クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:70年代

 昨日は今年最初の Winds Cafe でした。

 昨年1月に続き、長門芳郎さんと川村恭子さんのコンビニよる、1970年代日本のロックと洋楽の蜜月をお宝音源と映像で探る企画。

 具体的には細野晴臣氏と Lovin' Spoonful を鍵として、この二つの交流を検証していったわけですが、個人的に発見だったのは、細野さんの音楽にニューオーリンズのセカンド・ラインの色と味が濃厚なこと。昨年のライヴでは、日本の若いザディコ・バンドと共演し、アンコールに〈ジャンバラヤ〉をうたったそうですが、単にリズムをもってきただけでなく、メロディ・ラインや歌詞にまでニューオーリンズがしみ込んでいて初めてあの味わいが生まれるのでしょう。細野さんがシンガーとして立派なのも、そのリズム感ないしビート感、具体的にはアクセントの置き方のうまさにあると思いました。

 Lovin' Spoonful では、最後のほうに出てきたウッディ・アレンの映画 "What's Up Tiger Lilly?" が面白い。60年代日本製B級スパイ・アクション映画を台詞の吹き換えと編集でまるで別の映画に仕立てたものだそうですが、その中にまったく唐突にラヴィン・スプーンフルの演奏シーンがほうりこまれていました。

 来月、02/17(日)の Winds Cafe 134 は、小生と2ヶ月連続登場の川村恭子さんとで、イングランド音楽の現在を聞いてみます。


 オマケで、iTunes 自動ローカライズ問題、つまりジャンル名を勝手に日本語に変えてしまう機能を解決するソフトがでています。Mac OS X 専用です。
Tune-up iTunes 7.6

 他にもシフトJISのタグ管理などもできるらしい。(ゆ)

ブラック・ホーク伝説表紙  音楽出版社からCDジャーナルムックの1冊として明日10/29発売です。
 B5判、160頁、定価1,905円+税。ISBN978-4-86171-035-3

 表紙のイラストは山下セイジ氏。ちなみに、右端の青年が抱えているレコードはニック・ドレイクの《FIVE LEAVES LEFT》。

 内容はまずこちらをどうぞ。

 細かいことは言いますまい。松平さんの「代表作」が活字で読めます。個人的にはボシィ・バンドの《OUT OF THE WIND, INTO THE SUN》のライナーがベスト。もっともこれは「すぎひらこれはる」名義なので、いつもの語り口とは様子が違います。むしろそれだけに、松平さんの詩人としての魂が爆発しています。

 「ブラック・ホークの選んだ99枚のレコード」の中のものも含めて、ぼくら(と言っていいと思う)はなによりも松平さんのこうした文章に導かれ、決定的な影響を受けていたのでした。店というハードウエアだけでは、「ブラック・ホーク」の影響力はありえなかった。松平維秋という「作家」、ソフトウェアがそこで動いていたからこそ、例えば「名盤探検隊」が生れ、「ブリティッシュ・トラッド」からアイリッシュのブームにつながり、そして、世紀が変わってからこういう本が生れたのです。

 この本で松平さんの文業の一端に触れ、もっと他のものも読みたくなった時には、こちらをどうぞ。ここには、およそ公に発表されたものが網羅されています。

 あれ、「すぎひらこれはる」名義のものが、一部抜けてるのかな。


 余談ですが、オーナーだった水上氏へのインタヴューの中で、「ブラック・ホークといえばトラッドという人がいる」趣旨の発言がありますが、巻末のエッセイで船津潔さんも強調しているように、「ブラック・ホーク」のなかでも英国やアイルランドのトラディショナル音楽はマイナーでした。「ブリティッシュ・トラッド愛好会」を松平さんや森能文さんたちが作ったのも、少数かつばらばらだったファンを集めようというのが意図の一つだったはず。「ブラック・ホーク」で聞ける音楽の主流はやはりアメリカン・ミュージックで、ザ・バンドやジャクソン・ブラウンが頂点にいたのです。

 ただ、「ブラック・ホークといえば(ブリティッシュ・)トラッド」というイメージが、もし世の中の一部にあるとすれば、それもまた興味深いことではあります。(ゆ)

 久しぶりにまとまった音楽の原稿を書いていた。“The Dig” の50号記念特別付録「オール・タイム・ベスト50」と、CDジャーナルから出るムック『ブラックホーク伝説』中の「新版・ブラック・ホークの選んだ99枚のディスク」のうち、トラッドとブリティッシュ・フォーク関係12枚。

