クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:USB

 ことの起りはもう古くなった FiiO M11Pro を DAC にして iPad mini で Tidal を聴いたことである。いつもは使っていない M11Pro をどうして使う気になったのか、もう忘れている。M11Pro には出力するサウンドをすべて DSD に変換する機能がある(ついでに書けば、FiiO のその後の DAP にはすべてこの機能がついている。なぜかウリとして表に出していない)。この機能のためにこれを買った。電気は食うが、オンに入れっぱなしだ。あるいはこれを再度試す気になったのかもしれない。とにかくこの組合せにやられてしまったのである。それまでストリーミングでは聴いたことのない凄い音だったのだ。もう他に何も要らないじゃないか。

 それまでストリーミングを聴くのは MacBook Air の M1 初代で Tidal がメイン。ここから ADI-2 PRO FS R に USB で入れ、その先のヘッドフォン・アンプはその時の気分、だった。MacBook Air からは Audio MIDI 設定で「機器セット」を作り、そこに出てくる DAC の名前にチェックを入れ、サウンド設定で出力を「機器セット」に指定する。

 で、iPad mini 6 + M11Pro は余裕でこれに勝ってしまった。もうよほどこのまま、この組合せで行こうかとまで思った。

 しかし、どうもくやしい。DAC としての実力では ADI-2 PRO FS R の方が上のはずだ。とすれば、その実力を十分引出していないのではないか。

 そこでまず USBケーブルを替えてみた。それも1本や2本ではない。何本か試した。だんだん良くはなる。だが、決定打ではない。その時目についたのがティグロンの TPL-2000U。公式サイトの「ネットワークケーブル」にある。これにはオリジナルバーンイン技術「H.S.E Grande」が使われている。その実力はサンシャインのマグネシウム・インシュレータで確認済みだ。よし、こいつはどうだ、と買ってみた。やりましたね、馬場さん。それまでの USB ケーブルとは次元が違う。値段も次元が違うが、この音なら納得する。これで iPad mini 6 + M11Pro とほぼ同等になった。もう一押しだ。

 かねて試したいと思っていたのが Bakoon Products/ S. C. L. の USC-1001だ。USB から SPDIF への変換器。出力は同軸と光。しかしティグロンに注ぎこんだ後ではこの値段は出ない。似たものはないかと探すと、ありました。FX-AUDIO FX-D03J+。5,000円以下である。ADI-2 PRO FS R の本体には光の入出力がある。同軸はブレイクアウト・ケーブル経由。なので光でつなぐ。両方角型の光ケーブルは手持ちがない。これも安いのを探すと onso 02 オプティカルケーブルがあった。onso の 01 オプティカル・ケーブルは以前使って良い印象がある。まず水準以上だろう。

 ということで、MacBook Air から iFi Silencer++ で USB-C から USB-A に変換し、ティグロンをつなぎ、FX-D03J+ から onso で ADI-2 PRO FS R に光で入れ、ADI-2 PRO FS R からサンシャインのバランス・ケーブルでマス工房 model 433。ヘッドフォンはこのところ常用の Neumann NDH30。これでまず聴いてみたのがサロッドの Arnab Chakrabarty の動画。音が出た瞬間、顔がにやける。タブラがどんと入った瞬間背筋がぞわあ。



 ネットワークケーブルの光絶縁は大流行だし、USB のノイズ絶縁ケーブルも最近出たが、USB も光ケーブルによる「パソコンとDACのグランドを切り離して、PCからのノイズをシャットアウト」が効果抜群なのだ。FX-D03J+ と 02 オプティカルケーブルで1万円以下だ。まあ、USBケーブルにはそれなりに投資が必要ではあるだろうし、投資すればそれだけの見返りはある。少なくともティグロンはある。オプティカルケーブルも替えると面白いだろう。

 FX-D03J+ は Meridian のサイトで Meridian 218 用として推奨されていることを後で知った。やはりこれは筋の良いものであるのだ。突きつめようとすれば、USC-1001 導入になるだろうが、当面はこれであたしは十分。



 NDH30にも仕掛けがあるのだが、それはまた別の機会に。(ゆ)

0205日・土

 人間の耳は正直なもので、本質的に必要でないものは無くてもちゃんと聞きとることができる。空間オーディオなるものも、一時的に夢中になったり、中毒したりすることはあっても、人間の聴覚体験を一新することは無い。

