前に座らなければならなかったのが、どこでも聴けるとわかったのだ。それまではスピーカーの前に座る必要があることすら意識していなかった。そこから解放されて初めて、実は縛りつけられていたことが明らかになった。

 いざ解放されてみると、目に映る景色によって音楽の聴こえ方が変わるし、目にする景観も聴こえる音楽によって変わる。それ自体がまったく新しい体験だったが、それ以上に、音楽はどこでどんな形で聴いてもいいのだ、むしろそうしてこそ発見できるものがある、音楽の別の位相が聞えてくる、ということを教えられた。わかってみればあたりまえのことなのだが、ウォークマンとヘッドフォンが出現するまでは、そしてそれを自分で体験するまではまったく思いもよらないことだった。

 イヤフォン、ヘッドフォンの無線化のため、本体にアンプとチップが入った。チップはDACとDSPを担う。スピーカーで言えばDACやDSPとアンプの入ったアクティヴ・スピーカーに相当する。プロのモニタ用アクティヴ・スピーカーでは、部屋の特性を測って出音をこれに合わせる機能はデフォルトになっている。無線のイヤフォン、ヘッドフォンでは音が出るのは部屋ではなく、個人の耳だから個々の耳に合わせるパーソナライズが可能になった。すでにいくつかの製品が出ていて、いずれも耳を計測し、それに出音を合わせる手法だ。

 TONALITE はTWSによって史上初めて可能になった出音のパーソナライズをもう一段深化させた。イヤフォンの聞こえ方のパーソナライズではなく、個人の聞こえ方全体をシミュレーションしてイヤフォンの出音をそれに合わせる。耳の中だけからイヤフォンを開放した。

 すると聞えてくる音は現在のテクノロジーに可能なかぎり、イヤフォンをつけていない状態で理想の空間つまり部屋で聴いているものに近くなる。この理想の空間というのがミソだ。TONALITE があれば、いつでもどこでも理想の空間で聴ける。

 これは従来のオーディオ製品の作り方とは対極にある手法だ。従来のオーディオ製品はイヤフォンに限らず、スピーカー、アンプ、プレーヤーすべて、それを作った人たちが「良い音」と考える音を出すように作られている。作り手はこれがあなたにとっても良い音でしょうと提案している。ユーザーはその中からなるほど「良い音」だと共感できるもの、自分の音の嗜好に最も近いと感じられるものを選ぶ。選んでいるつもりなのだが、自分の嗜好を自分で的確に把握するのは至難の技だ。まずたいていの場合、他人の言うことに左右される。評論家やショップ、メーカー自身、あるいはネット上のインフルエンサーの言うことに簡単に左右される。値札の数字にも左右される。さもなければ、単純に音が変わるだけで良くなったように感じてしまうこともある。

 いずれにしても、従来のオーディオ製品は少々大袈裟に言えば、帯に短かし、襷に長し、というやつだった。自分が好きな、と自分では思いこんでいる音に、ぴったり同じにならないことは覚悟の上だった。オーディオ製品には限界があるものだ。ここまで望む音に近ければ、これだけの金額を出してもいい。言ってしまえば妥協の産物である。TONALITE にはその限界が無い。

 TONALITE はそれ自体として他よりも音が良いですとは言わない。作る基準、製品のめざすところがまったく違うからだ。従来の基準に照らしても高い水準の製品ではあるが、それが目標ではない。メーカーは製品それだけで「音の良い」ものを作ろうとしていない。むしろ、従来言われている意味で「他よりも良い音」というのは存在しないと言っている。あるのはユーザー/リスナー各々に合っている音か、はずれている音だけだ。リスナー個人に合えば、それがリスナーにとって良い音どころかベスト、最適の音になる。合っているかどうかの判断は、簡単にゆらいでしまう主観によらない。その人の体の形という客観的データによる。リスナー側から言えば、オーディオ製品としてより良い音よりも、聴いてより気持ちの良い音になる。

 CDウォークマンによってあたしにとって音楽がスピーカーから解放された。TONALITE によって音楽がオーディオ製品の限界から解放された。実現した「理想の空間」で音楽を聴く世界に棲んで1か月。どう変わったかのポイントをあげてみる。

 まず、音楽を聴く時間が増えた。気がつくと TONALITE に手が伸びて聴いている。これまではまったく音楽を聴かない日も結構あったのだが、ほぼ毎日、最低でも1時間は聴いている。たいていは1日の限度として設定している3時間に近い。TONALITE は音楽を聴きたくなるようにそそのかすらしい。しかもより音楽に集中させる。初めて名前を聞くこの人はどんな音楽をやっているのかと、ちょっと聴いてみるつもりが、そのまま引きこまれて聴きつづけることが増えた。聴くのをやめたくなくなるからだ。

