クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:著作権ビジネス

    昨日は今月号の配信日でしたが、諸般の事情により、遅れます。23日火曜日には配信できるでしょう。乞うご容赦。


    著作権法改正案が国会で通りましたが、どうしても腑に落ちないところですねえ。今回の変更で、著作権所有者の承諾を得ないでネット上に公開された録音のダウンロードが法律違反となったところです。罰則はないものの、「犯罪人」とされることには変わりはありません。
   
    これって、殺人に包丁が使われることが多いので、包丁を購入する人間に殺人の罪を問え、という論法じゃないですか。
   
    なぜって、海賊盤、ブートレグのCDパッケージを買うことは犯罪ではないわけです。でも、その音源をネットからダウンロードすると犯罪になる。
   
    海賊盤制作は明確な違法行為で、その生産物にカネを払うのはいわば共犯でしょう。海賊盤とわかってて買うわけだから、普通。そちらは犯罪にならない。でも、ネットからタダでいただくと犯罪になる。
   
    ワケワッカンネー、と思うのは編集部だけでしょうか。(ゆ)

今日は情報号の配信日ですが、諸般の事情により、配信は明日になります。不悪。


朝日にJASRACの歴史が簡単に紹介されてました。なかなか面白い。


    ボザールの本社に伺い、試作中の Jupity の後継機を視聴させてもらいました。ここの試聴室の写真、一番手前に映っている、胴の太いやつ。アンプ内蔵ではなく、Jupity 内蔵のアンプを改良したものがつながってました。

    未完成のせいか、はじめはよくわからなかったんですが、いろいろ聴いているうちに、すごさを実感。このサイズでこの音はひょっとして Yoshii 9 も超えたんじゃないか。Jupity に比べると、低域の伸びとふくらみがハンパではありません。ジム・ヒギンズのバゥロンが目の前で鳴ってます。Marsa Vahdat のバックで鳴っているアラブ系打楽器の、革をこする音のリアリティ。

    しかし、しかし、なんといってもすばらしいのはヴォーカルで、マーサ・ヴァーダットからアニー・エブレルからニーヴ・パースンズから、もうどんどん聴いてしまいます。そうそう、 シャナヒーの河原さん。

    このシャナヒーの録音の優秀さに、ボザールのエンジニアのKさんと顔を見合わせました。アイルランドはじめ海外のルーツ・ミュージックの優秀録音盤にまったくひけをとりません。それに比べると、喜多直毅&黒田京子の録音は、いかにも日本の録音。どこか紗がかかってます。音楽が鳴ってる媒体の透明度が低い。音楽そのものはすばらしいのに。リスナーにとって快い音と録音エンジニアが考えてる音が、ほんとうに快い音からずれてるんじゃないでしょうか。楽器が鳴っている生の音をそのまま伝えてくれれば、それで十分のはずなのに。ひょっとして、エンジニアが生の楽器の音を聴いたことがない、なんてありうるのか。

    日経の報道

    「ネットワーク音楽著作権連絡協議会」というのが、よくわかりません。サイトを見ても、2006年以降の活動実態がない。どうやら社団法人音楽電子事業協会が中心になっていたのかな。こちらは MIDI規格の管理団体のようですね。カラオケもからんでます。
   
    となると、これが YouTube その他、ネット上での利用にもかかわってくるのかはまだ不明。公取委の命令に関係あるのかもまだ不明。まあ、要注目、でしょう。
   
    新たな利権団体を生まなければいいんですが。あるいは既得権益を守ろうとするJASRACの「陰謀」か。

    各社報道してますが、ネット上で見るかぎり、朝日新聞が一番詳しいようです。

    問題点のまとめ方は毎日がうまく、日経、読売はおざなり。ITMedia と産経はJASRAC側の視点からも報道してます。
   
    ITMedia が引用してますが、公取委の命令書(PDF)は、図解も入っていて、かなりわかりやすく説明してます。お役所文書だろうと思ってたら、なかなかがんばってます。
   