 「オール・タイム・ベスト50」の方は50号記念だから50枚なのか。まあ、遊ばせてもらった。もう少しジャズやクラシックを入れたかったが、50枚というのはいざ選んでみると少ない。どうせなら、99枚ぐらいやりたいものだ。朝の8時に一点確認の電話がかかってきたのには驚いた。校了直前だったらしいが、徹夜明けだろうか。

 「新版・ブラック・ホークの選んだ99枚のディスク」はなんとか締切までに書きおえて、送ったとたん、どっと疲れた。かつて『スモール・タウン・トーク』11号に掲載された99選のセレクション自体は変えず、松平さんの文章もそのまま。松平さん以外の人が書いたものだけ、別の人間が新たに書きおこすという形。

 こんなに緊張した原稿は、絶えて記憶がない。まるで初めて公にする予定でトラッドについての原稿を書いたときのようだ。かなわぬまでも、全力を尽くす。それしかないと腹をくくった。

 持っていないものはあらためてCDを買う。歳月というものは恐ろしい。オールダム・ティンカーズまでCDになっている。新録音こそ出していないものの、かれらが現役で活動していたのはそれ以上にうれしい驚き。結局まったくCDになっていないのはヴィン・ガーバットだけ。Celtic Music にも困ったものだ。訴訟の行方はどうなったか。

 ゲィ&テリィ・ウッズもベスト盤で部分的にCD化されているものの、あの3枚はきちんとした形で復刻されるべし。権利関係がクリアにならないのか。

 やむをえず、これまた久しぶりにLPを聞く。ついでに息子のリクエストでU2の《ジョシュア・ツリー》とか、クリームの《火の車》とかのLPをかける。前者の1曲目、CDから取りこんだ iPod ではさんざん聞いているはずの曲に涙を浮かべている。後者では、クラプトンのギターが浮いてる、ヴォーカルの方がバンドと一体感がある、という。《ヴィードン・フリース》も聞かせようとしたら、どこかへもぐりこんで出てこない。

 12枚のうちではすぐ書けるものと、全然ダメなものの差が激しい。一日一本ずつ、書きやすいものから書いていったら、最後にヴィン・ガーバットとアン・ブリッグスが残った。ヴィンは一度ほぼ書きあげたのが気に入らず、他のアルバムも聞きなおしてから、もう一度新たに書きなおし。

 アン・ブリッグスも出だしが決まらず、四苦八苦。ファーストやサードを聞いたり、他の本で気分転換してみたり。最相葉月『星新一』のイントロを読んでいたら、ヒントになったらしい。それでも下書ができて、パソコンに清書する段になって、またやり直し。

 これでなんとか形がついたと思ったら、終わっていたはずのゲィ&テリィ・ウッズが引っかかる。唸った末、後半を完全に書きなおし。

 もうこれ以上どもならん、さらに手を入れれば悪くなるだけ、というところまで来てひと息つく。細かい字数の調整をやって、えいやっと送ってしまう。

 めっちゃくたびれたが、この10日間ほどは充実もしていた。何年かぶり、ヘタをすると十年以上聞いていなかったものを聞きなおしたし、その後の消息がわかったのもうれしい。ヴィン・ガーバットのサイトのリンクに Rosie HardmanBernie Parry の名前を見つけて、各々のサイトに行ってみたり。そういえば、ずいぶん前、中山さんからロージィ・ハードマンのサイトがあると聞かされていた。この二人もなんと現役でうたい続けている。こうなると、アン・ブリッグスがもううたっていないというのはやはり特異なことにみえてくる。でも、ロージィは今の方がきっと良いだろう。

 あらためていろいろな人たちを一度ネットでさらってみなくてはいけない。しかし、新しい人たちもどんどん出てきているし、痛し痒しだ。

 かつて東京・渋谷のロック喫茶「ブラックホーク」を根城にした「ブリティッシュ・トラッド愛好会」の創設メンバーで、わが国有数のハイランド・パイパーであり、特に「ピブロック」については第一人者でもある森能文さんが、その愛好会結成以前の「ブラックホーク」での「トラッド」体験について、ブログと掲示板を始められています。

ブログ「パイパー森・My Roots Music
経過について
専用掲示板


 この時期はわが国にブリテンのルーツ/フォーク・ミュージックが紹介され初めた頃で、「ブラックホーク」の「お皿回し」だった故松平維秋氏がその仕掛け人だったわけですが、かれの仕掛けに応えて、これを支えたのが森さんなどの少数の熱心なファンでした。それが本国での盛上りに感応する形で1977年の「愛好会」結成として実を結びます。そのあたりのことやそれ以前のわが国での「トラッド」をめぐる状況、ご本人の思い入れなどが、語られています。