 TONALITE の音が基準になった。自分に最適の音であることは、メーカーから言われなくてもわかる。聞えてくる音がいかにも自然なのだ。ひどく曖昧な表現だが、今は他により適切な言葉を思いつかない。聞こえている音のどこにも無理がない。聴くことが快感になる。いつまでも聴ける。ミュージシャンがこう聞こえてほしいと意図した音が聞えるというのはオーディオ製品の宣伝文句の一つだが、まさにそういう音だと思える。実際にそうかどうか、確かめる術はないが、たとえば故意に歪ませた音は、ああこれは故意に歪ませているのだな、とわかる。どうしてわかるのか、自分でもわからないが、そう思える。

 あいかわらず、次々に出る新製品への関心は一向に湧かないが、手持ちのイヤフォンとあらためて聴き比べを始めた。何といっても買った当初は気に入って買ったのだし、まったく捨てて顧ないというのもしのびない。それに、基準としての TONALITE と比べると、各々の性格が明瞭にもなる。

 当初は、一度にいくつもの機種を次々に聴いたが、今回は1日1機種として、より時間をかけている。TONALITE と比べてみるとどれもどこかが歪んでいる。歪むというのは強すぎるとすれば、ずれている。高域がやたら派手だったり、低音が大きかったり、ヴォーカルが近すぎたり、配置がおかしかったり、どこかが TONALITE で聞える音からはずれている。そのイヤフォンだけを聴いていたときはそんなことは感じない。聴き比べではまず対象のイヤフォンで聴く。もともとこの音は好きだと思って買ったものなのだから、ああ、いい音だなあ、バランスもとれている、と聞える。TONALITE に替える。すると、まずはぐっとおちつく。いい音だなあ、と感じる前に、気分がおちついて意識せずに音楽に向きあっている。そして聞えてくる音に比べると、さっきの音はやけにギターが響きすぎだったな、とか、音のテクスチュアがざらついていたな、とか思いだされてくる。TONALITE で聞えるこの音が本来入っている音だと思えてくる。根拠がないといえば根拠はない。しかし、これが本来の音だという感覚はリアルでゆらぐことがない。比較対象のイヤフォンを買った理由、基準は結局バラバラだったとわかる。いや、基準などはなくて、あれも好き、これも好きと買っていただけだった。まあ、ごく大雑把にこういう傾向の音が好きなんだなというのはわかる。

 これまでは無線はまだまだだと思っていた。ZE8000 も両方買ったし、AirPods Pro 3 を TONALITE の前に買っていたから、無線の音が相当なところまで来ていることは認識していたが、まだまだ有線だよ、と思っていた。ケーブル替えて遊べないじゃないかとも思っていた。TONALITE のせいで Bluetooth に関心が湧いた。そうしてみるとソースの機器によって音が違うことにも気がついた。iPhone SE3、iPad mini 6、そして M4チップの入った MacBook Pro で、明らかに音が違う。この順番で良くなる。メインの DAP の HiBy RS2 は無線を潔く捨てているので TONALITE は使えない。その前にメインだった FiiO M11Pro で聴いてみる。いいですねえ。MacBook Pro と比べてみる。あれえ、やっぱり明らかに音が違う。M11Pro の方が貧相に聞える。こりゃ、面白い。どこが違うんだ。MacBook Pro は Bluetooth の Ver. 5.3。M11Pro は 4.2。ウィキペディアではヴァージョンが上がったからといって音が良くなることはない、とあるが、どうなんだろう。もっとハードウェア的な要因なのか。

 TONALITE のこれからを想像してみる。というよりも DTAS のこれからだろうか。

 まずはヘッドフォン。今年中にはと期待。やはり4万くらいだと嬉しいが、TONALITE と同額はないだろうなあ。

 イヤフォンのドライバーによってやはり音は変わるのだろうか。final はハイブリッドはやらないが、MEMS や BA を使ったのを聴いてみたい。

 WiFi のサポート。先日 HiFiMAN がやったように、Bluetooth に加えて WiFi が使えるようにならないだろうか。

 DTAS はイヤフォンやヘッドフォンの中に入れなければならないということもないんではないか。つまり DAC/amp として、ドングルとかポータブル・アンプのサイズにならないか。それを通すと、他社のイヤフォン、たとえば AirPods Pro 3 にDTASをかけるとかできる、というのはどうだろう。そんなもの要らないかなあ。