    公取委の文書にざっと眼を通して興味を惹かれたのは、包括契約でないもうひとつの選択肢が個々の楽曲ごとの個別契約しかなく、しかもこちらの料金設定が格段に高く設定されているため、結局包括契約以外の選択肢が事実上無い、と指摘しているところ。ここは今後ポイントになるかも。つまり、包括契約でも契約形態が複数あって、他からの参入を名目だけでも許す選択肢が用意されていれば、「独占」ではない、と裁判所が判断する可能性もあるんじゃないか。
   
    たぶん最高裁までいくんでしょうが、JASRACの独占体制が今後もまったくゆるぎなく続くということはないでしょう。もっとも、この命令に違反しての罰則は過料50万円以下だそうですから、50万払ってあとは知らんぷり、も不可能ではないでしょうね。と思ったら、確定した命令に対する違反では、法人の場合、最大3億円だそうで、さすがのJASRACでも、やはりそう簡単に罰金払って知らんぷりはできないかな。
   
    それにしても報道で見るかぎり、JASRACの反発の強さは意外です。もうちょっとうまく立ちまわって、お説ごもっとも、改めるべきところは改めます、とか言っておいて、放送局側と新たな形の契約交渉をおこなうふりをして実をとる、くらいのことはやるだろうと予想していたんですが、こう真っ向から反発するということは、やはり裏に隠しておいたつもりの「真の意図」をずばり突かれたのかしらん。
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    この「対談:デジタル著作権ってどうなってるの?(後編)」での石井氏の、特に最後の指摘にはまったく同感。「情報が媒体から解放された」とはまったく言いえて妙です。

    この観点から見ると、レコード業界はすでにビジネス・モデルが崩壊しているわけです。この対談・後篇がCDを見限ったマドンナの例から始まっているのは示唆的でしょう。もっとも業界もCDを見限ってアナログ盤にもどろうとする動きもありますが。でも、リスナーがどこまでついてくるかな。やはり話が後ろ向きですなあ。

    活字の世界は音楽に比べるとまだデジタル化が進んでいないし、紙という媒体と情報の親和性も音楽とCDの間よりもはるかに強いと思いますが、それでも媒体からの情報の独立は確実に進むはず。先日のグーグルの「全文検索問題」はそのきっかけになるんじゃないでしょうか。
   
    いずれにしても、「使いやすくて柔軟な DRM」が、当面、最も求められるものになるのかな。(ゆ)

    ちょいとおもしろいニュース

    ユーザ、つまり読者の側からすると、これは良いことである。この弁護士さんの言うとおり、「死蔵」されるよりも、どんどん検索・利用させてもらう方が、本も喜ぶというものだ。横断検索することで、従来考えられなかった発見もされるだろう。

    著作権料の徴収・支払いの体制もアメリカ主導で進むとすれば、ひょっとするとわが国の既存体制に風穴が穿く可能性も出てくるかもしれない。
   
    絶版本をアメリカに送って、検索対象にしてもらう、なんていう運動ないし商売はどうだろう。復刊希望を集めるよりもてっとり早く、中身が読めるようになるはずだ。「アメリカ国内」というのが、軍基地も含まれるならば、わざわざ本土にまで送る必要すらない。
   
    なかには、おれの、わたしの本は、絶対にそんなものの対象にはさせぬ、と頑張る著作権者がいてもいい。それはそれで貴重な存在になるかもしれない。世界のすべてがグーグルの傘下に入ることは問題だ。


2009-02-25 追記
    読売新聞も報道。

    こちらの方が内容がくわしい。全文検索は今のところアメリカ国内からしか利用できないらしい。
   
    三田誠広はあいかわらず後ろ向きのことを言ってますが、日本語の新刊がアメリカ国内でそんなにたくさん読まれると本当に信じているのかしらん。本当に読まれるくらいなら、もっと日本語の本が売れてもいいだろうし、翻訳もされるだろうに。タダで読めるようになれば、アメリカ人が急に日本語に興味をもつとか、読めるようになるとか言うんじゃないでしょうな。グーグルは著作権者には使用料を払うといってるんだから、そのまともな分配方法を確立するほうがよっぽど著作権者の利益になるはず。
   
