グレイトフル・デッドの公式サイト Dead.net で昨年11月1ヶ月かけてリリースされた《30 Days Of Dead》のうち、25日リリースの 1983-09-04, Park West Ski Area, Park City, UT から〈Tennessee Jed; My Brother Esau; Althea〉の3曲。第一部全10曲中5〜8曲目。連続してはおらず、曲はそれぞれ一度終ります。
ショウは08月20日パロ・アルトから始まる秋のツアーの一環。このショウの前はアイダホ州ボイジー、次はデンヴァー郊外のレッド・ロックス・アンフィシアターでの三連荘。ツアーは09月13日オースティンまで。ボイジーでのショウは《Dave's Picks, Vol. 27》で全体がリリースされました。
場所はソルトレイク・シティの東へ20キロほど、山を一つ越えたところにあるリゾート。高い山の中の谷間で、かなり寒かったようです。この地域の山岳地帯は雪質が良いといいうのでスキーヤーに人気がある由。
また、ユタ州はアルコール販売の規制が厳しいところで、いつもは会場でふんだんに売られるビールの売り場もほぼ1ヶ所、それも 3.2 beer と呼ばれるアルコール度数の弱いものだったそうな。
1983年のショウの数は66本、レパートリィは110曲。新曲はバーロゥ&ウィアの〈My Brother Esau〉〈Hell in a Bucket〉、それにウィアの〈Little Star〉、そしてミドランドの〈Maybe You Know〉。後の二つは短期間でレパートリィから消えますが、前の二つはもっと長もちし、とりわけ〈Hell in a Bucket〉は最後まで演奏されました。
この年のできごととして後々巨大な影響を与えたのがチケットの通信販売の導入です。デッドヘッドたちが社会に出、9時5時の仕事について、チケットを買うために長時間昼間並ぶことなどできなくなった人たちも増えていました。そうしたファンにチケットを買いやすくするためにマネージャーのダニィ・リフキンが考案したのが通信販売です。この年だけで25,000枚弱を売り、翌年には一気に5倍近くにふえ、1990年代には連年50万枚を売るまでになります。現在ではまったく当り前の販売方法ですが、これを始めたのもデッドでした。
このショウの SBD は流通していて、Internet Archives にもアップロードされており、ストリーミングで聴くことができます。
第一部のクローザーが〈China Cat Sunflower> I Know You Rider〉で、第二部のオープナーが〈Scarlet Begonias> Fire On The Mountain〉という、黄金の組合せだけでも聴きたくなり、また聴く価値のあるショウです。
ショウの最中、紫色の煙をひきながらパラシュートで会場に降りてきた人物がいたそうな。前もって仕組まれていたわけではないらしい。
オープナー〈Bertha〉の次がいつもならクローザーやアンコールになる〈The Promised Land〉というのは調子が良い徴です。続く〈Friend of the Devil〉〈Little Red Rooster〉もともに8分を超えるホットな演奏。ともにガルシア、ミドランド、ウィアが各々にすばらしいソロを展開します。
その次が今回の〈Tennessee Jed〉。ガルシアが気持ち良さそうに歌います。間奏のガルシアのギターの音がちょっと遠かったりしますが、演奏そのものの質は高いです。この曲ではたいていそうですが、ガルシアのソロは歌のメロディからはかけ離れます。〈Friend of the Devil〉では歌のメロディを展開することが多い印象です。
その次が今回の〈Tennessee Jed〉。ガルシアが気持ち良さそうに歌います。間奏のガルシアのギターの音がちょっと遠かったりしますが、演奏そのものの質は高いです。この曲ではたいていそうですが、ガルシアのソロは歌のメロディからはかけ離れます。〈Friend of the Devil〉では歌のメロディを展開することが多い印象です。
次の〈My Brother Esau〉は、まずリズム・セクションがわくわくしている様子で始めるのがお茶目。ガルシアのソロも含めて、バンド全体がぽんぽんと跳びはねてます。
〈Althea〉はガルシアのギター・リフに他のメンバーが合わせてスタート。これまたひどく意味のとりにくい歌詞の歌ですが、演奏もユーモラスなようでその実かなりダークでもあり、聴いていると落ちつかなくなります。ですが、その落ちつかない気分が快感にもなってくる。不思議な歌。くねくねとうねりながら気まぐれに動く明暗境界線を綱渡りして渡ってゆくような歌であり、演奏です。傑作の名演の一つ。
〈Hell In A Bucket〉はまずガルシアのギターがひとくさりイントロを奏でてから本体に突入。間奏のジャムは短かいですが、全体が浮きたつ瞬間がたまらない。
間髪入れずに〈China Cat Sunflower> I Know You Rider〉。ウィアが弾くいつものリフは音を節約しているようで、すぐにガルシアが歌いだします。わずかですが前に突込んだ演奏。個々の演奏はそんなに急いでいないのに、全体としてはせっかちに聞えます。どうなるのかとひやひやしていると、そのままテンションを保ってすばらしいジャムになってゆくのはスリル満点。〈I Know You Rider〉になるとむしろ普通のテンポに聞えるのも不思議。これで第一部をしめて休憩に入ります。
こりゃあ、すばらしいショウです。ぜひ全体を公式に出してほしいもの。(ゆ)