 パーソナライズはTWSのトレンドの一つで、各社独自の方式を出している。TONALITE は今のところぶっちぎりで深く、精度も高く、従来のものとは異次元だ。DTAS に使われているソフトウェアは永年の研究の成果だろうから、そう簡単に他社が追随できるとも思えないが、デジタル技術の展開は文字通り日進月歩だ。DTAS も使っているのだろうが、AI を利用した、さらに画期的な方式が出てくることはありえる。

 この点はイヤフォンに限らず、オーディオ製品に限らず、資本主義システムによる大量生産品はすべて関わってくる。つまり、世の中で売られているモノは、すべてメーカー側からの提案なのだ。完成品であって、ユーザーが各々の使用環境、方法、習慣、癖、体のカタチとサイズに合わせてどこかを変えることはできない。パーソナライズはできない。せいぜいが完成品を組合わせて、できるかぎり使いやすいようにするだけだ。

 TONALITE は完成品ではない。ユーザーが DTAS によってパーソナライズして初めて完成する。パーソナライズが前提として組込まれている。個人の体験がすべてというイヤフォンでこういう製品が生まれたのは必然であるようにも思える。とまれ、他社もより高度なパーソナライズを追求するはずだ。

 ひょっとすると TONALITE は、パーソナライズ可能な大量生産品の先駆けになるのかもしれない。

 ということまで妄想してしまうのが TONALITE だ。ドライバーはダイナミック。ということはエージングが進めばもっと気持ち良い音になるだろう。3ヶ月後、半年後、1年後にどういうことになっているか。世界はぐらぐらしているが、この行方は確かめたい。(ゆ)

0216日・水

 Tidal Master 音源がどう聞えるか、各種設定でチェック。

イ。AirPlay M11Pro に飛ばし、DSD変換で聴く。

ロ。有線で DenAmp

ハ。有線で hip-dac

ニ。Bluemini R2R で無線。

 Bluemini R2R を試すためもあり、ヘッドフォンは当然 HE-R9。有線は3.5mm のシングルエンド。

 結果はこの順番の逆に音がいい。MQA レンダラーを備えた hip-dac の音がいいのは当然だが、Bluemini R2R は正直驚いた。しかも単に音がいいだけでなく、愉しく聴かせる。有線に比べると、人工的に作っている感覚が、ごくわずかながら滲む。プラシーボかもしれないが、無いことにはできない。しかし、それが気にならない。むしろ、実にうまく演出している。final ZE3000 が、無線にするためにアンプを備えていることで、上流の条件に左右されない音質を保っていることが指摘されていた。そのことにも通じる。つまり、最終的な音は Bluemini R2R で作られていて、それが直接ヘッドフォンに入る。音の鮮度が高い。そして、そこで理想とされている音の素姓がいい。まっとうな、生演奏をベストとし、それに近づける努力がなされた音だ。うーん、HiFiMAN、恐るべし。Edition XS にこれが使えるとはどこにも書いてないのだが、こうなると、Bluemini R2R が使えることは、HiFiMAN のヘッドフォンの場合、必須になってくる。

 一方、Himalaya DAC を備えた外付の、汎用の DAC/amp も気になる。



##本日のグレイトフル・デッド

 0216日には1982年と88年の2本のショウをしている。公式リリースは無し。


1. 1982 Warfield Theatre, San Francisco, CA

 このヴェニュー2日連続の初日。この年最初のショウ。25ドル。開演8時。ここから21日までサンディエゴ、ロサンゼルスと回る。

 1982年のショウは計61本とやや減り、レパートリィは110曲。新曲としてはまず〈Touch of Grey〉。5年後、《In The Dark》に収録、シングルカットされて、デッドにとって最初で最後のトップ10ヒットとなる曲だが、ニコラス・メリウェザーによれば、元来ガルシアのつもりではコカインから覚めた後の宿酔の感覚を歌ったもの。歌詞はデッド演奏のものと、ハンター演奏のもので複数のヴァージョンがある。

 ハンター&ガルシアは〈West L. A. Fadeaway〉〈Keep Your Day Job〉も投げ入れる。後者はデッドヘッドの反発でレパートリィからとりさげられた。

 バーロゥ&ウィアは〈Throwing Stone〉を披露し、以後、定番となる。


2. 1988 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA

 このヴェニュー7本連続の3本目。ドクター・ジョン前座。開演7時。

 この年、デッドは働いている。4回のツアーで全米を回り、20の州で80本のショウを行う。チケット販売数は130万枚。2,860万ドルを稼いで、アメリカで4位となる。レパートリィは131曲。新曲で最も目立つのはウィアが Gerrit Graham と共作した〈Victim or the Crime〉。後に荘厳な曲となって、最後まで演奏された。