 その頃はミュージシャンの来日など考えられもせず、一にも二にもレコードを聞くことしかできませんでしたから、ブログも当然、様々なレコードを中心に書かれています。

 東京・吉祥寺でのユニークな「月刊」イベント Winds Cafe が諸般の事情により、今年から三軒茶屋に会場を移動します。

 今度の会場は、東急新玉川線三軒茶屋の駅から歩いてすぐのところだそうです。

 その「こけら落とし」が今月21日日曜日に開かれます。ゲストは長門芳郎氏と川村恭子氏。川村恭子さんは編集部(ゆ)が Winds Cafe に出たときにも「共演」していただいていますが、このお二人なら楽しいことになるのはまちがいなし。(ゆ)も出かけるつもりであります。

   *   *   *   *   *

 1997年1月にスタートした WINDS CAFE も、2007年には、ついに11周年目を迎えることになりました。これも、ご来場いただいた皆様、そして企画してくださった方々のおかげです。2007年からは吉祥寺から三軒茶屋へと場所を変更いたしますが、主旨に変更はございません。素敵な企画をたくさんご用意してお待ちしておりますので、どうぞお誘い合わせの上、お運びください。


            ● WINDS CAFE 121 in 三軒茶屋 ●

            【魔法を信じるかい? 日本のロックと洋楽の蜜月70's】

                長門芳郎(音楽愛好家) 
                川村恭子(カモノハシストな音楽愛好家その2)

              2007年1月21日(日) 午後1時30分開場

    レンタルスペースSF 東京都世田谷区太子堂2-12-10 TEL 03-3419-5449

入場無料(投げ銭方式)/パーティー用の差し入れよろしく!(主にお酒や食べ物)

13:30 開場
14:00 漠然と開始、同時に飲食OK
17:00 終了予定(予定は未定)、その後オークション


▼川村からひとこと

 川村恭子さんは、1999年 WINDS CAFE 27【ケルト音楽の正体――その浸透と拡散】で大島豊/おおしま・ゆたかさんを、2001年 WINDS CAFE 53【アメリカン・オールドタイム&フォークミュージック・コンソシウム】で山田裕康さんと松澤秀文さんをフィーチャーしてくださり、また同年 WINDS CAFE 56では内容が内容だけに覆面で「かものはしすと」として【「こんなん、出ちゃいました〜。」from late 60's to early 70's 日本語のふぉーくとロック、レア音源大会】を企画進行してくださいました。

 今回は、恭子さんにとって、最も原点に近い方、あの長門芳郎氏をお迎えしてのコアな時間を企画してくださいました! いやあ、これは大変だ。「できれば、みんな飲み食いしながらダラダラやろー。サロンみたいな感じでね! っつうわけで、食い物、飲み物、持ち込みよろしくです」との伝言も仰せつかっております故、どうぞ自分の分、他の方にシェアする分の飲み物・食べ物をお持ちの上、遊びにいらしてください。


▼川村恭子さんからの手紙

 川村龍俊さんからお話があって(ヤヤコシイですが、同じ川村ですが親戚じゃないよー/笑)、栄えある移転第一回の WINDS CAFE、こけら落としをさせていただくことになりました。

 以前には大島豊さんらをご紹介させていただき、今回はまたもや音楽の賢人である長門芳郎さんをご紹介させていただきたいと思います。

 長門さんは、日本の良質なロックシーンと洋楽との架け橋になるようなすてきな仕事をされております。

 WINDS CAFE にいらしている方の中には、かつて骨董通りにあった輸入盤店、パイドパイパー・ハウスに通われた方もいらっしゃるかと思いますが、パイドパイパー・ハウスのオーナー店主でもありました。

 日本では、細野晴臣さんのティン・パン・アレー時代のマネージメントやシュガー・ベイブのマネージメントをし、その間に作り出された音楽は今も日本のロック史に欠かすことのできない名盤としてあげられています。

 また、ジョン・サイモンやハース・マルティネスなどのアルバム制作、アルゾ・フォンテの日本でのリリース、ベアズヴィル・ボックスを世に送り出すなど、ほんとうに良質の音楽を愛情と信念をもって、紹介されている方です。

 そして、なんとおそるべきことに、いつでもお会いするたびに長門さんのカバンの中からはほんとに貴重ですてきな音楽や映像が、そしてその資料がスルスルと飛び出してくるのです! 見たことのない映像、知ってるはずの音楽なのに聞いたことのないヴァージョン、「魔法を信じるかい?」まさしく、魔法のようです。