 2日ぶりにインターバル速歩散歩すると、えらく気持ちがよい。やらないと調子が悪いところまではまだだが、やると気分爽快、体が軽くなったように感じるまでになってきた。

 夕方、試すと Tidal は問題なく使える。サブスクリプションが切れてるぞと出たあれは何だったのか。

 久しぶりに denAmp/Phone を使ってみる。バスパワーで CS-R1 で聴いて、いや、すばらしい。hip-dac に劣らない。MQA のマスター音源ではさすがに違いがあるが、比べなければ、全然問題ない。HiFi Master の違いもしっかり出す。この二つがあれば、もう他に USB-DAC は要らない。denAmp は販売休止中だが、春には再開するらしい。

 T60RP でも試す。音量ノブはさすがに正午まで上げるが、しかし、がっちりと鳴らす。バスパワーのくせに、何がどうなっているのか。中身は何かは明かしていないし、開ける気もないが、このサイズだから DACチップにオペアンプのはずだ。DAC チップは Cirrus だろうか。

 伝聴研の傳田さんは、あれだけ見事な自然音録音ができる人だから、耳は抜群だし、自分自身ミュージシャンで、生音も十分知っている。おかしなものは作るはずがない。あそこのものはどれも音がいいが、それにしても、denAmp は凄い。ヘッドフォン祭で一度、これを外付にして DAP と組み合わせている人を見たことがある。これは音がいいですよね、と盛り上がった。


 溜まっていたリスニング候補の音源を Tidal でざっと聴く。アルバムの各々冒頭のトラック。

Marcin Wasilewski Trio, ECM

En attendant
Marcin Wasilewski Trio
ECM
2021-09-10


Ayumi Tanaka, Subaqueous Silence, ECM



Tim Berne & Gregg Belisle-Chi, Mars

Mars
Berne, Tim
Intakt
2022-01-21


Undercurrent Orchestra, Everything Seems Different


Jorge Rossy, Robert Landfermann, Jeff Ballard – Puerta, ECM

Puerta
Jorge Rossy
ECM
2021-11-05


Maria-Christian Harper, Gluten Free


Chien Chien Lu, The Path

ザ・パス
チェンチェン・ルー
Pヴァイン・レコード
2021-08-04


Banquet Of Boxes: a Celebration of the English Melodeon

Banquet of Boxes-Celebration of the English Melode
Banquet of Boxes-Celebration of the English Melode
Imports
2011-05-10


Elton Dean Quartet, They All Be On This Old Road

They All Be On This Old Road: The Seven Dials Concert
Elton Quartet Dean
Ogun Records
2021-11-26

 

 どれも一通り聴く価値がある。

 Maria-Christian Harper は面白い。名前の通り、ハーパーで、良い意味でアヴァンギャルド。ヴィブラフォンの Chien Chien Lu も良い。Badi AssadArooj Aftab は文句無い。Thea Gilmore はもう少し聽いてみる。Saadet Turkoz & Beat Keller はウイグル族の危難に反応した録音。伝統かつ前衛。とりあえず聴かねばならない。

 Saul Rose Tidal で検索したら、 Banquet Of Boxes: a Celebration of the English Melodeon というアルバムがヒット。思わず顔がほころぶ。 オリジナル録音のオムニバスかな。これは CD を探そう。

 エルトン・ジョンの芸名のもとになった Elton Dean のカルテットも面白い。キース・ティペットが大活躍。こういう音はイングランドでしか出ないだろう。



##本日のグレイトフル・デッド

 0205日には1966年から1989年まで5本のショウをしている。公式リリースは2本。


1. 1966 The Questing Beast, Berkeley, CA%

 テープが残っているので、各種サイトではショウとしてリストアップしているが、内容はリハーサル。〈Viola Lee Blues〉を何度もやっている由。


2. 1969 Soldier's And Sailors Memorial Hall, Kansas City, KS

 アイアン・バタフライの前座として1時間強の演奏。セット・リストはこの年の典型。


3. 1970 Fillmore West, San Francisco, CA

 3ドル。4日連続のランの初日。共演タジ・マハル。こういう組合せでコンサートを企画するのがビル・グレアムの面白いところ。

 この4日間はいずれも一本勝負のショウ。オープナーの〈Seasons Of My Heart〉と〈The Race Is On〉でガルシアはペダルスティールを弾いている。

