昨年11月ひと月かけてリリースされた《30 Days Of Dead》を年代順に遡って聴く試み。20日リリースの 1980-05-31, Metropolitan Sports Center, Bloomington, MN からクローザーへ向けての3曲のメドレー〈I Need A Miracle> Bertha> Sugar Magnolia〉です。ショウは04月28日アラバマ州バーミンガムから始まった春のツアー後半の3本目。この後半は6月中旬、アンカレッジでの三連荘で打上げます。
1980年は01月13日にカンボディア難民支援のチャリティ・イベントに参加しただけで、始動は遅く、03月31日ニュー・ジャージー州パサーイクから。ショウの総数は86本。レパートリィは103曲。新曲はミドランドの〈Far from Home〉とバーロゥ&ウィアの〈Feel like a Stranger〉。どちらもこの年04月にリリースの新譜《Go To Heaven》収録。
このツアーの後、07月01日のサンディエゴを終えて1ヶ月半の夏休みに入りますが、その23日、キース・ガチョーが交通事故で死亡します。ピグペン、キース、ブレント・ミドランド、ヴィンス・ウェルニクの4人のデッドの鍵盤奏者はいずれも悲劇的な死に方をしています。
秋にはサンフランシスコのウォーフィールド・シアター、ニューヨークのラジオシティ・ミュージック・ホールで長期レジデンス公演をします。この時は第一部がアコースティック・セット、第二部以降がエレクトリック・セットという構成でした。デッドが集中的にアコースティック・セットを演奏したのは1970年頃以来で、これが最後。ここからは《Reckoning》《Dead Set》というライヴ・アルバムがリリースされました。ライヴ音源を聴くかぎり、デッドはアコースティック・アンサンブルとしても一級で、こういう演奏をもっと聴きたかったものです。
このショウは第二部だけ SBD があります。
オープナーの〈Feel Like A Stranger〉は2ヶ月前にデビューして、これが16回目の演奏ですが、ミドランドのキーボードとコーラスの効果は歴然。ガルシアのギターもこれに感応しています。
一度終って〈Ship of Fools〉。歌の裏のミドランドの電子ピアノが美味。ガルシア力唱。とはいっても、力みがないのがこの人の身上。
やはり一度終って〈Last Sailor〉からは今回リリースされたクローザー〈Sugar Magnolia〉までノンストップ。〈Last Sailor〉は前年夏のデビューで、まだ新しい曲。1986年まではこの曲の後には〈Saint Of Circumstance〉が続きます。この二つは組曲になっていますが、さらに後者自体が少なくとも二つのパートに別れる組曲なので、ペアで演奏すると3曲の組曲に聞えます。このショウでは、後者の後半はまったく曲から離れた集団即興=ジャムになります。必然性は見えないけれど、聴いている分にはまことに面白いこの現象もデッドならではです。
続くは〈Wharf Rat〉。やや闊達な演奏ですが、ガルシアのヴォーカルはむしろ抑え気味。ここではガルシアは歌っている間、ギターをほとんど弾きません。このヴァージョンはパート3でがらりと雰囲気が変わります。パート3が晴れやかな気分になるのはいつものことではありますが、ここはその切替えが大きい。ガルシアのギターは歌とは裏腹に緊張感が強い。
イントロからベースのリフが入って〈The Other One〉。始まって間もなく少しの間 AUD になり、また SBD に戻ります。ここにアップされているのは Charlie Miller によるマスターなので、ミラーによる作業でしょう。演奏はいいです。間奏でのガルシアのギターは「ロック」してます。2番の歌詞の後、ガルシアがフリーの即興を続け、他のメンバーは小さな音でこれに反応します。しばし即興を続けてからガルシアも音を絞り、ドラマーたちに讓ります。
Drums ではまず〈The Other One〉後半では沈黙していたクロイツマンがひとしきり叩いてから、ハートが加わって対話。一度終ってからハートが何やらドラム系ではない打楽器を叩きだし、しばらくしてガルシアがギターでメロディのない音数の少ないフレーズを弾きだして〈Space〉。
〈Space〉からの曲が今回リリースされた〈I Need a Miracle〉。以下〈Sugar Magnolia〉までほぼ同じテンポ、アップビートな曲で軽快に駆けぬけます。前半はどちらかというとヘヴィに打ちこんできますが、後半は軽やか。この軽やかな〈Sugar Magnolia〉はいいなあ。
このショウはダブル・アンコールで、一つ目が〈U. S. Blues〉、二つ目が〈Brokedown Palace〉。
〈U. S. Blues〉は第二部後半の軽やかに弾む感覚が続いてます。ウィアがスライド・ギターでおいしいフレーズを連発します。とてもアンコールではないです。
〈Brokedown Palace〉は再び AUD。音の良い AUD で、コーラスをきれいに捉えてます。これも明るく開放的な演奏。
1980年代前半はこれまで公式リリースが少ないですが、こういうショウがあるんですねえ。(ゆ)