 ハンター&ガルシアは〈Foolish Heart〉〈Believe It Or Not〉〈Built To Last〉を発表するが、最初のものを除いて、早々にレパートリィから落ちる。

 ミドランドはバーロゥと組んで〈Blow Away〉〈Gentlemen, Start Your Engines〉を書き、単独で娘のための子守唄〈I Will Take You Home〉を書く。ミドランドの在生中はどれも定期的に演奏された。

 歌の話題としては0903日、メリーランド州ランドーヴァーで突如7年ぶり、そして最後に〈Ripple〉が演奏された。1970年にデビューし、誰もが認める名曲にもかかわらず、わずか41回しか演奏されず、デッドヘッドたちが最も生で聴きたい曲の一つになっていた。この時の演奏は、病で死の床にあったデッドヘッドからのリクエストによる。(ゆ)


 FiiO MP11Pro には THX と並んでもう一つほかには無いメリットがあることを発見した。AirPlay だ。DAP で AirPlay に対応しているのは、どういうわけか FiiO 製品だけなのは興味深い。


 

 AirPlay を使うとどうなるか。

 Mac または iOS 機器のオーディオ出力をロスレスで無線で飛ばし、M11Pro で DSD 変換して聴けるのだ。youtube も spotify も Apple Music も soundcloud も Bandcamp も、とにかくオーディオで音が出るものはすべて DSD で聴けるのだ。MP11Pro には MQA のフルデコードも入っている。TIDAL の master クラスに対応し、これまた DSD で聴ける。

 Apple Music は M11Pro にインストールはできるが、あたしの場合、サインインができない。Bandcamp のアプリはインストール、サインインできた。

 音はどうかって? 有線と比べてみた。hip-dac と RME ADI-2 DACの2機種。まったく遜色が無い。前者にはMQAもあるが、出音は M11Pro の方が上だ。THX アンプのおかげだろう。後者では MQA の恩恵がない。

 そして無線の便利さ。USB ポートは少しずれてもすぐ外れる。iDefender などかますとさらに外れやすくなる。その都度つなぎなおし、出力の設定をやりなおさねばならない。どのケーブルを使うか、気を使う必要も無い。敢えて言えば音の良い WiFi のルーターを選ぶことか。そんなものがあればだが。もっとも古い iPad Mini 4 より iPhone 8 から飛ばした方が音が良かったりする。

 WiFi の届く範囲なら DAP を持って移動もできる。歩きながらでも、竹踏みしながらでも聴ける。なるほど、皆さん、ワイヤレスに行くわけだ。

 正直、AirPlay はどういうメリットがあるのか、さっぱりわからなかったのだが、ようやく納得がいった。いやあ、Apple エライ。ウィンドウズでは DNLA がこれに相当することになるのか。

 将来もしスピーカーを買うにしても、AirPlay 2 対応が必須になってくる。ということは、アクティヴで、DAC 入りになる。今なら KEF の LS50 Wireless II とかだ。Airpulse は残念ながら対応していない。

 ただし、Mac 用オーディオ・プレーヤーでも AirPlay をサポートしていないものもある。やや古い Decibel や Colibri はしていない。Colibri はサポートするべく、全面的に書き換え中とサイトにある。Pine Player はOK。Audirvana はサポートしている。JRiver Media Center は不明。

 もっとも、1曲だけ聴く分には Finder で再生するのが最も手取り早く、音も良い。クィックルックすると操作もできる。

 そうそう、AirPlay のメリットはもう一つ、あるんだよ。

 Mac のポートの数が少なくてすむのだ。ということは安くすむ。Mac からオーディオを出すためにわざわざ Thunderbolt 3 x 4ポートの MacBook Pro を選んでいたが、そんな必要も無い。2ポートで充分だ。まだ繋ぐ必要があるのは CD のリッピングだけだ。これも最近は Bandcamp で買うことが増えて、リッピングする頻度は以前の半分以下だ。それに今は iOS 機器に無線でリッピングすることも可能だ。音はやってみないとわからないが、WiFi だから AirPlay と同じレベルではあるだろう。しかし不思議なことに macOS 機器と無線でつながる外付 DVD プレーヤーは無いようだ。

 こうなると、CHORD Hugo 2+2Go か iFi Pro iDSD が欲しくなる。AirPlay に対応している DAC は今のところこの2つだけ。前者には MQA が無い。後者はコンセントが要る。

 しかし、当分は M11Pro で楽しむ手もある。今年の年末にこれの後継機を楽しみにして。(ゆ)

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