 3曲目〈Big Boss Man〉が《History Of The Grateful Dead, Vol. 1 (Bear's Choice)》でリリースされた。ピグペンの声はまだまだ衰えてはいない。


4. 1978 Uni-Dome, University of North Iowa, Cedar Falls, IA

 オープナー〈Bertha> Good Lovin'〉とクローザー〈Deal〉を含む第一部の5曲と第二部8曲全部が《Dick's Picks, Vol. 18》でリリースされた。計1時間半。

 3日のショウに並ぶすばらしい出来。全体としてのレベルは3日の方が若干上かとも思うが、こちらの第二部も強力。〈Scarlet Begonias> Fire On The Mountain〉がまずはハイライト。特に〈Scarlet Begonias〉後半のガルシアのギターを核としてバンド全体が集団即興になるところは、デッド体験の醍醐味の一つ。そして〈Truckin'> The Other One> Wharf Rat> Around and Around〉と続くメドレーを聴くのは、この世の幸せ。〈Wharf Rat〉はいつもの囁きかけるような、どちらかというとウェットなスタイルとはがらりと変わり、言葉をほおり出すようなドライな態度をとる。喉の調子がよくなく、囁き声が出せなかったせいかもしれないが、怪我の功名で、3つのパートでどん底から天空に飛翔するこの歌、とりわけパート3にはまことにふさわしい。ガルシアはギターから錆ついた響きをたたき出し、明るいマイナー調のフレーズを聴かせる。〈Around and Around〉でもガルシアが延々とギターを弾いているので、ウィアがなかなか歌いだせない。この歌は197606月の大休止からの復帰後、はじめゆったりと入り、途中でポンとテンポを上げる形になる。ここではその前半のゆったりパートのタメの取り方の念が入っているのと、後半、ウィアとドナの声が小さくなるのが早いのとで、その後の爆発のインパクトが大きい。実に実にカッコいい。

 DeadBase XI での Andy Preston のレポートによれば、〈Truckin'〉の前の音は、ステージ両側に駐車したセミトラックに仕掛けられた爆竹のようなもので、バックファイヤのつもりらしい。続いてエンジン音が大きくなるとともに、バンドは演奏に突入した。

 会場は屋内フットボール場で、片方の50ヤード・ラインにステージが設けられ、残り150ヤードが椅子もなく、解放されていて、聴衆は自由に踊れた。音がよく響き、バンドを迎えた歓声の大きさに、レシュが「実際の人数以上の音だね」とコメントした。

 第二部オープナーの〈Samson And Delilah〉で、ウィアのヴォーカル・マイクが入らず、マイクを交換する間、バンドは即興を続けた。ガルシアは苛立って、ギター・ソロが獰猛になった。マイクの面倒をみていたクルーがガルシアを見て、お手上げというように両手を挙げたので、ガルシアはギターでクルーの心臓を狙い、機関銃の音を立ててみせた。その後、マイクはきちんと作動して、歌は続いた。

 さらに機器のトラブルがあり、ウィアがかつての「黄色い犬の話」に匹敵する「木樵の話」をして、時間を稼いだ。もっともその冗談はいささか混みいっていて、聴衆の反応は鈍かった。

 この年、アイオワは百年に一度の寒い冬。


5. 1989 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA

 開演7時。このヴェニュー3日連続の初日。この年最初のショウ。春節記念。この3日間に続いて、ロサンゼルスで3日連続をした後、1ヶ月休んで3月下旬、アトランタから春のツアーに出る。

 バーロゥ&ミドランドの〈We Can Run〉とハンター&ガルシアの〈Standing On The Moon〉の初演。

 〈We Can Run〉は19900710日まで計22回演奏。スタジオ版は《Built To Last》に収録。

 〈Standing On The Moon〉も同じく《Built To Last》所収で、19950630日まで、計75回演奏。これについてハンターは、いきなり頭に浮かんだのをとにかく書き留めたので、何の修正も改訂もしていない、と言っている。ガルシアはブレア・ジャクソンのインタヴューに答えて、理屈ではなく、とにかくこの歌が好きで、この歌が自分の口から出てゆくのが歓びなのだ、それはできるだけそのまま出るにまかせて、余計なことはしたくない、と言う。(ゆ)


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