が発表になっている。
Locus 執筆陣はじめ、編集者、書評家、ブロガー、批評家など、主に読みのプロのグループ約40名の合意によるリストだ。900を超えるタイトルから、サイエンス・フィクション、ファンタジィ、ホラー各々の長篇、デビュー長篇、ヤング・アダルト長篇、短篇集、アンソロジー、ノンフィクション、画集・アートブック、それにノヴェラ、ノヴェレット、ショートストーリィの部門で、各々20〜30本(中短篇は合計で124本)のタイトルがリストアップされている。英語圏のSFFの昨年の収獲としてはまずこれが土台になる。発表もいつもこの時期で早いから、ヒューゴー、ネビュラの候補作もこのあたりが中心だ。
このリストは上記プロたちがそれぞれに出した推薦リストを擦り合わせたもので、当然、あれがない、これがないというものは多々ある。すでに最終候補が発表になっているフィリップ・K・ディック賞の候補6本のうち、ここにも入っているのは半分だけだ。
このリストは同時にローカス賞の候補作リストでもあり、読者の投票で受賞作が決まり、6月に発表になる。今やヒューゴー、ネビュラに並ぶ賞になってきた。投票数からいえば、おそらく Goodreads のものが一番多いのだろうが、あちらは人気投票でベストセラーに票が集まる傾向がある。
ざっと見て、中短篇のリストではオンライン・マガジンからのものが圧倒的なのはあいかわらずだ。今年のリストでは Beneath Ceaseless Sky と Uncanny Magazine の活躍が目につく。ここ2、3年、急速に内容を充実させてきていて、Lightspeed、Clarkesworld と「四強」になってきた観がある。もう一つ Tor.com もあるが、これは基本無料なので別枠。他の4つもネット上でタダで読めるが、定期購読ないし各号ごとに販売している。これからも質の高い、愉しい中短篇が読めるように、ちゃんと払うものは払いましょう。直接でなくても、アマゾン、Apple Bookstore、楽天 kobo ストアでも買える。
紙版からの三誌、Analog、F&SF、Asimov's の質がとりわけ落ちたとも思えないが、オンライン・マガジンは今の時代、やはり目につきやすいということだろうか。この三誌も今や紙よりも電子版での定期購読の方が多いそうだが、ネット上での存在感が薄いことは否めない。F&SF の編集長が Shere Renee Thomas に変わることがどう出るか。
あたしとしては中短篇にアリエット・ド・ボダールが4篇も入っているのは嬉しいが、ノヴェラ部門に2篇入っているのは、票が割れて、受賞には不利だろう。この2つはアリエットが書いている2つのシリーズ「シュヤ」と "Dominion of the Fallen" 各々に属するもので、どちらも優劣つけがたい。
1人で4篇をこのリストに送りこんでいるのはアリエットだけで、続くのは上記 Shere Renee Thomas と Usman T. Malik の各々3篇。アリエットの作品は玄人受けするところがあるとも言えよう。確かに Seven of Infinities などは、フランスの心理小説を読んでいる気分になるところもあって、英語圏SFFとしては珍しい部類かもしれない。
昨年のものとしてはあたしは Adrian Tchaikovsky の Firewalkers を大いに愉しんだので、長篇ないしノヴェラに出てこないのは不満ではあるが、この人はアリエットとは対照的で、いささかあざといところもあって、プロにはあまり評価されていない。ディック賞の候補になっている The Doors Of Eden もこちらのリストには無い。Firewalkers はそのあざとさが良い方に作用して、ラストのどんでん返しが見事に決まり、読後感の爽やかさは、近頃ちょっと珍しい部類。
このリストにもどれば、もちろんあたしなどはほとんど読んでいないので、よりどりみどりなのだが、とりあえずぱっと目についたアンソロジーの A Sinister Quartet を注文した。Mike Ashley, C.S.E. Cooney, Amanda J. McGee & Jessica P. Wick の4人のノヴェラを集めたもの。冒頭クーニィのは長篇の長さのもので、デビュー長篇のリストにも上がっている。Amazon の読者レヴューではクーニィの1作でも5倍の値段の価値があるとも言われているから、期待しよう。
ローカス賞投票締切は4月15日で、それまでにどれくらい読めるかなあ。(ゆ)