    もっとも、この全文検索サービスもいずれは全世界に拡大はされるでしょう。その時のことを心配しているのかもしれんが、このネット時代、中身も見せないでソフトを売ろうという商売はもう不可能じゃないですか。ひと足先にネット販売が本格化しているAVソフトのほうでは、フリーのサンプルを視聴可能にするのはあたりまえになってる。
   
    時代錯誤のケチなことをしてると、日本語の本なんて誰も読まなくなるぜ。


2009-02-27 追記
    CNET Japan が「日本書籍出版協会、グーグル書籍検索問題に関して解説と翻訳文をサイトに掲載」として、さらに詳しい内容を報道してます。
   
    著作権者がとりうる選択肢として五つあげられてますが、実質的にはグーグルの検索対象になることを承諾するかどうか、でしょう。
   
    そして現状では、グーグルの検索対象に入らないことは、ネット上では存在しないことになります。それが良いか悪いかはまた別ですが、現状がそうなっていることは、認めざるをえません。ネット上で存在が認められなくても、小説などはかまわないでしょうが、その他のノンフィクションや各種の記録、資料、史料、学術関連、リファレンス等々では致命的です。結局、「ノー」と言えるのは、エンタメ系を中心とした一部のフィクションに限られるんじゃないでしょうか。
   
    もうひとつ、この騒ぎは「情報が媒体から解放」されたための余波のひとつでもあります。媒体から解放された情報の前には、国境は溶解してしまうんですね。著作権自体は昔からあるわけですが、その使われ方が劇的に変化している。そのことに著作権者側がついていけていない。この変化は今後どんどん進みこそすれ、後退することはないので、著作権者が意識を変えてゆくしかない。この「世界恐慌」でも、むしろ変化の速度が早まるかもしれません。

    包括契約はユーザ、すなわち放送局や MySpace などのサービス提供者側にもメリットがあるから、廃止は無理で、そのことは公取委もわかってるでしょう。とすると、この命令の意図は何なんでしょうね。注目してるぞ、という警告かな。
http://blog.livedoor.jp/yosoys/archives/51192741.html

後刻
    各社報道してますが、読売が一番詳しいようです。排除命令の中身にまで踏みこんでます。

 昨日は本誌の配信予定日でしたが、諸般の事情で遅れ、23日を予定しています。毎度のことながら、乞うご容赦。


 おまけ、といっては失礼かもしれないくらい大事なニュース
 文部科学相の諮問機関である文化審議会は、著作権の保護期間を現行50年から70年に延長する件を、当面見送ることを決めたそうです。

 欧米では70年になっている、というのが延長推進側の論拠ですが、ありていに言ってあれは個人の著作権者の保護というよりは、ディズニーのような著作権ビジネス企業の儲けのタネを確保するためのもので、ミッキーマウスの著作権が切れる頃に延長されるのでありましょう。

 だいたい法律ってのは、改正される時には、改正された時点より遡って適用されることはない、てのがふつうだと思いますが、著作権保護期間の延長についてはそうではない、というのがどうも腑に落ちません。

 つまり万が一保護期間が延長されると、その時点で保護されている著作物ぜんぶの保護期間が延長される、てことになるらしい。遡って適用されることがないという原則に従えば、法律の改正以前に発表された、すなわち著作権が発生した著作物については、保護期間の延長は適用されないというのが本来ではないですかねえ。

 法律の改正以降に発表された著作物については70年でも100年でも保護される、というのはわかります。保護期間が切れるまで著作物そのものが残っていれば、の話ですが。

 余談だけど、そのうち、本体がないのに著作権だけは記録が残っていて、この幽霊著作権が金儲けの対象になる、なんてことも起きそうですな。幽霊著作権に合わせて「本体」をでっち上げる仕事をする人間も現れるかもしれません。これぞ真の「ゴースト・ライター」。(ゆ)

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