昨年11月ひと月かけてリリースされたグレイトフル・デッドの《30 Days Of Dead》を年代を遡りながら聴く企画、今回は24日リリース、1976-09-27, Community War Memorial Auditorium, Rochester, NY からの〈Might As Well; Samson and Delilah〉です。第二部オープナーからの2曲。このショウからはこの後、drums の直後〈The Other One〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされています。開演夜7時半。料金7ドルのチケットが殘っています。
1976年は06月03日に、1974年10月20日以来、1年7カ月ぶりにツアーに復帰します。この年のツアーは06月07月と09月10月の2回、ショウは41本、レパートリィは66曲。新曲はバーロゥ&ウィアの〈Lazy Lightening〉と〈Supplication〉のペア、ハンター&ガルシアの〈Might As Well〉と〈Mission in the Rain〉。そしてレヴェレンド・ゲイリー・デイヴィスのカヴァー〈Samson And Delilah〉。〈Mission in the Rain〉はデッドでは5回演奏されただけで、ガルシアのソロ・プロジェクト専用の曲になります。こういう曲は他にもあり、例えば〈Ripple〉が同じく、デッドからジェリィ・ガルシア・バンドに移っています。
〈Might As Well; Samson and Delilah〉はどちらもバネのよく効いたビートにのった闊達な演奏。全員が溌剌としていて、大休止の効果は明らかです。このメンバーでまた演奏できる愉しさにあふれています。
こうして並べて聴くと、この二つは片方が片方の霊感の元になったように聞えます。どちらかといえばガルシアの曲がウィアに後者を持ち出すきっかけを与えた気がします。
次の〈Help on the Way〉からクローザーの〈Around and Around〉までひと続きです。〈Help on the Way〉は〈Slipknot!> Franklin's Tower〉と続くのが通例ですが、ここでは〈Slipknot!〉の次に drums>〈The Other One> Wharf Rat〉がはさまって〈Slipknot!〉に戻り、〈Franklin's Tower〉でまとめて、クローザーにつなぎます。〈Slipknot!〉から直接〈Franklin's Tower〉につながないのはこの年の特徴といわれますが、こういう尋常でないことをする時は調子が良く、この日もエネルギーに満ちた、見事な演奏です。
drums はもちろんですが、〈Help on the Way〉のコーダに顕著なように、再びダブル・ドラムスになったメリットがよくわかります。ようやく全員揃ったという思いもこの演奏の質を押し上げているかもしれません。〈Slipknot!〉は特定のメロディに依存しない、フリーの集団即興=ジャムの曲で、かつての〈Caution (Do Not Stop On Tracks)〉に通じるところもありますが、ずっと洗練されていて、複雑になっています。このヴァージョンは緊張感漲るなかに、目一杯愉しんでもいて、デッドを聴く醍醐味ここにあり。drums>〈The Other One> Wharf Rat〉もテンションは落ちませんが、また〈Slipknot!〉にもどるところはスリリングです。〈Franklin's Tower〉では途中でやや息切れしたようでもありますが、それでも演奏をやめたくない様子も伺えます。このあたりが1976年で、翌年になると充実した演奏をショウの最初から最後まで貫いて維持するようになります。
アンコールの〈U.S. Blues〉はゆったりしたテンポで、やはりこれを歌えるのが愉しくてたまらないのがありありとわかります。かくて、十二分の休養をとり、大休止前に抱えていた様々の問題をとりあえず精算して、音楽に集中する体制を整えることができたデッドは、キャリアの頂点を迎えることになります。(ゆ)