 アメリカと日本の不思議で楽しい音楽の関わりを、あまりうまくまとめられませんが、楽しんでいただければうれしいです。

 あ。そうだ。堅苦しくなる必要はありません。長門さんも私も相当なダジャレ好きです。ヒドイもんです(笑)。お気軽に音の静かなシンガーソングライターものをかけてるロック喫茶に立ち寄ったと思って、お気に入りのお茶やお菓子、お酒、食べ物などを手に、足を運んでください。


▼プロフィール

長門芳郎(ながと・よしろう):音楽愛好家。音楽プロデューサー、音楽ライター。70年代初期から後期にかけ、シュガー・ベイブ(山下達郎/大貫妙子ほか)、ティン・パン・アレー(細野晴臣/鈴木茂/林立夫)のマネージャーとして、コンサート/レコード制作に携わる。70年代末〜80年代末には、南青山の輸入レコード店パイド・パイパー・ハウスの店長/オーナーを続けながら、ピチカート・ファイヴのマネージメント、海外アーティストのコンサートをプロデュース。ヴァン・ダイク・パークス、ドクター・ジョン、リチャード・トンプソン、フィービ・スノウ、ダン・ヒックス、ジョン・サイモン、ローラ・ニーロ、ピーター・ゴールウェイ、NRBQ、ハース・マルティネス、MFQほか多数の来日ツアーを手がける。80年代末にヴィレッジ・グリーン・レーベル(ポニーキャニオン)をスタートさせ、海外アーティストのレコード制作に携わる。98年からは、ドリームズヴィル・レーベルのレーベル・プロデューサーとして、数多くのアルバム制作を行なっている。以上の仕事の傍ら、70年代から現在まで、数多くの洋楽アルバム/CDのリイシュー企画監修、アート・ディレクションを行い、その総数は800タイトル以上。現在音楽番組「ようこそ夢街名曲堂へ!」にレギュラー出演中。 著書に「魔法のBEAT」(MF WORKS)がある。

●川村恭子(かわむら・きょうこ):謎のかものはしすとってことで(苦笑)、音楽を中心とする文筆業。リアルタイムで数多くのアーティストのステージを体験している事もあり、60年代以降の日本のロック/フォーク・シーンの造詣の深さでは一目置かれる存在。19歳〜20歳、学生ながらNHK-FM『サウンド・ストリート』では坂本龍一、佐野元春らと共にDJを担当。後、糸井重里、細野晴臣ら協力の下ペンギン・カフェ・オーケストラ初来日時のパンフレット制作を機に本格的に文筆業の世界に入る。1995年には70年代に大阪で行われていたあの伝説のイベント「春一番コンサート」復活の立役者の一人としてプロデューサーである福岡風太のアシストをつとめる。また poetry reading の日本初の野外イベント「UENO poetrycan jam」の主催チームに参加、1500人を動員。WOWOW、NHK-BSなどの70年代の音楽を特集した番組のリサーチ、企画、構成なども手がける。So-net 会員向けストリーミング番組、 wonderjuke では長門芳郎氏とともにショーボート・レーベルのナビゲート中でもある。編著書に『THE BOOM 海を渡る唄』、『イカ天年鑑』、『Fの時代』、『風都市伝説―1970年代の街とロックの記憶から』など。また「春一番72年10枚組」BOX再発、朝日新聞社AERA別冊「AERA in FOLK」、世界で初めてのドラマーのコンピレーション盤、林立夫『NON VINTAGE』選曲に関わる。一昨年から始まった狭山でのハイド・パーク・ミュージック・フェスティバルの音楽制作部門のスタッフでもある。

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▼以下は WINDS CAFE 公式サイトでご確認ください。

 会場地図
 オークションについて
 予告編
 過去の企画

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 WINDS CAFE とは、1997年1月から、川村龍俊が、音楽を中心に美術演劇映画などさまざまなジャンルの方々に企画していただきながら続けている、イベント+パーティーです。

 いわゆる「オフ会」ではありません。

 基本的に入場料は無料、出入り自由で、パーティーでの飲食は参加者のみなさまからの差し入れを期待しております。

 ご来場にあたって予約は必要ありません。

 WINDS CAFE のコンセプトは、「好きなことやものを楽しんでいる人と一緒にいるのはなんて楽しいことだろう」です。出演を依頼するときには、このコンセプトを共有していただけることが条件になっています。

 第1回から第120回までは、現代陶芸家の板橋廣美氏の私邸である、東京吉祥寺の空中庭園 WINDS GALLERY を会場として行ってきましたが、2007年1月の第121回からは、建築家の藤村貞夫氏の私邸である住宅街の隠れ家「レンタルスペースSF」にて開催します。

 それでは2007年1月21日(日)に三軒茶屋でお目にかかりましょう。



川村龍俊+幸子

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